運命の出会い9☆〜志〜 | from Anna

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LOVEJUNX代表 牧野アンナのブログ

LOVEJUNXを立ち上げてすぐ、私はこの子達の中からいつの日か絶対プロを育てようと思った。スターを出そう!!!


たくさんの人たちにこの子達の事を知ってもらいたい!
知らないから誤解が生まれ、偏見を持たれ、扉が閉ざされ、可能性が制限されてしまう。知ってもらえれば絶対この子達と関わりたいって思ってくれる人がたくさん出てくるはず!
たくさんの扉が開かれ、生活の中での選択肢が増え、可能性がさらに広がるのではないか!そうすればこの子達だけでなく、日本中のダウン症の子達を取り巻く環境さえも変えられるんじゃないか!

大きな目標を掲げ、そこに向かって突き進もう!
私はやる気に燃えていた。

でも私の中で不安な事がひとつだけあった。私はダウン症に関する知識が全くない。色々と気をつけなければならない事もたくさんあるはず。もっと知りたい。もっと勉強しなければ。
そう思い、まず本屋さんに走ってダウン症に関する本を買い、読み漁った。

難しくてよくわからない...
本の中の情報はネガティブな情報が多く、私が普段接しているあの子達と結びつかない。

ある日ダウン症の子の親御さんに呼び出された。
その方はダウン症の子育てで一目置かれる存在らしく、あっちこっちで講演会などで呼ばれていた。その方に色々聞いてみると、
「あれはできない」「これはできない」そんな事ばかりだった。
私のプロを育てたいという思いも話した。「そんな事無理に決まってる。」と切り捨てられた。レッスンの仕方も全部否定された。「あの子達に自由にやれって言ってもめちゃくちゃにしかできない。意思なんてないも同然。美化しすぎ。ハードなダンスなんて無茶」と言われ「あなたはダンスの指導者としてはプロかもしれないけど、ダウン症の事に関してはド素人なんですから。」と言われた。「あなたの事をおもえばこそのアドバイスです。私の言う通りやってみなさい。このままじゃあなた失敗してみんな離れていくわよ。」と言われた。
「確かにその通りです。でもあなたにそう言われたからと言って、はい、そうですかと自分が感じた可能性の全てを捨てて全部無理だと思いながらレッスンをする事は私にはできません!例え間違っていようとも自分の思ったやり方でやります。それで失敗したとしても悔いは残りません。」と言いその場を離れた。

結局本の中の情報も専門家に聞いた話もこの子達の未来を切り開こうとするには否定的なものばかりだった。

ダウン症の子達は筋力が弱く、激しい運動が苦手とされていた。世界的に見てもダウン症の子達による激しいダンスは前例がなく、そう言ったスクールもない。

なぜ??なぜ誰もダウン症の子達のためのダンススクールとかやってないの!?エンターテイメントの国アメリカでも?!


え?私ってば無謀な事しようとしてる??
いや!だってあんなにみんなイキイキと踊るじゃない!

全部やめた!こんなの信じてたら何にも新しい事できない!
あの子達の事を知るには本や専門家の知識ではなく、私自身があの子達と接して知っていこう。自分の心で感じた事を信じてつらぬこう!そう決めた。周りがどんなに出来ないと言っても私が出来ると信じれるのならそれでいい!あの子達がやりたいと言ってくれる限りどんな事でもやっていこう!
冒険しなければ、新しい道は切り開けないのだ!

それからはレッスンの後、みんなと一緒に食事をしたり遊んだりした。平日のレッスンのない日も何人かの子達と約束をして会ったり、親御さんたちとお食事会や飲み会をしたりしながら話を聞いた。私なりにダウン症の子達を知っていこうと思った。


その頃もう一つ問題が上がっていた。
LOVEJUNXのレッスンは東京と横浜の二ヶ所でやっていた。横浜のレッスンはアクターズ横浜校のスタジオを借りてやっていたのだ。LOVEJUNXのレッスンのインストラクターは私一人だったが、正直一人ではかなり大変だった。そんな時手伝いますと声をかけてくれたのは私のちょっと前にアクターズをやめていた元アクターズのインストラクターをやっていた子だった。

彼女と私が一緒にやっている事が父の耳に入った。

父が私に言った言葉「やめた連中と関わるな。関われば敵になる。」それを忘れていたわけではない。私は自分の意思でちゃんと選んで決めていた。その子はLJの子達に愛情を持って一生懸命にやってくれていた。この子達を愛してくれる人を大人のつまらないこだわりで排除する気はなかった。



父から社長を通して忠告があったが私はその忠告を無視した。
数日後社長から連絡があり申し訳なさそうに「横浜のスタジオはもう貸せない事になった。」そして父は何かと私に力を貸してくれていた社長に私にはもう関わらないように伝えていた。

こうして私と父はお互いになんの話し合いもないまま、静かに絶縁状態へと突入した。

つづく