次に、人間と文明の関係についていうと、
人間の二大特質である無制限的な想像力と欲求が、
文明の両輪である技術と政策を発展させ、
そのことがさらに、人間の想像力と欲求を
無制限化していくと考えられます。

まず、合理的推論から完全な空想に至る
人間の無制限的な想像力は、
知性(因果法則の発見・活用能力)の基礎となります。
知性は、検証で事実か空想かに分かれる科学的仮説や、
法律概念、貨幣価値などの制度的|虚構《フィクション》を通じて
社会活動を豊かにする自然科学的技術や、
政策実現を助ける社会工学的技術を可能にします。

すると、技術によって高度化した文明活動は
遺伝的に固定された本能だけでは営めない一方、
人間にできることを増やしてくれるので、
人間の欲求は多様化・可変化していきます。
この、広い意味での人間性(欲求の複雑性)は、
既存の技術のもとでの社会的な利害調整政策と、
その限界を越える新技術開発政策を必要とさせます。

このように、技術が社会活動と政策を助け、
政策が社会活動と技術を助けることにより、
あたかもロータリーエンジンか三極モーターのように
文明発展の|循環《サイクル》を回し、
それによる社会活動の発展がさらに、
人間の想像力と欲求を無制限化します。

以上のような人間が持つ想像力・欲求と
文明を支える技術・政策の相互作用からは、
人間の生存に直接必要な〝実利活動〟に加え、
生存に直接必要ではないが、必然的かつ有益な
〝文化活動〟がなぜ生まれ、役立っているのか?
といったことも説明できると思います。