まるで何もなかったかのように、杏子ちゃんはいつもの笑顔でした。遊んでいても彼女は私に指導権を持たせてくれます。調子に乗ってました、歌を歌えば褒めてくれる杏子ちゃんの優しさに付け込んで。内心私の前で笑ってくれたら、叔父達の悩みはどうでもよかった。彼女が傍に居てくれるなら。私にとって居心地のいい存在でした。いえ、都合がいい存在にしていたのかもしれません。今思い出しても、私の自分勝手な偽善っぷりに吐き気がします。
夏の終わり、悪夢のような連絡は、朝方突然かかってきました。
『えっ!?杏子ちゃんがっ!?』母の声に私はすぐに悟りました。杏子ちゃんの訃報でした。その後の事はあまりよく覚えていませんが、夢から覚めた後のように、母も私もぼーっとタバコに火をつけていました。無言でしたずっと。声出して確認したら、それが現実だと証明される。私は無心に2時間ほど、ぼーっとしていました。
NEXT
杏子ちゃんと会って遊んだり、メールの回数が増えるたびに、杏子ちゃんの両親である叔父叔母からの連絡も同じように増えました。その内容は決まって杏子ちゃんの様子を伺う事でした。内心『もういい歳なのに…』とも思いましたが、親に心配かけていた私に人の事は言えず、適当に大丈夫だと伝えていました。もちろん杏子ちゃんには内緒で。叔父達が心配する理由は、杏子ちゃんの信じがたい様子にありました。あの杏子ちゃんの家での冷めた目つきで素っ気ない態度がたまに恐いと言うのです。不覚にも私は、杏子ちゃんに説教をしてしまったのです。彼女の気持ちを知りもせず。『〇〇ちゃんに何がわかるとよっ!』その時初めて私に怒鳴ったのです、とてつもなく恐ろしい表情で。。。それは私の無神経な一言が生んだ最悪な場面でした。すぐに気を取り直してくれたのですが、それから私が彼女に追求することもなく、彼女から悩み事ましてや家での事を話す事もありませんでした。でもそれ以外は変わらず、相変わらず二人の時間はマッタリといつも通りなのでしたニコニコ今がよければいっか。私の安易な考えは、後に取り返しの着かない最悪な結果となるのです。
NEXT
いつからか頻繁に杏子ちゃんからの連絡が増えたんです手紙大人になってからの私達は、友達以上の関係が自然に心地よくて、自然と会う回数も増えていきました。ご飯を食べに行ったり、恋愛トークをしたり、飲みに行ったり。。。そのなかでも歌手を夢見ていた私に、カラオケに行って嬉しそうにリクエストをする彼女を思い出しますニコニコ歌う事が好きな私ですから、それはもちろん嬉しい事で、緊張しいの私に彼女は最高に気持ちのいいステージを作ってくれていたんです、いつも。杏子ちゃんは私のファンだと言ってくれました!もちろん私、浮かれてました。。。
そんな私は、杏子ちゃんの喜ぶ姿が印象的で、彼女の変化にふれる事はありませんでした。少し痩せた体、バッサリ切った髪、薄くなったメイク、地味になった洋服。
普通なら聞くんでしょうね。聞いてあげるべきでした。 NEXT