トラウマ作品… 『ミッドナイト・エクスプレス』 | ありがとうございました

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 すべては、無。 
 


『レプリカントなオイラが…』 ~何処から来て、何処へ…~

 かなり久々のアメリカン・ニューシネマのコーナー~。この作品はテレビ東京の伝説の(まだやってるし…)番組、午後のロードショーで見ました。昼間っからこんな映画をやるテレ東さんて、やっぱすごい…。そう思わずにはいられません。


 1978年の作品。監督のアラン・パーカーはやはり暗い映画ばかり撮ってるイメージがあるのですが、あの『小さな恋のメロディ』の脚本を書いた人らしいです。でも「ちょっと変わった職人さん」みたいなイギリス人っぽさがどの作品にも共通してあるような気がします。

 で、この作品も暗い、というか絶望的な話です。

1970年に恋人とトルコに旅行したビリーは、よせばいいのにアメリカに帰って友達に売りさばこうと2㌔のハシシをお腹に巻いてアメ力行きの飛行機に乗り込もうとしたところを、警察に捕まる。すぐに大使館の人や弁護士みたいな人が来て、「大丈夫だ、安心しろ。アメリカ政府がついている。こんなところ、すぐに出られるようにしてやるから。ちょっとだけ我慢するんだ…」なんて言ってくれたので、ビリーも少し緊張を解き、ホッとひと息と思ったら… 当時の大統領ニクソンは中東諸国と仲が悪かったり、トルコ政府が「うちらは麻薬には厳しいんだよ!」というキャンペーンみたいなものをしていたおかげで、少しで出られる予定が、が、が、判決下ったらなんと「30年!」

 絶望でクラクラのビリーに、やってきたすんごい気持ち悪い笑顔の太った監獄長に監禁、拷問、オカマ掘られて… 絶望の底と思ったらさらに底、地底奥深くまで叩き落されるのです。もう悲惨です。牢屋入ったからっていきなり津波のようにキツイことするなよ~。じわじわ来いよ、30年もいなきゃなんないんだから~って感じです。

 不潔な牢獄、頭のおかしい囚人、アメリカに比べれば非文化的な慣習や生活… そこには絶望しかありません。自業自得とはいえ、あまりにも不条理。書いてて私はまさにカフカの『変身』を思い出してしまいました。

 そんな悲惨で希望のない日々ですが、なんとかやっていくうちに仲間も何人かできてきます。ビリーはその中の一人から「おまえ、こんなとこいたらそのうち気が狂うぜ、ミッドナイト・エキスプレスしかねえよ」的なことを言われるわけです。

 「ミッドナイト・エキスプレス」… “脱獄、脱走”のことです。なんでも刑務所の地下には昔使われていた地下道のようなものがあり、そこを通れば抜け出せると… しかし、なぜか刑務所内でやたら小金を集めてる変な囚人? 看守? のオヤジに密告され、仲間の一人が連れて行かれて二度と帰ってこない… 怖い…。他の仲間はその卑劣な看守? みたいなオヤジにハシシの所持の罪を着せられ、やはり連れて行かれ… せっかくできた仲間も一人減り、二人減り…。万策尽き、もはや廃人のように生きる屍状態のビリーのもとへある日、かつていっしょにトルコへ旅行に来た彼女が訪ねてくる。っていうか、まだ見捨ててなかったのね。

 ほとんど半狂乱状態のビリーだが、彼女は彼にアルバムを渡し、その中にこっそりお金を隠したことを意味深な言葉で包んで伝える。「ここにいたら死んでしまう。なんとかして出るのよ!」彼女はそういい残し去っていく。

 目が覚めるビリー。まずは看守長のもとに行き「僕は結核なんです。病院に移してください!」とお金を渡して訴える。看守長はふざけるな! と誰もいない部屋にビリーを引きずり込んでまたオカマを掘ろうとする… 必死で拒否して、思わず看守長に胴タックルするビリー。運動不足なんでしょう。たった一度のふいのタックルで看守長はよろよろと後退し、背中に壁を強く打ち付ける! あれ? 看守長の目の色が変わった… ちょうど看守長の後頭部の位置にコートかけの金具が出ていて、見事に突き刺さっていたのだ… って、そんなあまりにもラッキーな… ビリーは今までついてなかったので、久々に運が回ってきたのでしょうか。ビリーは即死した看守長の制服を着てビクビクしながら刑務所の出口へ向かう。その姿、制服がブカブカで子どもが遊んでるみたい。しかし、その制服効果でビリーは牢屋からすんなり出られ(なんていかげんな刑務所)… ビリーが街中で飛び上がって喜ぶショットで画面は止まる。

 その後、ビリーは大使館にでも行ったのでしょうか。無事アメリカに帰国したということが報道されるショットが入り。映画は閉幕。なんと実話をもとにした作品だそうです。

 役者さんはみなその後は聞かないかたばかりですが、お一人だけジョン・ハートというエイリアンやエレファントマンなどに出た名優が出ております。

 ま、とにかく、一人の青年が突然(自業自得なんですが)絶望的な環境に落とされ、苦痛の日々を味わう、いや~なストーリーです。一応ハッピーエンドではあるけれど、だらけきった日本の私には見ていて耐えられないものがあります。平日の昼間になんでこんなものみてしまったんだろう(笑)

 恐るべし、テレビ東京さん…。