実は、見知らぬ他人に決めてもらっている。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

実は、見知らぬ他人に決めてもらっている。

インターネットのおかげで、僕たちは
賢く買い物をすることができる。
賢く買うというのは、例えば他の店よりも
一番安く買うとか、買ったあとにお金を
無駄にしたと後悔しないとか、本当に買って
よかったと喜べるとかそんな感じだ。
 
つまり、買い物に失敗する確率が
少なくなったわけだ。
その理由は、買う前にいろいろな
情報を知ることができるからだ。
それも売る側からの一方的な情報ではなく、
買った人の感想など消費者目線での
情報を手軽に入手することができるから。
 
最近「AISAS」という言葉を時々目にする。
消費者の購入プロセスのことで、
Attention(注意)→ Interest(関心)→
Search(検索)→ Action(行動)→ Share(意見共有)

というプロセスだ。
 
例としては、Amazonでの買い物の
イメージ。関心を持った商品をまずネットで
調べて、買った人の意見を読んで
ようやく購入を決める。
 
たしか「AISAS」とは電通が提唱したような
記憶があるが、その電通によると
ネット利用者約900人に行った調査で
85%以上が、購入課程でネットで商品の
評価を調べたり、価格比較サイトを利用
していたという(参考:日経ビジネス10/31日号)
 
ずいぶん便利になったわけだが、
冷静に考えると、これは自分の意思で
購入を決めているようで、けっこう他人の
意見に左右されているんではないかなと。
 
 
★今回の!なコピー。
 
 
人は、みんなが選んでいることを理由に
自分の買い物を決定する傾向がある。
と、行動経済学は分析する。
人は、重要な決断を、見知らぬ者にゆだねている。

 
 
大和證券グループの広告より。
行動経済学というのは、面白そうなフィールドだ。
あらゆる経済的な選択と人の心理との関係を
研究
する学問だ。
 
紹介したコピーのように
みんなが選んでいるので、自分も買ってしまうのは
なぜか。どんな心理メカニズムが働くのか、
脳がどう機能するのかなどを検証するのだ。
 
僕の知り合いに、凄腕のセールスレディがいる。
この方の仕事は販売ではなく、営業なのだが
取引先の小売店の販売のお手伝いをすることがよくある。
売り場に出て接客するのだが、まぁ次々と
売りまくること、売りまくること。
 
その場に立ち会ったわけではないが、
立ち会った人はみな口々にすごいと驚いていた。
それで実際にお会いして、なぜそんなに売ることが
できるのか、セールストークや接客態度など
いろいろなことを尋ねた時に、こんなテクを
話してくれた

 
なんでも、買おうかどうか迷っているお客さんに
その商品はいいですよと自分が勧めるより、
その商品を買ったほかのお客さんの声を紹介する

買う確率が高くなるそうだ。
それで、ここがキモなのだが実際はほかの
お客さんの声ではなく(そういう場合もある)、
自分の声をお客さんの声として話す
のだそうだ。
 
それはお客さんに嘘をつくことになるわけで
賛否があるかと思うが、本当にお客さんに
ふさわしいものしか勧めないということなので
そこは目をつぶるとする。
 
なぜ自分の声を他のお客さんの
声として話すのかというと、
お客さんの立場に立つとよく分かる。
店員が勧めると、なんだか無理に売りつけられ
ているようで、抵抗がある
というのがお客の心理。
 
しかし、他のお客の声は、いわば第三者の意見だ。
だから、ほかのお客さんにも好評だと
言われれば信用するし、そんなに評判がいいのなら
自分も欲しくなるという心理が働く。

それなら買って後悔することはないと思うのだ。
 
コピーのように、重要かどうかは別として
けっこう人は決断を見知らぬ者に
ゆだねているかもしれない。

自覚していないだけで。
 
最近、マーケティングにブログを活用するのも、
そんな人の心理や行動と、ネットの活用による
購入プロセスの変化が背景にあるようだが、
広告になると、うまくいかないのだな。
 
お客さんの声をたくさん紹介する
CMや広告って、やはり疑ってしまいません?
映画のCMで、よく「泣けました~」といった
お客の感想をたくさん流す方法があるが、
信じるどころか、いい感想だけを流して
いるんだろうとか、サクラをつかって
いるんだろうとか思われるようで、
僕の周りでは、はなはだ評判がよろしくない。

 

やっぱり、広告はバイアスがかかっているって

みんな思っているのだ。
 
人は広告を信用しないといわれて久しいが、
そんなマイナスの位置から、広告のアイデアや
コピーを考えるのは、大変だと思われるかも
しれないが、実は楽しかったりもするのだよ。
そんな風に思っているのは、僕だけですかね。