3日目は「調教」に注目。中間の調整過程や追い切り内容、時計、前走との比較など分析。状態の善し悪しが数字に表れやすい調教は重要な判断材料で、特に直前追い切りは1項目で15点と最も持ち点が高い。ネヴァブション、シャドウゲイトは24日追い切る予定。前日までの脱落馬については割愛する。


(1)中間の調整

中間の調整過程は重要なポイント。レース間隔別に検証し、最大の減点は10点とする。

《連闘&3カ月以上の休養明け》

連対どころか掲示板すらなし。10点減点の項目だが、今回該当馬はなし。

《中1~2週》

こちらも連対はない。一番間隔が詰まっている場合でもジャパンCからの中3週。中2週のステイヤーズS組はテイエムオペラオーが3着、デルタブルースが11着。GI実績や勢いがあっても、かなり厳しくイコピコは7点減点。フォゲッタブルも大幅減点は避けられないが、週末も時計を出す意欲を買って5点にとどめる。

《中3週》

ステップとして最多10頭の連対馬を出しているジャパンC組が対象。疲れを取るために軽めの調整になりがちだが、大舞台だけにキッチリ仕上げる攻めの姿勢を見たい。

エアシェイディ、マイネルキッツ、リーチザクラウンは1週前にビシッと追い切った後、週末にもさらに1本時計を出す入念な調整で減点なし。

コスモバルクは乗り込み量は問題ないが、レベルの高い中央馬同士の併せ馬を消化した前記馬と比較すると、内容で及ばず2点減点。

《中4週~》

中3週組に及ばないが、余裕を持って臨める点は好感が持てる。ただしその分、本数、時計ともしっかり出しておきたいもの。

ミヤビランベリが最多7本と熱心な乗り込みで評価できる。アンライバルド、セイウンワンダー、ブエナビスタ、マツリダゴッホも6本で、順調さがうかがえる。それらと比較すると、ドリームジャーニーとスリーロールスは5本で物足りない印象は否めない。どちらも時計は出ているので減点は2点にとどめる。


(2)最終追い切り

《栗東》

東西合わせてフォゲッタブルが唯一「S」評価の15点満点。ポリトラックで6ハロン80秒6もさることながら、古馬と併せて終い1ハロン11秒6で2馬身1/2突き放した内容は秀逸だ。

ブエナビスタも評価は高い。CW6ハロン83秒9、終い1ハロン12秒1なら状態は維持していると見て良い。イコピコは坂路で4ハロン53秒6は普通だが、終い12秒0は十分評価できる時計で、どちらも「A」評価14点。

リーチザクラウンは強めに追われた分もあるが、ポリトラックで終い1ハロン11秒5なら上々。この日のCWは全体に時計を要する馬場状態だったが、アンライバルドは一杯に追われて6ハロン81秒3。ドリームジャーニーは5ハロンでは67秒6と控えめも終い1ハロン12秒4の切れ味。ミヤビランベリは6ハロン82秒1-12秒6でまとめた内容は、いずれも「A」で13点を与えていい。

同じCWでもスリーロールスは6ハロン88秒3-12秒9と軽め。セイウンワンダーは終い一杯に追われてラスト1ハロン13秒1。7ハロンから時計を出した意欲は買えるが、いまひと息の感があり「B」で12点。

《美浦組》

マイネルキッツはポリトラックで併せ馬。5ハロン64秒1、終い1ハロン12秒0の時計もいいが、併せ馬できっちり半馬身先着して、この馬らしくしぶとい面を見せていたので「A」14点。

マツリダゴッホは単走でDコースへ。長めから追って、終いもそこそこ出ていた点を評価して「A」13点をキープ。

エアシェイディは1週前に時計を出して今週は抑えめ。それでも、いつもならもう少し時計が出ていい馬で「B」12点まで。

《地方組》

コスモバルクはすでに20日に門別競馬場で最終追い切り。直線で一杯に追われて終い3ハロン39秒1-12秒9は、他と比較してもマイナスが否めず「C」で10点。


(3)前走時との比較

前走時より軽め、時計を要した場合など内容を比較して減点する。

《減点対象》

イコピコは4ハロンで1秒5違うが、終い1ハロンが0秒4速く、ローテの違いも考慮して1点減点にとどめる。

1週前にビッシリ追って当週は軽め調整のスリーロールスだが、確かに先々週、先週と時計を出しているとはいえ、6ハロンで4秒以上も違うと軽すぎの感は否めない。エアシェイディも同様。ジャパンC5着時よりも全体で2秒、終い1ハロンも0秒9遅く、2点減点。

コスモバルクは前走は6ハロンから一杯に追っているが、今回は5ハロン。しかも5ハロンの時計で0秒4遅く3点減点。


★3日目結論

昨日まで減点ゼロでトップを並走していたドリームジャーニーとマツリダゴッホが、追い切りでともに減点。満点馬はいなくなった。98点のマツリダがトップをキープ。2位にドリームジャーニーとブエナビスタが96点で並び、4位以下との差が徐々に広がってきた。イコピコが一気にダウンしてボーダー寸前。大幅10点減点のコスモバルクがここで姿を消した。

2日目は血統がテーマだ。クセのある中山2500メートルが舞台の有馬記念はペースが乱れがち。そのタフな流れを乗り切れるだけの血統かどうかを(1)父系(2)母系(3)総合力の3項目から徹底検証する。


(1)父系(最大4点減点)

《減点なし》

この10年、ヘイルトゥリーズンの流れを汲む馬が9勝と断然で、中でもサンデーサイレンス直子が5勝と突出している。産駒数は激減したが今年も重賞を勝ち、底力を見せつけている。6歳でSS最終世代のマツリダゴッホはもちろん、8歳のエアシェイディも衰えは気にしなくていい。

SS直子で今年の注目はスペシャルウィークだ。自身99年の有馬記念2着で舞台適性もある。今回はブエナビスタ、リーチザクラウンの3歳2頭を送り込むが、古馬一線級相手でも全くヒケを取らない。

ダンスインザダークはスタミナに特化。スリーロールス、フォゲッタブルの菊花賞1、2着コンビは、タフな勝負になれば台頭する。

01年の覇者マンハッタンカフェはイコピコを送り込む。父が3歳後半に一気に成長しただけに、怖い存在だ。

末脚勝負ならステイゴールド産駒の出番だ。産駒は総じて切れ味に秀で、ドリームジャーニーはその代表格だ。

SS系以外では、98、99年とこのレースを連覇したグラスワンダーが断然。スタミナ豊富な欧州血統のオペラハウスは、代表産駒に00年の勝ち馬でGI7勝のテイエムオペラオーがいる。同じ欧州系のホワイトマズルは日本でGI馬を4頭輩出。中~長距離に強く適性も問題ない。

《1点減点》

ネオユニヴァースは初年度産駒から皐月賞馬アンライバルド、ダービー馬ロジユニヴァースが出てSS系でも評価が高いが、自身が菊花賞3着で3冠を逃しているように、産駒も長距離でひと息。1000万下以上のクラスに産駒は現在21頭いるが、2200メートル以上を勝ったのはわずか2頭。アンライバルドは1点減点。

《2点減点》

マーベラスサンデー産駒はパワー型が多く、時計勝負だと微妙で、ネヴァブションは2点減点。

《3点減点》

チーフベアハート産駒はマイネルレコルト(朝日杯FS)、愛ダービー馬ザグレブの主な産駒は他にコスモサンビーム(朝日杯FS)がいるだけ。パラダイスクリークは芝GI馬がこのテイエムプリキュアのみ。活気に欠ける印象が否めず、マイネルキッツ、コスモバルク、テイエムプリキュアは3点減点。


(2)母系(最大4点減点)

《減点なし》

フォゲッタブルが断然。母は97年度代表馬エアグルーヴ。半姉アドマイヤグルーヴ(父SS)もエリザベス女王杯連覇と超がつく良血だ。

アンライバルドは半兄フサイチコンコルド(父カーリアン)がダービー馬。底力十分だ。

ブエナビスタの母ビワハイジは阪神3歳牝馬S勝ち。半兄に菊2着のアドマイヤジャパン(父SS)などがおり上質だ。

エアシェイディは母エアデジャヴーがクラシックで活躍。全妹に秋華賞馬エアメサイアがおり、上位にランクできる。

マツリダゴッホは近親に菊花賞馬ナリタトップロード。3代母からは米GI馬も出ている。

セイウンワンダーはSS、リアルシャダイ、テスコボーイと名種牡馬が配合され、底力は文句なし。その点ではミヤビランベリもテスコボーイ、パーソロンが配合されており、同様の評価だ。

スピード色が濃いドリームジャーニーの母系だが、母の父がメジロマックイーンでスタミナが補強。バランスがいい。

《1点減点》

リーチザクラウンの母系は世界レベルだが、全姉クラウンプリンセスがマイラーで、リーチ自身も気が勝っており、距離の不安は拭えない。

マイネルキッツは半妹マイネカンナ(父アグネスタキオン)が福島牝馬S勝ち。だが、有馬級のGIではどうか。

ネヴァブションの母系も速い決着に不安が残る。

《2点減点》

スリーロールスはブライアンズタイム、ブレイヴェストローマンとパワータイプの種牡馬が配合され、2500メートルで速い決着になると心配。

テイエムプリキュアの伯父エムアイブランは7歳時に武蔵野Sを勝っており、年齢自体は気にしなくていいが、やはりこちらもパワー型。

《3点減点》

イコピコ、シャドウゲイトの母系は、ともに2500メートルではドンと来いとはいえない。

《4点減点》

コスモバルクは強調材料がない。


(3)総合力(最大2点減点)

ここでもフォゲッタブルの評価が高い。出走馬で唯一、父、母ともにクラシックホースの組合せだ。

だが、それ以上に注目したいのがエアシェイディ。SS×ノーザンテーストという配合は上々。同じ配合のリミットレスビッドは今年10歳だが、JBCスプリント3着などいまだに一線で活躍しているだけに、シェイディも不安はない。

《減点対象》

テイエムプリキュアのパラダイスクリーク×ステートリードンの組合せは、タフな流れには十分対応可能だが、全体的に器用さに欠ける。平坦で広いコース向きで、トリッキーで直線に坂のある中山となると…。コスモバルクは母の父トウショウボーイがスピードを補うが、これ以上の上がり目を求めるのは難しく、両馬とも2点減点。


★2日目結論

血統を検証した結果、初日に大幅マイナスのテイエムプリキュアが、ここでも大きく減点となり最初の脱落馬となった。他にもコスモバルク、シャドウゲイトが危うい状況となっている。初日トップのドリームジャーニー、マツリダゴッホは依然として満点をキープ。スリーロールス、マイネルキッツが減点となり、ブエナビスタが3番手に浮上した。

昨年の有馬記念は、ダイワスカーレットが2・6倍の断然の1番人気に応えて逃げ切り勝ち。しかし、2着には14番人気のアドマイヤモナークが突っ込んで馬単3万3490円、3連単98万5580円の大波乱となった。だが、その上位2頭は引退。果たして今年はどんな結果が待ちかまえているのか。2009年の総決算「第54回有馬記念」を週末に控えて、恒例のデータ大作戦がスタート。過去10年を様々な角度から徹底的に分析し、“仕分け人”が馬券に必要な馬、いらない馬を選択する。初日は「戦績&ステップ」を検証する。


〔1〕勝利数、連対率にボーダーライン(古馬6勝、3歳馬4勝未満=3点、連対率40%未満=2点減点)

02年2着タップダンスシチー、03年2着リンカーン、05年〔1〕着ハーツクライ以外は古馬6勝、3歳馬4勝以上をクリアしていた。テイエムプリキュア、3歳馬のセイウンワンダー、フォゲッタブル、リーチザクラウンはいずれも3勝で3点減点。

 また16頭が連対率40%もクリア。コスモバルク、シャドウゲイト、テイエムプリキュア、ネヴァブションが2点減点。


〔2〕GI好走歴は必須(GIで連対なし=2点、3~5着なし=4点減点)

01年2着アメリカンボス、02年2着タップダンスシチー、07年〔1〕着マツリダゴッホ、08年2着アドマイヤモナーク以外の16頭はGIで連対していた。大舞台では実績なしに好走を望むのは難しい。少なくともGIで掲示板は確保していたい。ネヴァブション、ミヤビランベリは4点、イコピコ、エアシェイディは2点減点。


〔3〕重賞実績も必要(1勝以下=2点、今年未勝利=2点減点)

03年2着リンカーン以外の19頭は重賞馬だったが、今回は出走16頭すべてタイトルホルダーで問題なし。また15頭が重賞2勝以上していた。イコピコ、エアシェイディ、スリーロールス、フォゲッタブル、マイネルキッツ、リーチザクラウンが2点減点。

さらに、リンカーンとハーツクライ以外の18頭には当該年に重賞勝ちがあった。エアシェイディ、コスモバルク、シャドウゲイト、セイウンワンダーが2点減点。


〔4〕芝二四以上実績(芝二四以上で連対なし=3点、芝二二以上で連対なし=5点減点。重複なし)

タフな消耗戦になりがちな2500メートルの有馬記念を乗り切るためには、スタミナが求められる。17頭がクリアしていた2400メートル以上での連対を目安とする。ただし、最低でも全頭がクリアしていた芝2200メートルでの連対実績は必要だ。アンライバルド、シャドウゲイト、セイウンワンダーが5点、エアシェイディが3点減点。

〔5〕今年の成績に安定感(GI以外で2桁着順あり、またはGI含め2桁着順2度以上あり=3点減点。重複なし)

同年にGI以外で2桁着順の敗戦があったのは01年〔1〕着マンハッタンカフェのみ。コスモバルク、シャドウゲイト、テイエムプリキュア、ミヤビランベリが減点。

また、同年に2桁大敗が2度あった馬も08年2着アドマイヤモナークのみ。アンライバルド、ネヴァブションも減点。


〔6〕牝馬には狭き門(3歳時に古馬混合GI勝ちなし=3点減点、4歳以上で牡馬混合GI勝ちなし=2点減点)

連対は2回ともダイワスカーレット。女傑ウオッカでも3歳時は11着。ダービー馬、対古馬GIジャパンC4着の実績でも通用しなかった。他にもファインモーションやテイエムオーシャン、スイープトウショウなどがはね返されたことから、連対率100%、3歳時には古馬牝馬、4歳時には牡馬相手でもGI制覇したスカーレットに匹敵する実力でもない限りは、厳しいと見ていい。GI3勝といえどもすべて世代限定戦で、古馬混合のエリザベス女王杯3着のブエナビスタは減点対象だ。テイエムプリキュアも同様。


〔7〕8歳以上は割り引き(8歳以上=2点減点)

02、04年2着のタップダンスシチーが8歳時の05年は12着。実績があっても減点は避けられない。エアシェイディとコスモバルクは2点減点。


〔8〕前走はGI(ステップがGI以外=2点)

ローテーション自体は不問だが、18頭が前走でGIを走っている。GIなら着順は問わないが、GI以外となると、たとえ勝っていても減点対象だ。イコピコ、シャドウゲイト、フォゲッタブル、ミヤビランベリは2点減点。


★初日の結論

1週間を通して、生き残りのボーダーラインは80点に設定。初日の「戦績&ステップ」では脱落馬はいなかったものの、エアシェイディ、シャドウゲイト、セイウンワンダー、テイエムプリキュアが大幅マイナスで危うい状況だ。

トップは今春の宝塚記念馬ドリームジャーニーと一昨年の有馬記念馬マツリダゴッホが減点なしで並んでいる。さすがはグランプリ馬といったところだ。注目のブエナビスタは、減点があったものの上位をキープしている。