では、文明発展上の画期技術とは何でしょうか?
それは経済・社会活動を変革し、制度・政策までをも変えて、
文明の発展段階を分ける……つまり〝社会を変える〟技術です。
以下では画期技術について、
私的文明論〝文明の星〟理論(仮説)にもとづき、
他の様々な技術や政策との関係も含めて考察します。

この理論では〝知る・する・決める、ヒト・モノ・環境〟という六つの要素から、文明の|構造《しくみ》と|機能《はたらき》を説明します。
この六要素を詳しく言うと、科学・技術、経済・社会活動、
制度・政策、人的資源、物的資源、自然・社会環境です。
(以後は技術、社会活動、政策などと略すことがあります。)



文明活動の本体は、全ての人々が営む経済・社会活動ですが、
自然から富を得て、それを豊かにするのが科学・技術であり、
人々の間で富を分け、それを健全に保つのが制度・政策です。
技術と政策は、社会活動を助ける文明の両輪といえます。

しかし、技術の利用には物的資源への具現化、
政策の実現には人的資源の確保が必要です。
また、現代の先進的な科学研究・技術開発には
多くの資金などを要し、政策的な支援が必要ですが、
そのようにして政策が新技術を導入する際には、
資源・市場などの自然・社会環境が必要条件となります。

以上6つの〝文明の|要素《エレメント》〟から文明を説明するのが、
〝文明の星〟理論(仮説)です。
ご興味がおありの方は、『文明の星』シリーズなども
ご覧いただけましたら幸いです。

この理論からみると、技術は社会を豊かにし、
政策は社会を健全に保つ、文明の両輪といえます。
その|経路《ルート》は他の要素との関係で次の4つずつあり、
これを〝文明の|体系《システム》〟ということができます。



(1) 直接ルート:
多くの他技術を高めて文明社会の段階を分ける、
農耕、動力、電算、AIなどの画期技術。
社会に直接働いて生産投資と互助配分を最適化する、
産業振興、社会保障などの経済・社会政策。

(2) 間接ルート:
画期技術を利用するため必要な物的資源へと具現化する、
土建、電機、光電、|応用情報工学《インフォマティクス》などの実現技術。
政策実現に必要な人的資源(国民の健康や教育)を得る、
保健、教育などの人的資源政策。

(3) 自助ルート:
技術自体の生産性を高める研究・開発技術。
政策自体の健全性を保つ行政管理政策。
※技術も政策も、広い意味では社会活動に含まれるので、
こうした経路があります。

(4) 互助ルート:
政策の生産性を高める社会工学的技術。
技術の健全性を保つ技術的政策。
※技術的政策の具体例は、資源・環境政策や
|社会基盤《インフラ》・防災・防犯・国防政策です。

 

技術が進むと、社会活動は拡大・省力・複雑・加速化します。
すると、利害調整のために新たな政策が求められ、
政策は領域国家の発展や国際化のように広域化する一方、
民主化・自由化・地方分権・人権増進など分権化します。
また、ある技術段階で利害調整政策を極めると、
その限界を越える次世代技術導入政策が求められます。

技術→社会→政策→技術……の順で進むその変化は、
〝文明の|循環《サイクル》〟と呼ぶことができます。

 



そこでAIは農耕・動力機関・電算機に続く画期技術として、
すでに国の技術的政策である|Society《ソサエティー》5.0
(狩猟・農耕・工業・情報社会に続くAI社会をめざす)や、
行政管理政策を初めとした|DX《デジタル・トランスフォーメーション》政策
(行政から社会へと情報社会完成・AI社会建設を広げる)
により、導入されつつあると考えます。

さらに、スマートグリッド(技術的政策)、
マイナンバー(行政管理を含む総合政策)、
データヘルス(保健政策)や|Edtech《エドテック》活用(教育政策)、
スマート/スーパーシティ(総合的な地方自治政策)
といった他の様々な政策も、AIの導入で可能となり、
または導入を前提にした政策といえると思います。