英語以外は面白くない、数学なんて全く分からない。

学校が終われば1分でも早くバイト先のスーパーへと向かう。

 

16~21時まで働いて帰宅する。

夕飯の準備をしながら掃除や洗濯をする。

やっと落ち着いて机に向かえるのは日付が変わる少し前。

 

 

夕方から掛け持ちの仕事に行った母が帰宅するのは最初は23時頃だったのに、

段々遅くなっていった。

夜中になることも珍しくなくなった。

その時は、例の男といつも一緒だ。

外で車の音がすると私は机のライトを消してそっと窓から外を見る。

運転手に男。助手席には母。

たまらなく嫌だった。

 

こんな繰り返しの毎日。

 

ある日、担任に呼ばれて職員室へ行った。

「お母さんに感謝しろよ」と、手渡された書類。

 

困窮している家庭の児童に向けての貸与金が支給されるとの内容だった。

「お母さん、お仕事の都合付けて市役所で手続きしてくれたよ。

 返さなくていいお金だから、申請がおりてよかった。

 これで修学旅行に行けるから心配しなくていい」

 

担任から言われるまで知らなかった。

そう言えば、、、入学してから毎月『修学旅行積立金』の名目で引き落としされていた。

毎月「お母さんに渡しておいて」と担任からもらった封筒。

それは、きっと残高不足で引き落としができなかった、それを知らせる書類だったのだろう。

 

「お母さんからいろいろ話は聞いてる。すごく大変な時だけど 

 アルバイトは無理しないで勉強しっかり頑張れよ」と、担任。

 

 

 

その時の担任との様子を見ていた子がいた。

学年トップの男子と仲良しの腰巾着的な存在の子。

彼が職員室にいたのに気が付いた。

 

 

数日後。

体育館で全員が集まって、スキーウエアの試着会があった。

私の高校では高2の2月に修学旅行でスキーをすることになっていた。

そのために、全員ウエアを試着して注文する。

 

いろんなサイズが並べられてる。

試着して友達同士で互いにワイワイ言い合う。

数少ない友人たちと楽しく試着する。

旅行が楽しみになっていた。

 

 

しかし。

試着を終えて教室に帰って来た時。

 

クラスの子たちが私をジロジロ見ている。

何だろう?と思って自分の机に行って驚いた。

 

「修学旅行に行く金のない貧乏」

 

マジックで大きく書かれた紙が机に貼りつけられていた。

恥ずかしかった。

貼り紙をはがして、ふと見回すと奴と目が合った。

 

私を見てニヤニヤしていた。

担任に職員室に呼ばれた時、居合わせた奴だ。

 

 

後から知ったことだけど。

奴の父親は市職員。ならば、私の家庭の事情は容易くわかるだろう。

 

 

翌日から嫌がらせが始まった。

机には「貧乏のくせにデブ」と貼り紙。

椅子には「デブ」「ブタ」とマジックで書かれてた。

私の名前を書いて、上からぐちゃぐちゃに塗りつぶされてた。

 

「何でこんなことするの!」

私は、職員室に居合わせた腰巾着に言った。

 

奴は私に答えることなく視線を逸らした。

そして、私に答えたのは学年トップの子。

「〇〇君はそんなことしないよ、言いがかりだよ」

 

 

学年トップの子が言う事に誰も反論しない。

腰巾着がバカにした目で私をあざ笑った。

 

 

 

その日以降、落書きは日常茶飯事となった。

そして嫌がらせ、いや、イジメはエスカレートしていった。

 

お昼休みになった。あれ?何か変だ。

お弁当がない!

 

私の隣の子がそっと話しかけてきた。

「〇〇(学年トップの子)が他の子に指示してみずかのカバンの中から弁当箱を 

 取り出してた」と、教えてくれた。

 

嫌な予感がして、教室の隅のゴミ箱を覗いてみた。

弁当箱が捨てられていた。

 

捨てられていた弁当箱を拾った。

それまで、話し声で騒がしかったはずの教室が静かだった。

 

全員が私を見てる。

自分の席には戻れずに教室を出た。

 

グラウンドの隅にある運動部のクラブハウスの裏に回った。

そこがタバコを吸う生徒たちのたまり場だと知ってた。

 

「ここで食べていい?」と、私が言った。

タバコを吸っていた数人の子たちは無言でうなずいた。

 

 

 

ココに通い始めて(笑)彼らと少しずつ話すようになってきた。

4~5人がタバコを吸って話してる、笑ってる。

パチンコのことや飼っているペットの話。。

もっとディープな話題かと思ったけど意外と普通(笑)

聞いてるだけで面白かった。

 

 

そのうち。

彼らと少しずつ話す機会が出てきた。

中でも一番中心となっていたのはT君。

どうやら両親が離婚してお母さんとお姉さんと暮らしているようだ。

T君のご家庭も経済的困窮のような感じだ。

 

恐る恐る話しかけてみた。

修学旅行の話になった時。

「パチンコで旅行代金を稼いででもう少しで貯まる」と答えたT君。

「お前、昨日めちゃ勝ってたよな~」と、周りの子たち。

 

 

ふぅ。。。なんてたくましい!

私もこんな発想ができてたらよかったのにな。。。

そしたら、お母さんが市役所へ行くこともなかったのに。

でも、今はバイト代のほぼ全額を家に入れてる。

これ以上バイトは増やせないし、、、。

 

なんかホッとした。

うまく言えないけど、ほんの少しシンパシーを感じた。

 

 

でも。。。こんな時間は長くは続かなかった。

もう学校に行きたくない。

退学したい。辞めたい。

 

そう思ってしまうさらなるイジメが起きた。

 

 

続きを書き綴ります。