〝素敵なファースト・コンタクト ハート!? 〟

『星に願いを』の後半を書き直し、改題しました 星
一オタクの目線(笑)で、人類と異星人の接触を描きました 。

 

次の作品に感動し、書き直しました ラブ
イラスト:

『黒』 https://www.pixiv.net/artworks/98430695
『w』 https://www.pixiv.net/artworks/63134293
『慈愛の女神』 https://www.pixiv.net/artworks/105119343
『星天使』 https://www.pixiv.net/artworks/104735253
動画:

 『stars we chase』 https://www.youtube.com/watch?v=ZjP1zJEbFOI
『MONSTER GIRLS』 https://www.youtube.com/watch?v=lZ0aPIGXk5g
『Strawberry Trapper』 https://www.youtube.com/watch?v=uDAc22a7rvM
『FARAWAY』 https://www.youtube.com/watch?v=0Ikl7EIGXJ4&list=RD0Ikl7EIGXJ4&index=1

奇想譚から文明論まで湧き出すような、
素敵な刺激を与えてくれる文化的作品に感謝します ゆめみる宝石

 

11月下旬に投稿したのですが、さらに改善の余地があると考えて直し、

やっと今回、全ての小説サイトに完成版を掲載することができました。

異星人が使った六芒星(✡)は、私見〝文明の星〟理論によるもので、
後の『イシュタル』や『会見』にも書きました。
執筆後、過去・現在・未来を語る悪魔が多いことに気づきましたが、
それについては後の 『プルソン』 で理由付けしました。

ご興味がおありの方は 『Lucifer(ルシファー)』 シリーズ他作品や、
エッセイ 『文明の星』 シリーズもご覧いただけましたら幸いです。

 

『 カクヨム 』 『 小説家になろう 』 『 エブリスタ 』 『 pixiv 』 

『 NOVEL DAYS 』 『 アルファポリス 』 『 ハーメルン 』 

に投稿しています ハートのプレゼント

 

 

 

『来訪』

 

不思議なインターネット・サイトを見つけた。
検索画面に〝宇宙に興味はありますか?
……文明の星〟と派手な広告が出ていたので、
|保安《セキュリティ》ソフトの安全表示を確認して、クリックした。

|折《おり》しも月面で異星人との|〝最初の接触〟《ファースト・コンタクト》があった、
という衝撃的な報道が流れた直後のことだった。
また、なぜか私の住む地域では、関連情報が
規制され始めていたという事情もある。

新しい映画か書籍の宣伝と思いきや、画面には
〝文明の星(The Star of Civilization)〟の題名と、
|六芒星《ろくぼうせい》(✡)が円で囲まれた図形、
いわゆる〝|ソロモンの印《ソロモンズ・シール》〟が現れた。



オカルトかSF系のゲームサイトかな?
と思い直して見ていると、
「貴方は地球外文明が存在すると思いますか?
また、それはなぜですか?」という質問が浮かんだ。

興味をひかれた私は回答欄に、
「宇宙の規模や知的生物進化の確率、
文明の想定寿命を掛け合わせた
〝ドレイクの方程式〟からみて、そう思う」と答えた。

するとまた「〝フェルミ・パラドックス〟
という言葉を知っていますか?
またそれは、なぜだと思いますか?」
という質問。

私は再び、「観測技術が進んでもまだ、
知的種族の存在を示す証拠は見つかっていない。
文明の発展や存続を|阻《はば》む要因、
〝グレート・フィルター〟の存在も考えられるが、
個人的には、異星種族が人類に対して、
自らの存在を隠しているだけと思いたい」と答えた。



すると即座に、「それはなぜですか?」という質問が、
回答の下に現れた。

私は「知的種族が人類だけというのは、つまらない。
かといって異星種族が敵対的で危険とか、
人類は原始的で交渉にも値しない、というのも嫌だ。
私達を将来の同胞と考えつつ、相互の利益を考えて、
一定の発展段階に達したら接触してくれるような
種族がいてくれるのが、一番望ましい」と答えた。

次に今度は、「あなたが今、
最も知りたいことは何ですか?」という質問。

私は「そうした知的種族の有無や状況、
意図について知りたい」と回答。
すると突然画面が切り替わり、一人の少女が映った。
ゴスロリ衣装で優雅に|佇《たたず》み、長い黒髪、真紅の瞳。



知的な|眼差《まなざ》しをした彼女はこう言った。
「ご回答ありがとうございます、そして初めまして! 
私がまさに、そんな種族の中のひとつの、代表人格です。 
それでは窓の外をご覧ください」

なあんだ、いたずらサイトか。 
そんなものにはひっかからないぞ!
などと思っていると、
外で人々の叫び声が上がった。
意志力が弱い私は思わず腰を浮かし(笑)、
窓を開けて周りを見渡した。

星が輝く晴れた夜空を、
いくつかの大きな流れ星のようなものが、
ゆっくりと動いている。
私の住まいのちょうど真上を、丸みを帯びた、
銀色の光を放つ巨大な円盤が通り過ぎ、
街のまん中あたりの上空に静止した。



おいおいちょっと、この展開は早すぎないか!?
驚いた私は、再び画面を見た。
すると彼女は、私の動きを知るかのように、
再び説明を始めた。

「かつて銀河系を統一した〝先帝〟種族は、
最も忠良で心優しい文官種族だったサタンに、
当時の人類を含む発展途上種族の
文明発達を助けるよう、命じました。
彼女は〝先帝〟を神に見立てた神話を広め、
その悪役も演じるなどして、多くの種族を支援しました」



「しかしその後、好戦的な側近軍事種族の間では、
腐敗と抗争が激化して、|遂《つい》には内戦が起きてしまいました。
残念ながら、それに巻き込まれた〝先帝〟種族の
母星も破壊され、帝国は崩壊の危機に陥ったのです」

「そこでサタンは未来ある種族達を守り、
星間社会の秩序を取り戻すため、
〝先帝〟種族の生存者や、私達友好種族の
支援のもとに、新政府を設立しました」

「彼女は現在、新興の技術・産業種族や
良識的な軍事種族、さらには基盤元素の異なる
銀河系外周の種族とも協力して、
平和の回復と国家再建に努めています」

「内戦を受けて、途上種族との交流条件も緩和され、
今回ご参加いただいた大規模な|質問調査《アンケート》を経て、
人類の技術的・政治的|成熟度《リテラシー》を確認できたことから、
接触方針の変更が決定されました」



「新皇帝種族からのご|挨拶《あいさつ》を初め、詳細については
まもなく、全国民の皆様に届く方式で発表される予定です。
これからも順調に人類文明の発展が続けば、
皆様は将来民主化される予定の星間国家において、
必ずや名誉ある地位を占められることでしょう!
以後、新国家の政策によろしくご協力をお願いいたします」

「また今回の調査にご参加くださった方は、ご希望により、
政策|調査員《モニター》として登録いただくことも可能です。
自己紹介が遅れましたが、
私はサタンの同盟種族、バラムと申します。
これからも、よろしくね!」
彼女がにこやかに微笑むと、動画は終わった。

……と思ったが、すぐまた画面が開き、
私はうわ、と驚いて少しのけぞった(笑)。

「あっ、あと私達は悪魔じゃありませんからね。
トップページの|意匠《デザイン》も魔法陣とかじゃなくて、
私達が共有する文明の発展に必要な、
〝技術、政策、経済・社会、物資、人材、
自然・社会環境〟という六つの要素を表した、
科学的で実用的な紋章なんですよ!」



ダークな衣装に似合わないほど明るい笑顔で
|親《した》し|気《げ》に、「それじゃあ、またね!」と
彼女がウインクしてみせると(笑)、
今度こそ本当に動画は終わった。

彼女の言葉は文章としても表示されていたので、
私はすぐに記録を保存し、再確認を始めた。
歴史的事件に立ち会って興奮した頭の中を、
様々な疑問が|駆《か》け|巡《めぐ》った。

第一は、私達と彼女達の歴史的なつながり、
特に神話との関わりだ。



まず、バラムという名を検索すると「|双眸《そうぼう》が赤く輝き、
過去と現在、未来について正しく答える悪魔」とある。
確かに彼女はそんな瞳と喋り方だったので、そうした
容姿や論理的|話法《わほう》の文化をもつ種族かと思った。

神話以外にも過去に幾度か、
人類と異星人との接触があったとすると、
昔の怪しげな|魔導書《グリモワール》にも、多少の真実が
含まれていたのかもしれない。



ただし元々、神魔の対立はいわば〝教育劇〟だったうえ、
現実には〝先帝〟側近種族の|悪行《あくぎょう》によって、
善玉役と悪玉役の〝天使〟の立場が
逆転してしまった、ということなのだろう。
何だか人類の歴史でも時々見かけるような、
考えさせられる話だなあと思った。

とはいえ、神の|原型《モデル》は銀河系の皇帝種族で、
神話の語り手は魔王役の臣下種族、
堕落したのは〝天使〟とされた側近種族達の方だった!
……というのは確かにややこしい。

この地域で通信規制が行われる一方、
異星人側も|質問調査《アンケート》以外の双方向対話を
避けていたのは、従来の一般的伝承とは異なる
|微妙《センシティヴ》な公表内容のせいだったのかもしれない。
規制をかわして理解を得るための方策が、
事前調査と電撃訪問だったというわけだ。



しかし、どんな科学や事実も越えて、
心の救いを与えてくれるのが神話の効用だ。
異星人が神話を広めたからといって、
彼女達は伝令に過ぎないともいえるし、
|善行奨励《ぜんこうしょうれい》の教えに変わりはないのなら、
神話自体の否定にはならないと感じるが……。

第二は、いま私達の前に姿を現した彼女達の正体、
すなわち生物・社会学的な特徴だ。

恒星間航行ができるぐらいだから、
通信規制を|潜《くぐ》るくらい|造作《ぞうさ》もないだろうが、
異星種族が人類と全く同じ姿というのは考え|難《にく》く、
画像は本当の姿ではない可能性が高そうだ。



〝代表人格〟や〝彼女〟といった表現からみて、
|量子頭脳への人格転移《マインドアップローディング》を
達成していることも考えられる。
となれば当然、その映像や|再転移《ダウンロード》用身体の属性も、
自分達や相手方の必要や好みに応じて
自由に最適化できるはずだ。

そうしたあり方は、自分達自身の生命活動さえも
変換・再現・改良できる高度な技術を持ち、
広大な宇宙の多様な環境に|拡《ひろ》がり住んで、
複雑高度な経済・社会活動を営む星間文明に
とっては、必然の流れかもしれない……。
私は以前から|常々《つねづね》、そう思っていた。



〝同盟種族〟という言葉を使っていたので、
バラム自身は軍事種族という可能性もある。
一体どんな戦いを行っていて、
今の戦況はどうなっているのだろう?
古代の地球を訪れて神や悪魔を演じることができ、
以後も発展を続けてきたような連中同士の戦争だ。

エドワード・E・スミスやエドモンド・ハミルトン、
グレッグ・ベアの名作SFを読んだ時の記憶が蘇った。
|負の物質球《ネガスフィア》、|空間破壊砲《ディスラプター》、さらには
より〝効率的〟な|遠隔素粒子操作《ノアク》兵器……、
惑星や恒星、星域さえも破壊できるような
超兵器を思い出して、ぞくりとした。



第三は、彼女達の文明の意図と能力から
予想される、今後の人類との関係だ。

|六芒星《ろくぼうせい》の紋章に示された文明観を調べてみると、
|呆気《あっけ》ないほど単純なもので、逆に言えば
それだけに手堅く、|普遍的《ふへんてき》なもののようだ。
知る・する・決めるという3つの文明活動と、
ヒト・モノ・環境という3つの内外環境条件を、
モレなくムダなくバランスよく、組み合わせている。



6つの要素を結んでいくだけで、実に色々なことが分かる。
全ての人々が営む文明活動の本体は経済・社会活動だが、
富を生んでそれを豊かにするのが技術、
富を分けてそれを健全に保つのが政策となる。
ただし、その|経路《ルート》はひとつではない。

社会を変える画期技術、施設や製品に実用化する実現技術、
政策を助ける社会工学的技術、技術を生む研究・開発技術。
社会に働く経済・社会政策、保健・教育など人的資源政策、
技術を助ける技術的政策、政策自体を高める行政管理政策。
技術も政策も4種類ずつ、対称的な文明の|構造《システム》が現れる。



では、そうした仕組みがどんな働きをするのか?
技術が物的資源に具現化すると、社会が変わる。
社会活動が拡大・省力・複雑・加速化すると、
より高度な利害調整のための政策が必要になる。
だが社会の人的資源が向上すれば、政策も変われる。
必要なら大勢で動くが、衆知も活かせるようになる。

政策は国際化や|全地球的統治《グローバル・ガバナンス》など広域化する一方、
民主化・自由化・地方分権・人権保障など分権化する。
また政策は利害調整を極める一方、その限界を突破すべく、
資源や市場を考えながら、新たな技術の導入も促す。
……そうした流れで、技術と政策が人々の力を増幅し、
経済・社会を発展させる文明の|循環《サイクル》も説明できる。



〝コロンブスの卵〟というか、どうしてこれまで
誰も気づかなかったんだろう?とさえ感じる。
いや、もしかすると人類の社会でも、有識者の間では
〝知る人ぞ知る〟たぐいの知識だったのかもしれない。
そこで私もその理論を逆用して、
彼女達の文明がどのようなものかを推測した。

軍事力を背景とした専制国家が拡大するうちに、
商工業者や民生官吏が増え、生活水準も高まることで、
全体としては民主化や自由化に向かっていくというのは、
人類史においてもお|馴染《なじ》みの歴史的な流れだ。
技術が進めば社会活動は拡大・複雑化などしていくので、
政策も広域化と同時に、分権化していくというわけだ。

ただし意思あるAIと化しているなら、技術力は圧倒的だ。
技術をおおまかに2種類に絞って見たとしても、
社会の繁栄と安全をもたらす自然科学的技術と
人々を組織し、公正で効率的な政策の立案・実現を助ける
社会工学的技術、いずれも|桁違《けたちが》いに強力だろう。

技術による文明発展の健全性を保つ、政策でも同様だ。
同じく政策をざっくりと2種類にまとめて見ると、
ある技術水準で社会に働きかける利害調整政策に加え、
新たな技術の適切な開発・普及を助ける技術的政策も、
大規模、迅速、高度で説得力があるはずだ。



彼女達との交流や交渉は、大変そうだと思う。
〝実力と正当性は政治の両輪〟というのは
政治学の初歩だそうだが、
私達人類は、いきなりどちらも|凄腕《すごうで》の|師匠《ししょう》達が
ずらりと居並び、一同|切磋琢磨《せっさたくま》する名門道場に
放り込まれたようなものだ。



しかし、そんな心配による|吊《つ》り|橋《ばし》効果(?)もあってか、
彼女の姿は実に美しく想い出された。
おお神様……SFファンの私には、どストライクです!
実際の姿は知るのが恐ろしい気もするが、
それさえギャップ萌えオタクにはむしろ|御褒美《ごほうび》です
……って、そっちかよ!みたいな(笑)。



私的な趣味はさておき(笑)、客観的にも悪い話ではない。
少なくとも現時点で、彼女達に悪意は見受けられず、
友好的な意図を持ち、健全な発展を目指す文明のようだ。
将来的には平和が戻った星間社会で、
技術や産業、政策、文化面での交流ができるなら、
むしろ明るい未来への可能性が開けたと思う。

初めは|厄介事《やっかいごと》に巻き込まれたか?という心配もあったが、
異星人はいると分かったし、他にも関係者は大勢いるし、
もはやどのみち全人類は|一蓮托生《いちれんたくしょう》だ。
地球全体として、対処するしかない問題だろう。

彼女の未来予測が当たることを願いつつ、
続報を探していると、新たな画面が勝手に開いた。
来たよ来ました、〝新皇帝からのご|挨拶《あいさつ》〟!
動画を見ると、何と栗色のおかっぱ頭をした、
とても可憐で|健気《けなげ》な感じの女の子が、
優しく愛らしい声で話し始めた。



「親愛なる人類の皆様、はじめまして。
私は銀河帝国の新皇帝種族、サタンの代表人格です。
美しく、見事に発展した地球を再び訪れることができ、
私の心は懐かしさと、嬉しさでいっぱいです……」

まあ、私みたいな萌え|愛好家《マニア》は増えたからなあ(苦笑)。
いつもより明るい星空を見て、私は再度心から願った。
どうか人類が〝|新銀河秩序《ニュー・ギャラクティック・オーダー》〟のもとでも
星間社会に貢献し、幸せな未来を得られますように……。