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〝悪魔の力を軍事利用!? 代償は……〟

 

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『召喚』

 

|正直《しょうじき》言うと、確かな人生設計や使命感があって
軍事官僚になったわけじゃない。
愛する母が、|真面目《まじめ》な貴方は|手堅《てがた》い仕事についたうえで、
好きに自分の生活を送ればいいといったからだ。

一見|羽振《はぶ》りがいいが実は問題のある、
父の分まで|賄《まかな》ってほしい、
それでもせめて|籠《かご》の鳥のような自分の代わりに、
少しでも自由のある人生を送ってほしい……、
という切実な願いもあることに気づいたのは、
だいぶ後になってからのことだった。

もちろん、そのような甘ちゃんのぼんくら息子が
社会を上手く渡って行けるはずもなく、
世を|拗《す》ねた私は人間の理想や善意など、
何も信じなくなっていった。



そんなわけで、たとえヤバげな力であっても、
悪魔の力を軍事利用できたら凄いと思った。
中二病オタクの妄想みたいな提案だが、
実際そうなんだから仕方がない(苦笑)。

不思議なことに、政治的な追い風も吹いた。
オカルト頼みの国家|計画《プロジェクト》なんて、
ナチの親衛隊みたいでロクでもないとも言われたが、
文句があるなら作戦を認めた軍上層部に言ってほしい。

|獅子《しし》の悪魔マルバスは、陸戦に。
海の悪魔フォルネウスは、海戦に。
炎の悪魔フラウロスは、航空宇宙戦に。
嘘を操る悪魔ベリトは、情報戦に。
そして天文学や鉱物学・薬学の悪魔モラクスはNBC戦、
すなわち核や生物・化学兵器という特殊兵器の戦いに……。
超常の力を得た|我等《われら》が|国軍《こくぐん》は、
世界に類なき無敵の軍団と化すだろう。

数十年に渡り|忌《い》まれ、無視され、馬鹿にされ、
時には|哀《あわ》れみの|眼差《まなざ》しで見られながら、
研究を続けてきた成果が試される時だ。
儀式は終わった、さあ来い悪魔ども!

地下室内に妖しく輝く紫色の霧が立ち込めると、
5人の個性的で、この上もなく愛らしい少女達が現れた。
実際の姿はおぞましい怪物なのかも知れないが、
そこがまたギャップ萌えオタクにはたまらない(笑)。



私の心は、喜びに満ちあふれた。
どうだ! 今こそ、この私の価値を世間に……。
すると突然、全身の力がどんどん抜けて私は床に倒れ、
悪魔たちの姿も、かき消すように|失《う》せてしまった。

そばにいた同僚たちが一斉にざわめいた。
『うわあっ!』『どうした?』『おいおい……』
『だから言わんこっちゃない。
ただの人間が魔王を5|柱《はしら》も呼んだら、
できたとしても生命力が根こそぎだろうって止めたのに』
『いきなり何百年もたったみたいに……まるで特撮ね』
『何このミイラ!?
世にも嬉しげにニタニタ笑っちゃって、気持ち悪い!』



ずいぶん失礼な奴らだな、まだ声は聞こえているんだぞ。
中には必死でお祈りを始めた奴もいる。
衛生兵もいたはずだが、恐れをなしたか無駄と知ってか、
近づこうとさえしないようだ。
まあ、強制と報酬で集められた連中だから仕方ないか。
だがこの業績さえ残ってくれれば……。

しかしその時、担当将校の震える声が
私の希望を打ち砕いた。
『呼び出すだけでこの|有様《ありさま》か……。
実戦なんか始めたら、どれだけの|生贄《いけにえ》が要るんだ!?
こんな力に頼ったのでは、国の存続も危ない。
この計画は、記録ごと永久に封印だろうな』

いやちょっと、それはないだろう!
失敗してもこの召喚は、歴史的な実例として……。
そんな思いを言葉に変える余裕もなく
私の意識はたちまち闇に呑まれ、
何か恐ろしい|鉤爪《かぎづめ》のある沢山の手に|掴《つか》まれて、
さらなる深みへと引きずり込まれていった。