文明論に、興味があります。

 

人類文明が高い生活水準を達成する一方、

経済・社会活動の拡大・複雑加速化や少子超高齢化が進行し、

地球規模の自然的限界と社会統合も見えて、、

文明社会の持続可能な発展が問われている今、

私達の未来を考えるうえで、役立つ考え方だと思います。

 

 

(1) 文明とは

 

文明とは、土木技術のような自然科学的技術や、

国家制度のような社会科学的技術のように、高度な技術を伴う、

知的生命活動の様式です。

 

知的生命活動とは、頭脳という専門分化した器官によって、

環境の違いや変化に応じてよりよく活動を制御し、

よりよく自己と種族の保存を行うことができる生命活動です。

 

文明と似た言葉に文化というものがありますが、これはもう少し意味が広く、

必ずしも高度な技術を伴わない知的生命活動の様式です。

メソポタミア文明に対して縄文文化などというときは、この意味であろうと思います。

サルのイモ洗いなども、文化であるといわれたりします。

 

また、文化にはもうひとつの意味があり、

高度な技術を持たない時代から存在する、美術や儀礼など、

生存には直接必要ではないが、知的生命活動に必然的に伴い、

かつ有意義な、生活様式をさすこともあります。

 

後者の文化は文明活動の一部をなし、

必須の活動がAIなどにより行われるようになると、

むしろ重要性を増していく活動なのではないかと思われます。

 

例えば、美しい街並みなど文化的な需要が都市開発に反映され、

ゲーム開発事業が画像認識AIの開発にも役立つように、

人々が自らの新しい欲求や価値観を知ったり

それを実現してくれる力を生み出したりする場となりうるからです。

 

文明の話に戻りますと、人間はこれまでのところ、文明をもてるだけの、

高度な知性(知的生命活動能力)を備えた、唯一の生物です。

人類は文明によって、繁栄してきました。

 

しかし知性はその、環境の変化に応じて活動を変え得うるという性質に加え、

それがさらなる環境と活動の複雑化を招くという相乗効果も重なって、

質的にも量的にも無制限的な欲求(希望や欲望)をもたらし、

人間に無限の可能性と共に、危険性をも与えています。

 

良い面も悪い面も含め、いわゆる〝人間性〟といわれるものは、

この〝知性からくる欲求の無制限性〟を指すのではないでしょうか。

 

人類がこれからも繁栄していくには、
人間自身も含めた文明全体のあり方についてよく知り、考えて、
この人間性が持つ可能性を最大限に活かすと共に、

危険性を抑制ないし昇華・発散させて最小化することにより、
文明の健全な発展を図っていくことが必要だと思います。

 

 

(2) 文明の6つの要素

 

文明には、その発展を左右する6つの要素があると思います。

① 自然・社会環境 ( 地形 ・ 気候や天然資源、近隣文明 、先行文明など )

② 科学・技術 ( 社会的な事実認識 ) 

③ 物的資源 ( 科学・技術の実現に必要 ) 

④ 経済・社会活動 ( 社会的な現実活動 )

⑤ 人的資源 ( 制度・政策の実現に必要 ) 

⑥ 制度・政策 ( 社会的な意思決定 ) 

 

これらは、①を頂点として⑥までが右回りに並ぶ六芒星《ろくぼうせい》(✡)、
いわゆる『ダビデの星』、あるいは『籠目《かごめ》の紋様』として図示することができ、
私はそれを『文明の星(The Star of Civilization)』と呼んでいます。

 

 

人間は①自然・社会環境の中で、②科学・技術(始めは経験的な技術)を獲得し、

③物的資源に具現化して、④経済・社会活動を豊かにします。

 

その余裕を生かして⑤人的資源を育成・確保することにより、

経済・社会を健全に保つための⑥制度・政策が作られていく。

 

またその制度・政策が、①自然・社会環境の影響(恩恵や制約)のもとで、

次なる②科学・技術を開発・普及していく……。

 

このように螺旋(らせん)的な上昇の循環=スパイラル・アップ・サイクルが、

文明の発展を形作っています。

 

技術が進めば生活が変わり、生活が変われば政策も変わります。

 

科学・技術が進歩すると、経済・社会活動は大規模化・複雑化・加速化し、

特に人間の仕事においては、肉体労働や単純事務労働は機械に任せられるので、

意思決定やその内容・実施の点検が重要になってきます。

 

そこで制度・政策も高度化し、また巨大化と同時に分権化してゆきます。

すなわち、必要とあれば大勢が動くが、

それにあたっては衆知を集めて企画や改善に活かせるよう、

国際協調主義やグローバルガバナンスのように巨大化すると同時に

政治的民主化や経済的自由化、地方分権のように分権化してゆきます。

 

(3) 現代文明の課題

 

文明には、その発展段階を分けるような画期的技術があります。

従来の全ての技術分野をもとに、新しい分野を拓き、再び成果を還元するような、

〝新規性〟と〝多能性〟をもった技術です。

 

農業技術は体外物質、

すなわち道具や器械の利用を通じた食料供給や都市建設によって、

文明を生み出しました。

工業技術は、体外エネルギー、

すなわち動力機関の利用を通じたパワーとスピードの恩恵によって、

文明を世界規模に拡大しました。

情報技術は、体外情報媒体、

すなわち電算組織の利用を通じたコントロールの提供、効率化によって、

地球的限界への到達の衝撃を緩和しました。

 

しかし、人類文明はまだ、地球という空間的限界のなかで、

時間的な持続を見通せるだけの技術を持ってはいません。

 

また、科学・技術が経済・社会活動を豊かにしても、

その経済・社会活動を健全に保てるような制度・政策がなければ、

文明を発展させ続けることはできません。

 

人類はいま、① 科学・技術の具現化に必要な 【 物的資源 】 、

② 制度・政策を考え、支え、受けて活かせる 【 人的資源 】 、

③ 科学・技術を受けた富の再生産と、制度・政策を受けた富の再分配からなり、

全ての人が営む文明活動の本体である 【 経済・社会活動 】 の、

3つの持続可能性の問題に直面しています。

 

 

 

これらの理論的問題は、次のような具体的課題として現れます。

人々が生きていくために必要な資源 (財、富) の、

自然からの生産(獲得)と、人々の間での分配の課題です。

 

① 特定の資源が不足する資源枯渇。

② ある資源の利用が他の資源を損なう環境破壊。

③ 資源の分配が不適切である貧困・不公正。

④ 公正感覚の欠如や食い違いから生じる戦争や犯罪。

 

これら4つの具体的課題は、6つの文明要因と同様に、

相互作用の関係にあります。

 

 

これまでそうした課題は、適切な技術や政策が得られない場合、

さらなる戦争や各種の淘汰によっても〝解決〟されてきたのかもしれません。

 

例えば、偽書『アイアンマウンテン報告』に書かれたように、

あってはならない〝戦争の効用〟というものがあります。

① 科学・技術の発達。 

② 新制度・新政策の導入。

③ 経済・社会活動における活性化や格差縮小、統合や安定化。

④ 老朽市街地など物的資源の更新。 

⑤ 私のような虚弱者など人的資源の淘汰。 

⑥ 自然・社会環境の再認識や改善。

 

社会的な認識・決定・行動という3つの文明活動と、

その必要条件あるいは対象となる3つの環境要因という、

6つの文明要因の、いずれに対しても良い影響を与えてしまうことがあるのです。

 

……ただし、莫大な犠牲や費用、危険を代償として。

 

悪意だったら非難もできますが、

困窮さらには善意から犠牲が容認・要求されるのは、もっと悲しく恐ろしい。

 

また、文明の発展により生活水準や武器の威力は向上し、

地球という自然的な限界や、国際社会の一体化も見えてきました。

 

今や従来のようなあり方を許容し続けることは、

非人道的、無責任、非効率かつ不確実で、将来性がなく、自滅的でさえあります。

新しい技術と、政策が必要です。

 

 

(4) 人類文明の未来

 

新しい技術は、生まれつつあります。

 

物的資源の利用に伴う資源の枯渇や環境破壊を防げる、
新材料や新エネルギー、生物工学(バイオテクノロジー)、
生物模倣工学(バイオニクス)の技術。
 
人的資源の経年・経代劣化を人道的な手段で防ぎ、補える、
先進医療・教育技術やHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)の技術。
 
経済・社会活動が複雑急速化しても、
従来は人間にしかできなかった役務サービスや技術開発、
さらには個人的・社会的な意思決定を支援し、
生産性を高めつつ、争い少なく上手に利害を調整して、
再分配と再投資を両立させ続けられる、
人工知能やロボット、IoT、ビッグデータ処理の技術。
 
それは、人工知能を中心として、従来の技術を体内化あるいは親和化し、
機械などの人工物と、生体などの自然物の障壁を取り払うことによって、
双方の持続可能性を高め合わせる技術です。
 
簡単に言えば、体内環境を含む自然環境や社会環境に優しい、
『親和技術 ( familiar technology ) 』と呼び得る技術です。

 

新しい政策も必要です。

最もよく文明課題を解決し、生産性を高めうるように新技術を開発・普及できる、

科学・技術政策。

新技術を悪用・誤用せず、活用し得る人材を育成・確保できる、人的資源政策。

新技術により健全な経済投資や利益の社会還元を促せる、経済・社会政策。

 

肉体労働、単純事務労働はもとより、専門頭脳労働までもが

機械に代替・支援されていく時代にあって、人間に残された大事な〝仕事〟、

全ての人々が立案・実施や点検・改善に関わってゆくべき、

人間だけが主体となれる活動です。

 

こうした技術を適切に開発・普及したうえで、

経済・社会を健全に保ち続ける政策を実現できれば、

さらにはそれを、宇宙施設など閉鎖系における文明活動の維持に応用することで、

地球外への進出も可能となるでしょう。

 

英語での表現がふさわしいかどうか分かりませんが、

私たちはこの使い魔 ( familiar ) たちを正しく生み出し、

使いこなしてゆかねばならないと思います。

 

人類文明の未来に、期待したいです 🌏。

 

 

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(文明の潮流)

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(人工知能 [AI] の画期的性格について)

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(持続可能性 [sustainability] について)

https://ameblo.jp/lovelucifer/entry-12485316874.html

 

 

この仮説は、
様々なSF小説やコミック、アニメ、映画、音楽やフィギュアなどに触発され、
それに対するファンレターの一部として小説『 Lucifer(ルシファー)』を書くなかで
考えたものです。
 
様々な感動や刺激を与えてくれた文化的作品に、感謝します。