この文章は、『 カクヨム 』 『 小説家になろう 』 『 エブリスタ 』 にも掲載しています。
『デビルマン』に続き、『銀河英雄伝説』が再アニメ化されるそうです。この作品もまた、文明要素の全てを描いたスケールの大きな作品です。
① 科学・技術( 執筆年代などから A I やバイテクこそ出てこないものの、数万隻規模の宇宙艦隊戦! 帝国と同盟の、艦艇設計思想の違いも描かれています)。
② 経済・社会活動(単一文化国家と多文化国家。戦争と民生や、政治と民心の関係。商業自治領フェザーンと、その政治・宗教的背景。カルト犯罪や極右の台頭のように、その後の未来を予見したかのような設定もあります)。
③ 制度・政策(専制国家と民主制国家の対立、政略と戦略の関わり)。
④ 物的資源(焦土戦術や補給戦、武装解除とその潜脱)。
⑤ 人的資源(〝英雄〟達など優秀な人材やその適材適所、専制国家の腐敗堕落や民主国家の衆愚化)。
⑥ 自然・社会環境(二つの国家を結ぶ二本の宇宙回廊や、戦術に影響する恒星・ブラックホールといった宇宙的〝地理〟。人種差別的封建国家と、その難民が建てた多人種的民主国家の成立に至る、未来史的背景)。
……全てが描かれています。
私が後に、美少女アニメやMAD動画を見て妄想をふくらませたのをきっかけに(笑) 、素人SFを書く中で文明論などを考えることができたのも、この作品を見て、読んでいた影響が大きいです。
特に、『人的資源』や『社会工学』という言葉が使えるようになったのは、この作品のおかげです。
それまでは、誰かが誰かを道具のように利用したり、モノのように操作したりする印象がある言葉は、苦手でした。
しかし、この小説には社会の民度や、人材の育成・確保と活用の大切さが、説得力をもって描かれています。
恐ろしく残酷な旧帝国は、民主政の衆愚政治化から生まれました。しかし後に新帝国では、英雄達など優秀な人材によって改革に成功しました。一方、それと対抗すべき自由惑星同盟では、帝国からの逃亡者受入れなどもあって、再び政治が腐敗し、敗北しますが、民主主義への希望は残ります。
銀河帝国には優生学的な思想がありましたが、自由惑星同盟にも『人的資源委員会』などという組織がありました。残念ながら同盟は帝国に、その人材の面でも負けてしまいましたが……。
そこで考えてみると、例えば技術は富の生産を増やして社会を豊かにしますが、多くの技術は物的資源に具現化されないと、社会を豊かにできません。それと同様に、政策は富の分配を調整して社会を健全に保ちますが、どんな政策も人的資源がなければ実現できません。そんなことに、気づかされました。
そういえば子は宝とか、地域は人材の宝庫などいった表現も、普通に使われます。個々人にとって最も大切な資産は自らの健康や教養であるという意味では、属人的な資源であるとも言えましょう。誰かが誰かの資源というのではなく、社会の全ての人々にとって、あるいはお互いや自分自身にとって、全ての人々の健康や能力が資源、ということなのでありました。
自分が自分を律するように、社会の全ての人々が様々な社会的活動に参画《さんかく》し、自分達自身の技術や政策や経済・社会活動といった文明活動を制御して、社会を豊かにし、また健全に保ち続けることが重要なのだ、と思うようになりました。
『文明』という大きな視点を教えてくれた『銀河英雄伝説』、今度も素晴らしい映像化作品ができることを、期待します。
