*いつもながら、観劇記はネタバレを含みますのでご注意ください。
今、トラファルガー広場近くの劇場London Coliseumで
"Sweeney Todd"
が二週間の期間限定公演中です。
Sweeney Toddと言えば、ジョニー・デップ主演の映画が印象的ですが実は舞台版の初演はもっともっと昔の1979年です。
とってもラッキーなことに、二階席のど真ん中の良席を半額で手に入れました。
会場に行ってみると、
地元民ばっかり!
みんなドレスアップしてるし!
客層は観光客と言うより現地の演劇好きが集まっている感じでした。
年齢層も若干高め。
若干の場違い感にも負けず予約していたチケットを受け取りいざ客席へ。
見てください、全体が見渡せるとってもいい席。
びっくりなのは普通オーケストラはオケピことオーケストラピットという舞台の手前の別室で演奏するのですが、今回は舞台とドッキングしています。
まるでコンサートみたい。
ドキドキしながら開演を待ちます。
間も無く暗転し、楽団と出演者が舞台に上がりました。
あれ、みんな楽譜持ってるねぇ。てことはミュージカルじゃないの?やっぱりガラコンサートだったのかな。
そして出演者全員で、いきなり主題歌のThe ballad of Sweeney Toddの大合唱。
あれ、途中から…
えっ、えっ、出演者達が続々と楽譜を床に落とし始めました。
暗記しているアピールかしら…
と思った次の瞬間!
舞台の端に飾ってあったお花を壊しちゃった!
さらに舞台中央に合ったピアノを持ち上げて…足をポッキリ。
張りぼてのピアノだったらしいです。
最後に床に落としていたスコアをオケピに全部投げ捨てちゃいました!
うわあ…、初っ端からこれは王道のミュージカルじゃないんだなってことがよーくわかりました。
そうそう、ストーリーをざくっと説明します。
舞台は1800年代の東ロンドン。
スウィーニー・トッド(本名ベンジャミン・バーカー)という理髪師が悪徳裁判官に無実の罪を着せられた上に美人妻と娘を奪われた復讐に殺人鬼になるお話。
殺害方法は、理髪師らしく(?)髭を剃るふりしてカミソリで喉を掻き切るという…。
考えただけで恐ろしい。
そしてさらに、スウィーニーに片思いしているパイ屋のオーナー、ラベット夫人の提案で殺した死体をパイにして売りさばくんです。
カニバリズムが出てくる時点でお子さまはアウトな内容です(*_*)
ミートパイがよく食べられるイギリスならではの設定ですね。
ちなみに、スウィーニー・トッドはロンドンダンジョンでも大人気。
くわしくはこちら
言葉は、前回見たビリー・エリオットがコテコテの北イングランド弁だとすると、スウィーニー・トッドはコテコテのコックニーが話されます。あと登場人物の関係でたまにイタリア訛りの英語もね。
特にラベット夫人の言っていることが結構難解です。ビリーよりは何言っているか分かりますが…。
演じるのはハリーポッターやラブ・アクチュアリーの映画で有名なアカデミー賞女優の
Emma Thompson。
説明不要の大物です。
映画では見たことあるけど生で、なおかつ歌っているところなんて想像できな…かったんですが、
上手でした。
なかなか声量ありますし、コミカルな演技で可愛らしいラベット夫人でした。
人肉パイを作るなんて思えないほど。
一方、スウィーニー・トッドを演じるのはオペラ歌手のBryn Terfel。
パリのオペラ座でも出演経験もありグラミー賞受賞経験もある、これまたクラシック界の重鎮。
映画版のスウィーニーは演者がジョニデだっただけにスリムでちょっと影のあるイケメンでしたが、この方が演じるスウィーニーは縦にも横にも大きくて、すごい貫禄でした。ジョニーと大違い。
舞台には、装置といえるものはほとんどなく、前述の通りオーケストラと十字に横切る通路しかありません。
とても演技力が求められます。
でもマンドリンがパイ生地をこねるキッチンに見えたり、出演者がオーケストラの隙間をぬって歩くと不思議と地下通路に見えたりして設備の無さは特に気になりませんでした。
ちなみに殺人のシーンも、血糊をほとばしらせるわけにいかないので誰かが死ぬと、
こんな風にサイレンと共にバックの赤い手形が光ります。あ、これは終演後の写真です。
約2時間半、時には笑い、時にはびっくりして、最後にはウルウルしながら観劇しました。
だって、だって、ほとんどの登場人物みんな死んじゃうんだもん…
スウィーニーは復讐は確かに遂げたけど…
知らない間に愛する人まで殺していたなんて…
とーっても後味スッキリしない終わり方をします。知っていたけど切なく救いようのないそんな作品でした。
落ち込んだ時に見るといい感じに落ちるところまで落ちれるといいますか・・・笑
とことん落ち込みたいときにお勧めの作品です。
・・・あれ、ちょっと暗い感じで完結してしまった。
確かに楽しい楽しいハッピー♪
っていう雰囲気の作品ではありませんが、
私はこのミュージカルの世界観好きですね。
というか、世界史好きにとってはこのちょっとダークなイギリスの歴史背景を垣間見られるのがたまらないです。
年代的にちょうど切り裂きジャックのころと近いしもう好みどストライクなんです!
あと、ミュージカルオタク的には音楽を推しますね。
なぜかというと、曲を手掛けたStephen Sondheimは、
WEST SIDE STORY
Into the woods
Gypsy
など、有名ミュージカルと手掛けた作詞・作曲家です。
とくに、主題歌の
The ballad of Sweeney Toddと
1幕の最後で歌われる
A little Priestは
一度聴いたら忘れられないです。
出演者はクラシック畑の人が多いし、女性はハイツェーをガンガンに出しています。
最後に、
スウィーニー・トッドのトリビアをご紹介!
・スウィーニーの娘、ジョアンナ役がLes miserablesの25周年記念コンサートでコゼットやった人だった。
DVDを見たことあったので、Katie Hallの名前を見たときニヤッとしました。
・休憩時間がゆるい!
どうゆるいかというと、
舞台上でアンサンブルのみなさんが普通に談笑してる!
多分演出なんでしょうけど、こんなん日本じゃありえない…。
・最年少出演者は16歳!
パンフレットを見てびっくりしました。本文を引用すると、
"Lydia Gerrard is 16years old and currently attends St Marylebone School on a drama scholarship."
おーっ、通っている学校で演技特待生とは只者じゃないですね、こら。
発禁作品のアンサンブルに16歳がいたとはびっくりです。
そんなスウィーニー・トッド。
映画版もさることながら、インターネットで1982年の舞台版のDVDも手に入るようです。
私も早速ポチってこよ♫
しまった、★つけるのを忘れていました笑
英語わからなくてもどうにかなる度★★☆☆☆
ジョニー・デップとの違いにびっくり度★★★★☆
曲の良さと出演者の歌唱力に酔える度★★★★★