男が不能になったら…「欲望」深く濃く描く映画

 愛=SEXでないと多くの人が認めるだろう。では逆に、SEXなしに真の愛は成り立つか-。この秋注目の恋愛映画「欲望」(11月中旬、東京・渋谷のアミューズCQNで公開)は、“男が不能になったら…”というテーマに真っ向取り組む。原作は女性に絶大な人気がある直木賞作家、小池真理子氏の同名小説だ。

 愛の深遠さを濃厚に描いた篠原哲夫監督は、「小池さんは、“性”を介在させる愛のありようを追求してきた方ですが、『欲望』では不能になってしまう男の側から描いている。なるほど、その手があったか、と衝撃を受けました。SEXはできないが、欲望はある。そんな場合、女性は精神的なかかわりを深めようとし、そうならざるを得ない、と」

 主人公の類子(板谷由夏)は、20代後半の独身。同僚の五郎(大森南朋)との不倫で肉体的な快楽を享受している。しかし十数年ぶりに再会した幼なじみの正巳(村上淳)が事故で不能になっているのを知りながら、真の愛に目覚めていく。不倫相手と違う、類子の正巳に対する対照的な愛の形に男性は少なからず衝撃を受けるだろう。

 「男としては、類子がインポの正巳に“わたしを使って試して”と言うのも、不倫相手に“デキないなら帰って”と言うのも、残酷だなと思いましたよ。でも女性ならみんな分かるって言うんですよ」

 類子が、正巳や五郎を相手にみせる大胆な濡れ場も注目だが、篠原監督は、「見えちゃう、見えないではなく、肉体の躍動をちゃんと撮りたい、と取り組みました。その結果、そこで精神の高みが撮れたと自負しています」と語る。

 本物の“愛のムード”に酔える大人の映画。男を“卒業”していない人なら、必見だ。