ジュエリーデザイナー、米国公認宝石鑑定士GIA GGの細川文です。
「ジェット」という宝石をご存じでしょうか?
今回はヴィクトリア女王が愛した漆黒の宝石、ジェットをご紹介します。
<ジェットのネックレス>
真っ黒なので、遠目にはオニキスと思われるかもしれません。
オニキスは石、ジェットは木の化石です。
数億年前の植物が湖などの底に堆積し、圧力がかかったことによって化石化しました。
19世紀、「永遠の未亡人」と呼ばれたヴィクトリア女王。
最愛の夫、アルバート公の喪に服した時に身に着けたことで、ジェットはヨーロッパで大流行します。
<ジェットで喪に服す女王>
※AIで作成したイメージです
イングランドのウィットビーが最も重要な産地でしたが、19世紀末に枯渇します。
ウィットビーのジェットは密度が非常に高く、硬くて、磨くと石と見まごうほどの美しい艶が出ます。
世界各地で時々ジェットが見つかることがあっても、品質が全く違い、磨いてもウィットビーほどの艶が出ないのでした。
大げさに言えば、握りしめるとボロボロと崩れてしまう炭をイメージすると、化石のきめの具合を想像できると思います。
そのためジェットは「幻の宝石」と呼ばれたりしました。
当時作られたブローチなどは、アンティークジュエリーとしてコレクターに人気があります。
ところが近年、中国でウィットビーと同じくらい高品質のきめの細かいジェットが見つかったのです!
<中国産ジェットのネックレスとピアス>
日本では皇族の方々が弔事にジェットをご着用になることで知られています。
「モーニングジュエリー」と言います。モーニングとは朝(Morning)ではなく、喪(Mourning)です!
シンプルな40cmのビーズのネックレス、イヤリング、ブローチをご着用になっている方が多いように記憶しています。
日本では悲しみの儀式の時は真珠を身に着けるのでは?と思われたかもしれません。
明治時代初期、皇族の皆様は古来の装束(十二単のような公家装束)から洋装を第一礼装と定められました。その際にモーニングジュエリーも英国式にジェットをお定めになったのではないかと想像しています。
現代の英国ではジェットを身に着ける決まりはないようです。
<モーニングジュエリー ジェット>
「真珠のフォーマルなネックレスは冠婚葬祭用」と言われていますが、慶事と弔事で同じネックレスを着用するのは難しい点があります。マナーについて確認すると、弔事では多くのNGがあります。
×二重、三重になっているものは「悲しみが重なる」ことを連想させるのでNG、一連のみ
×金の金具は華やかで相応しくないのでNG、銀色の控えめな金具のものにする
×8mm以上のあこや真珠は華美なのでNG、7mm以下の珠のものにする
個人的には厳密過ぎなくても良いのでは、と思いますし、大人の女性が、最後のお別れの場でご自分なりの悲しみの装いをされれば良いと思いますが、儀式の場では全ての方に不愉快な思いをさせたくない、と思ってしまったり。
なかなか難しいです。
喜びの席では本真珠のネックレスについてNGはほぼありません。
もし喜びの席のために手に入れた、8.5mmのあこや真珠、グラデーション二連ネックレスで大きな金の金具がついたものを持っていたとしても、悲しみの席に着用することは出来ません。
<慶事にふさわしく、弔事には着用できない真珠のネックレス>
その点、ジェットは華美になることはないので、心配がありません。
皇族の皆様が着用なさっているのですからマナー違反もあり得ません。
留め金の部分は、耐久性の高いバッファローホーン(水牛の角)が使われています。
ここが金属ではなく、全体が漆黒であるところが徹底的で良いなぁ、と思っています。
ジェットは軽さも魅力です。
木の化石ですから本当に軽い!
着用しているのを忘れるほどの軽さです。
ネックレスは肩が凝る、重たいピアスは付けられないという方でも大丈夫です。
ウィットビー産のジェットは流通量が少ないため高額ですが、中国産のジェットは、ウィットビーのジェットよりグッと手頃です。
<ジェットで悲しみの装いを完成させる>
ヴィクトリア女王が愛した、漆黒の宝石。
ジェットは悲しみの席だけではなく、ファッションジュエリーとして普段使いすることもできます。
次に手に入れるジュエリーとして、ジェットをご検討されてはいかがでしょうか?
あまり知られていないジェット、いくつかのエピソードと併せてご紹介しました。
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