「下のお庭が見えるお席が空きましたが、いかがですか?」

夜も更けてきて、梅の花が咲くお庭の見える席に移った。
桜にはまだ早かったみたい。
惜しかった。

なんとなく話の流れで、会わない間の恋愛話なんかをしてしまった。
今日は他の男性の話はしたくなかったのに。
しかも、わたしのあまりに痛々しい失恋話に、
「おれが代わりに泣いてやるよ(苦笑)」
なんて言われてしまった。頭なでられてるし(なぐさめられてる?)。
しまいには、
「だれか紹介してもいいけど、ラブより年上で残っている人って、
 やっぱり残っているだけの理由があるよ。
 年下狙いにしろよ。」
なんて言われる始末。

ほんと、わたしのことは妹分ぐらいにしか思ってないんだよなー。
「紹介してやる」って言われちゃうのって、かなりヘコむ。
わたしは、やっぱり虫くんにとって恋愛対象じゃないんだね。
“恋愛ごっこ”もできないほど、女性としては見てもらえてないんだ。

泣きそうになるのを、ぐっとこらえて、
「いい方がいたら、ぜひお願いします。」
がんばって笑顔を作った。

気がつくと、わたしたち以外にお客さんはいなくなっていた。
2:30a.m.

「そろそろ帰りますか。」
「うん。」

ああ、デートが終わっちゃった。
幸せな時間は、あっという間にすぎてしまった。


~ 後日 ~


会社にお礼メールを送った。
「ゼッタイまたデートしてね☆ラブ」
と次回のデートもおねだりしてみたり。
もう、かけ引きもなにもあったもんじゃない。
おなか見せて、しっぽを振ってる犬そのもの。

それに対する虫くんの返信には吹き出してしまった。

「お疲れさんでした。

  あのデートコースはどうだった?
  テーマは、「今夜、恋に落ちる」だったのですが。落ちそう?
  机上シミュレーションでは、よい流れかなと思ってたのですが、
  羽沢ガーデンは、ちょっと騒々しかったのと、
  イスもソファーのじゃないからいまいち密着感が無くて、
  しっぽりするにはちょとマイナスですね。」

(爆)!!!
うそでしょ~~~。
照れ隠しにしても、なんじゃ、このぶっちゃけっぷりは!!!

いかんいかん。
これもすべて、わたしが言わせてしまっているんだわ。
わたしに“オンナ”を感じさせるものが足りないから。
反省・・・・・・

ちょっと、いまさらだけど、次回はモードチェンジしてみますか。
週末の羽沢ガーデンは大分混んでいた。
2階に通されるみたい。わたしが先に階段を上がる。
いやだ。うしろから虫くんの視線を感じるよー・・・(泣)

「太ったでしょ? あんまり見ないでね。」
「ん? どれどれ・・・」

ぎゃーーー!!!
思いっきり両手で腰をつかまれたっ!
全神経を集中して、腹筋を鋼鉄のごとく固める。

お庭がよく見えない奥まったテーブルに通されると、
虫くんはちょっと不満そう。
デートプラン通りじゃなかったのかな。
どの席だって、虫くんとの初来店のお店がまた増えて、わたしはうれしいけど。

「さて、なに飲む?」
「う~ん・・・???」

あまりお酒に詳しくないわたし。
何語で書かれているかもわからないメニューと格闘していると、

「ラブ・・・・・・それ、シガーのメニューだよ・・・(困)」

「!!!
 もぉ~~~! 早く言ってよぉぉぉ~~~(泣)」
「(爆笑)」

ああああ、恥ずかしいっ。
無事、日本語のメニューでカクテルをオーダーし、
最近の日本経済についてご教示いただいた。
久々の再会デートの話題としては、ちょっと固いけど、
虫くんに、政治/経済/法律の講義をしていただくのが大好き♪
どんなつまんない質問も、丁寧にわたし目線で解説してくれる。
身振り手振り大きめ(!)
心なしか、先生-生徒の関係の方が、会話がスムーズなような気が・・・
この手の質問をメールすると、このめんどくさがり屋さんの虫くんが、仕事の合間に長文メールを返してくれるんだもの。
普段はせいぜい2~3行のメールが、数日遅れで届くのに。

講義もひと段落すると、虫くんにいつもの睡魔が襲う。
この方、デート中毎回隣で寝てしまう方なのです。

「はぁ・・・
 すごくくつろぐ・・・・・・zzz」

彼の寝顔を見て、思わず笑みがこぼれる。
今週も激務だったのでしょう。
それなのに、わたしとの時間を作ってくれてありがとう。
こうやって、愛する人の寝顔を眺めていられるなんて、
今はわたしが、世界で一番あなたのそばにいるのよね。
お会計を済ませて、外に出ると、雨はすでにやんでいた。

「このあとどうする? もう1軒行く? それとも帰る?」

毎回彼はこれを聞く。
必ずわたしに選ばせるの。
「もう1軒行こう。」とは言ってくれないのよね。イジワル!

「もう1軒行きたい。」

素直に気持ちを伝えてみた。

「よし、行こう!」

虫くん、快諾。
きっと2軒目も考えてくれていたに違いない。
虫くんは昔からそうだった。わたしが望めば必ずそれを叶えてくれた。
なのに、昔のわたしったら、
「なんだか、わたしだけ好きみたいでヤダわっ!」
と、意地を張ってずいぶんチャンスを棒に振ってしまった。
若気の至り。

タクシーに乗り込んで、「羽沢ガーデンへ」と行き先を告げたとたん、
「ああんっ!傘忘れたぁ~!!」
思わず虫くんの手をつかんでタクシーから降ろしちゃった。
こんなトロいわたしにイラっとさせちゃったかな・・・

「ほんとゴメンネ。トロくて・・・」

恐る恐る謝る。あ~ん、ご機嫌を損ねちゃったかな・・・

「タクシーが出る前に気付いてよかったね。」

わたしの腰に虫くんの腕が回ってる。

「ラブが傘持ってきてるだろうと思って、
 俺持ってこなかったから(笑)」

単なるいつものめんどくさがりだけど、
相合い傘の口実かな? なんて思ったりして。
虫くんと寄り添って再びお店までの戻り道。
ゆっくりゆっくり彼の温もりを感じていた。
虫くんとの待ち合わせ時間が過ぎて、はや20分。

外は霧雨で、ちょっと肌寒い。
はぁ~
もう少し、この時間をたのしみたいな~。
なんて。

ちょっと不安なのは、さっきから携帯がまったくつながらないこと。
会社を出る時には「じゃあ、あとでね」ってお互い携帯番号も確認したし、
まさか、このまま放置プレイはないとは思うけど・・・・・・
一抹の不安。

「ラブ、ごめ~~~ん!!!」

虫くん、登場!
申し訳なさそうに、拝み倒しながらの登場です。
笑顔がCUTEすぎるぅー。
ぜんぜん怒ってないけど、
「足が痛~い」
なんて甘えつつ、タクシーで目黒の和食屋さんへ。

車もほとんど通らない静かな住宅街に、ぽつんと灯りが。
暖かな店内に入ると、カウンターとテーブルが2つほど。
気取らずほっとするような雰囲気が、久々の再会の緊張をほぐしてくれる。
虫くんは、前から来てみたかったお店だそうで、
初めての来店にお供できて光栄です。

メニューは・・・・・・
はっきり言って、覚えていない(泣)
この食いしん坊が、味も何を食べたかも覚えていないなんて!
そうとうアガってたんだと思う。

でも、話した内容はよく覚えている。
最近、わたしを悩ましている家族のトラブルを親身になって聞いてくれた。
それにしても、いつも明快で、的確なアドバイスをビシビシ与えてくれる。
ついつい甘えて、自分で解決できるような問題も相談してしまったりして。

おしゃべりとともに、食事も、お酒もすすみ、
調子に乗って、人生初焼酎に挑戦。
「ラブ、ほんとに大丈夫か?!」
心配されつつ、ふたりで黒糖焼酎のお湯割りをオーダー。

うーん、わたしにはムリだわ。
まずそうにちびちび飲んでいたら、
「ったく・・・(苦笑)」
と早々に取り上げられ、虫くんのグラスと替えられちゃった。
しばし無言で虫くんの飲みかけのグラスをゴクリ。

間接KISS♪
(今どき中学生でも喜ばないんじゃないの?! こんなことで)



神様、もう少しだけこの幸せな夜を終わらせないで下さい。
待ち合わせをすると、相手のある特徴を知ることができる。
「待つひと」か「待たせるひと」か、だ。

どちらのタイプの人間にせよ、三つ子の魂、百まで。
そうそう人間変われるものではない。

わたしは「待たせるひと」である。
いわゆる、遅刻魔なのだ。

遅刻というのは、じつに嫌なもので、毎朝/毎夕、次こそは直そうと思うのだが、どうしても直らない。
なにが嫌って、遅刻するとわかった時点で、きっと不機嫌であろう相手が待つ場所に行くのは気が重い。
それに、会った瞬間にお詫びから入るのだから、おのずとその日一日の力関係が、完全に決まってしまう。
遅刻する方もそれなりに苦しんでいるのだよ。(コラコラ・・・)

そんなわたしが、唯一待たせたことのないひとがいる。

虫くん、だ。

虫くんとの待ち合わせには、必ず5分前行動を心掛けている。
ほかのひとでは、これができないのよね。
ほんと申し訳ないのだけれど。

一方、虫くんはというと、わたしに輪をかけた「待たせるひと」。
待ち合わせ時間=出発時間。
だから、いつも10~30分は遅れるとみていい。
それがわかっているのに、わたしは約束の5分前には必ず到着。

そう。待ちたいのだ。

この待ち時間が、わたしにとって至福の時間。
いまこの瞬間、虫くんはわたし向かって、一歩一歩近づいてきている。
わたしに向かっている時間——
これは、わたしのためだけに使われている、かれの時間なのだ。

ここで待っていさえすれば、世界一好きなひとと必ず会えるなんて!
ミラクル☆彡
永遠にこの時間が続けばいいのに・・・・・(永遠に会えないことになりますけど)



待ち合わせを5分ほど過ぎた頃、「これから出ます」なんて電話が入る。
いつも慌てて電話にでるから、会話にならない(挙動不審者だ)。
だから、あまりにドキドキして心臓が痛い時には、思わず伝言モードにしてしまう。

えへ。虫くんの声、ゲット~♪



もうすぐかれがやって来る。
でも、わたしはかれの姿を探そうとはしない。
だって、かれにわたしを見つけてほしいから。

「ラブ」

って、かれがわたしの名前を呼ぶ声を聞きたい。

でも会えた瞬間、
今度はデートの終わりがどんどん近づいてくることに
悲しくなってしまうのだけれど。
今夜、1年ぶりに虫くん会うことになった。
先日のバレンタインのお返しだという。
もともとそれを期待してのチョコだっただけに、まさに「エビタイ」だね。

もちろん彼もそのことは十分承知で、きっと気合いを入れてデートコースを考えてくれているはず。
はぁ~
今夜も虫くんマジックに酔わされちゃうんだろうなぁ~。
ほぇ~~~

・・・・・と。さて、なに着ていきますかね?

ああぁぁぁ~~~うううぅぅぅぅぅ~~~~~
んんんんんんんんんん~~~~~~~

!!!(チーン)

全身買いに行っちゃおぅ♪

ってことで、いそいそ新宿伊勢丹へ。
各フロアをぐるぐるぐると3周。
・ 1週目…フロア全体を見渡すように軽く流す
・ 2週目…1週目で目をつけていたお洋服に接触
・ 3週目…厳選の数着を試着
・そして、家路につく—
って、ええ~~~?!買わないのぉ~~~???

はいはい~。買いませんよぉ。
寝る前のベッドの中でもう一度吟味するんだから。

虫くんと並んだ時に一番お似合いに見えるのは?
(虫くんのスーツに合わせて、カジュアルすぎないこと!)
とか、
一番スタイルがよく見えるのは?(虫くんは、くびれ重視!)
とか、
虫くんが一番グッとくるのは?
(清楚な中にも、ちらりお色気♪)
などなど加味した最良のセットアップを翌日やっと購入。

黒をベースに、素材は透け感のあるプリーツスカートと
胸元がやや開きのレースキャミに羽織もの。
髪はすそを軽くランダムに巻いて、っと。

思いっきり虫くん好みに仕上げてしまったわ・・・・・・
気合い入りまくりが丸わかりかしら・・・・・・

— 地震 雷 火事 勝負デート —

災害も幸せなハプニングも、突然訪れるものである。

虫くんがバレンタインのお返しをしてくれるという。
それは「待ってましたぁぁぁっ!」って感じなのだが、
ふと考えると、前回会ったのは1年前。
体重はアベレージで3kg増。
目の下のクマは、10時間睡眠後もクッキリ残っている始末。
近頃では、鏡を見るたびに「わが世のピークもすぎたのぉー」と
涙にくれる日々なのに、1年ぶりに再会したひには「誰?」ってことに。

まずい。
油断してたーーーーーっ
ううっ・・・どぼしよう・・・・・・・

よし。1年前の容姿に戻すまで、延期だ。断固、会わないぞ!

さっそく虫くんにその旨メール。

---《虫くんからの返信》-------------

「早く連れて行け」っていうのと「その前にダイエットする」って
いうのでは論理的矛盾をおこしてないかい?

------------------------------------

乙女心は複雑なの。
バレンタインのお返しお食事会の日程や、お店選びに1日数通のメールのやり取りが続く。

 奇跡だわ・・・・・(1日に何往復もできるなんて!)

しかも、ところどころ近況やムダ話(わたしにとっては宝物だけれど)がちりばめられている。
もちろん3行以上だ。

 はぁ~~~。シ・ア・ワ・セ♪

しばし、夢心地。
と、突然、鋭いメールが届く。

「で、結論は?」(←これだけ)

はぅっ・・・・・
わたしったら、調子に乗ってムダ話を送ってしまっていたわ。
彼のムダ話は、わたしにとって宝物だけれど、わたしのムダ話は、忙しいかれにとって迷惑以外のなにものでもないもの。

反省して、ごく短い内容で希望のお店やジャンル、日時を伝える。

「ふたり?だれか誘う?
 ご接待?割り勘?」

お食事会のお誘いで、かれのお決まりのセリフ。
もちろん、ふたりでデートしたいに決まっているし、
そう希望すれば、かれはそれを叶えてくれる。
でも、わたしに言わせないでほしい・・・・・

「もちろん、ふたり&大盤振る舞いで!」

開き直って、返信しておいた。
「了解。」とのこと。
うん、これでいい。

多忙なかれが仕事中に何往復もメールをくれること。
わたしの要望を伝えれば、なんでも叶えてくれること。
このことに感謝しなくっちゃ。
チョコを贈ってから数日。
それだけで十分満足してしまい、なんだかスッキリ晴れやかな気分になってしまったわたし。
全く期待していないと、意外に簡単に連絡が来たりするものね。
バレンタインの翌日、虫くんからお礼のメールが届いた。

その内容は、驚きの内容だった!
・・・・・っと言うか、一般的に見れば、
それはきちんとお礼が書いてあり、そして、久しぶりに飯でも食いに行きましょう! というような、ごくふつうの内容だったのだけれど。

ここで、かつての虫くんのメールについて、その特徴を確認しておくと、

 1) 必ず返信があるとは限らない。
 2) 返信は、必要事項のみ。3行以内。
 3) 1日1通以上は届かない。

つれないんだよな~

そしてそして、かつて毎年チョコを渡していた頃、チョコを受け取る彼の反応を復習しておくと、

 1)「さんきゅ!」と受け取ると、(中身も見ずに)すでにチョコが
   うず高く積まれた山の上にポンッと置かれる。
 2) 感想を聞いたことがない(恐らく食べてもらってない)。
 3) White Dayにお返しをしてもらったことがない(記憶がないだけ?)。

う~ん。。。彼は大人気だったのです。
わたしなど、ものの数には入っておりませんでした。

なのに、なのに・・・・・・

今年のお礼メールは、6行!!!
お礼のメールが来ただけでも奇跡なのに、
わたしには衝撃のあまり心臓が口から飛び出そうだった。
いや、ちょっと出てた。

「ありがと。」のほかに、「味わって食べるよ。」なんてやさしい言葉が。
その後、お返しのお食事会の日程調整をしている間も、
「そんな高いとこのチョコうれしいよ。」とか、
「昨日チョコ頂きました。うまかったよ。」
なんて言葉が満載。

ど、ど、どうしたの??? 虫くん!

長い間、地を這うような低い期待値で満足していたわたしには、毒だよ。

虫くんとわたしがあまり連絡を取らなくなって数年。
その間に、虫くんは家庭をもたれて、お子さんも産まれた。
歳を重ねたってこともあるだろう。
ひとに対してやさしくなったのかな。
それとも・・・・・
気がつけば、チョコをあげたいひとがいない今年のバレンタイン。
あげたいチョコは迷うくらい知っているのに。
こんなの何年ぶりだろう。
とりあえず毎年のお約束、父の分に、お世話になっているおじさま達の分を
1月後半早々に「ピエールマルコリーニ」へ予約に行った。
ここは、上のcaféでコーヒーを頼むとチョコがひとつついてくる。
手をかけて練られたであろう、なめらかさ。
この1個がちょうどよい。
甘いもの欲求が満たされるし、食べた後、罪悪感も覚えないしね。

お約束分はチョコの詰め合わせにして、自分の分もしっかり予約。
自分へは「クルスティヤン フォンダン」と決めている。
スライスアーモンドをうっすら飴で固めて、周りをビターチョコでコーティングしたもの。
パリパリッとおせんべい感覚で、あっという間にひと袋食べちゃう。
私、ナッツ類嫌いだったはずなのに・・・。ピエール、すごい。
こんなおいしいもの、ひとりで食べるのもったいない。
誰かとこの幸せを共有したいな。
ふと、そう思ったとき、彼の顔が浮かんだ。
かつて、社会人になったばかりの私を、数えきれないほどのお店やBarに連れて行ってくれたグルメの彼「虫くん」。
あの頃は毎年チョコを贈っていたのに、いつから途切れてしまったんだろう。
そういえば、何年も話していないな。
そうだ! 久々に送っちゃおう!
これならきっと、味にうるさい虫くんにも合格点はもらえるはずだ。
(おいしくないものには、「こんなマズいもの食わせるな!」と叱られる)

とたんに動悸が早くなる。
お気に入りのチョコを今年はふたつ予約して、店を出た。
虫くん、喜んでくれるかな。