数年前のこと。深夜に震えたアタシの携帯。
気づいた頃には、もう留守電に切り替わっていたし
知らない番号からの着信だったので、その留守電を聞いていた。
「かちょー。かちょーの鞄、
山田が家の近くまで持っていってまーす」
留守電の主は、ほろ酔い口調の男性だった。
飲み屋かなんかに鞄を忘れて帰宅してしまった課長の家まで
電話の主の後輩(勝手に予想)である山田が届けに行くのか。
会えない課長の為に山田はどうやって鞄を渡すんだ!?
これは早く電話せねば!! とすぐに折り返したのだが、電話に出ない。
2回ほどかけたけど、電話にでないので、きっと間違えて電話した事に
気づいたか、課長に鞄を渡せたのだろうと思う事にした。
一週間後、また見知らぬ留守番電話。
とりあえず、聞くことにした。
「課長、忘年会は栄の天狗で18時からです」
あのほろ酔いの男性が素面の声だった。
なんだ。間違えて電話したって気づかなかったのか。
ここで、集合場所を課長に知らせないと課長だけ年を忘れぬままだ。
いかん、課長に知らせなくては!
と電話を折り返すも、また出ない。
鞄を忘れて帰宅、一人だけ忘年会会場の場所が分からない課長。
顔も名前も知らない課長だけど、ここまで来ると
なんだか可哀想になってきた。
でも、それ以来電話はかかってこなくなった。