ビデオ判定導入前に問われる審判の姿勢…
素直に自らの非を認めた東塁審
[2014年7月21日 11時0分配信]
自分の非を認める‐。これまで見てきた
審判員の印象を覆す、ある出来事があった。
7月14日にナゴヤドームで行われた中日‐阪神戦。
5-3と中日リードの八回1死一、三塁から
中日・和田が放った痛烈なライナーを、
右翼・福留がギリギリで捕球したかに見えた。
東一塁塁審はアウトをコール。この判定に
中日ベンチから谷繁監督が出て猛抗議した。
すぐさま審判団が集まって協議した結果、
アウトの判定が覆り、フェアとしてゲーム再開。
本塁打のビデオ判定ならともかく、プレーが
動いている中で判定が変わるのは異例中の異例だ。
試合後、東塁審はこう報道陣に説明した。
「アウトと判定した僕に疑念が生じた。だから
他の審判に聞いたんですけど、3人は全員、
フェアの判定。僕が一番、悪い角度で
見てしまったかもしれない」。これまで何度も
微妙な判定を審判員に取材してきたが、ここまで
素直に自らの非を認めた方はいなかった。
さらに「審判が協議して判定を変えることは
ルールとして認められていますので」と
付け加えた東塁審。ではなぜ、今まで明らかな
“誤審”であっても判定は覆らなかったのか。
審判は不可侵という不文律が野球界にあり、
判定ミスもまたプレーの一部として
捉えられてきた歴史を持つ。
元阪神捕手の城島健司氏がかつて「審判の方も
プロなんだから。ボール、ストライクとか
判定に関してこちらからとやかく言うことはない」
と語っていたように、お互いが同じ立場に
立つことで信頼関係は保たれてきた。だが近年、
首脳陣、選手への退場宣告数を誇る審判員も出てきた。
審判は絶対。その意識が強くなりすぎた結末が、
メジャーで導入されたビデオ判定、
チャレンジ制度ではないだろうか。
今回の東塁審の判断に非を唱える
現場関係者はいなかった。和田監督の
「アウトのジャッジでプレーが変わったのでは?」
という抗議にも、「アウトをコールしたのは
セカンドへ送球した後です」と
毅然とした態度で説明したという。
現場が、そしてファンが求めているのはあくまでも
正確なジャッジ。協議した末に判定が覆っても、
きちんとした説明や互いに非を認める姿勢があれば
問題はない‐。それを示したのが、
今回のケースだったのではないだろうか。
日本でもビデオ判定の是非が取り沙汰されている。
その前に、現場と審判員が信頼関係を
築いていけるような環境になれば…。
ベースボールではなく、日本で育った“野球”
だからこそ、可能性はあるのではないだろうか。