一巻の終わりと背中合わせ。薄氷を踏むとはこのこと。 ☆☆ 東海第二原発、綱渡りの3日半 停止作業の詳細明らかに(2/2ページ)2011年5月15日11時51分  東日本大震災で被災した日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)では、原子炉が安定的に停止している状態になるまでに3日半かかっていた。日本原電がまとめた資料でその作業の詳細が明らかになった。津波で非常用発電機の一部が停止し、炉内の水温や圧力を下げるため、綱渡りの作業が続いていた。  日本原電によると、東海第二原発は3月11日の地震直後に停電した。このため非常用発電機3台が動き始め、非常用炉心冷却システム(2系統)が起動した。しかし地震から約30分後に高さ5.4メートルの津波が襲い、その影響で命綱の発電機のうち1台が停止。非常用炉心冷却システムも1系統が使えなくなった。  状況から冷却が十分進まず、地震から7時間後の時点で、原子炉内の水温は二百数十度、圧力は約67気圧。通常の運転時とほとんど変わらない状態だった。水温を下げるために注水すると水蒸気が発生して圧力が高まる。この圧力を下げるために水蒸気を格納容器内に逃がす弁の操作にも迫られた。  炉内の圧力は午前2時前でも約58気圧と高い状態だった。さらに午前3時ごろには約60気圧に再上昇。注水と逃し弁の開閉の繰り返しで、燃料が露出するようなことはなかったものの炉内の水位も70センチほど変動した  急激な温度変化は炉本体の損傷につながるような恐れもある。水温と圧力、水位の変動などを見極めながらの作業が続いた。14日午前に外部電源が復旧、深夜には止まっていた非常用炉心冷却システムもふたたび動き、炉内の水温が100度未満になる「冷温停止」の状態に至った。この間、通常の2倍以上の時間がかかったという。  原発事故に詳しい社会技術システム安全研究所の田辺文也所長は「非常用電源が一部使えないなか、細心の注意を払う作業が続いていただろう」と話す。  日本原電は震災を受け電源車を配備、非常用発電機の増設を決めた。福島第一原発では燃料が損傷し周辺に放射性物質が漏出した。同じ事態に陥らないか検証を進めている。(栗田有宏、中村浩彦)
 低線量の被ばくでも、本質的に細胞に与える損傷のメカニズムは同じで、身体の設計図であるDNAに傷をつけてしまうということです。年間被ばく量1mSvということは、1年かけて全身の細胞のDNAに平均して1本の放射線が通るということを意味します。そのときにできた傷が正しく修復できないと、異変をもったままDNAが複製され、次の細胞に受け継がれていくことで、将来的にがんを発症する可能性がでてきます。20mSvの被ばくだと平均20本の放射線が通ることになり、それだけDNAが損傷されて異変の可能性が高まり、発がんのリスクも高まることになります。
                             2011年8月15日発行
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JMM [Japan Mail Media]                  No.649 Extra-Edition
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 ■from MRIC

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  □ 南相馬市における妊婦宅の除染作業報告


   ■ 鈴木 真:亀田総合病院 総合周産期母子医療センター長 


  
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 ■from MRIC
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 日本の未来と夢は、すべて子どもたちにかかっており、妊婦、子どもは優先的に守
られるべきである。南相馬市は原子力発電事故のため警戒区域(20km圏内)、緊急時
避難準備区域(20~30km圏)を含んでいるが、多くの地域は低線量地域である。しか
し一部に高線量地域があり、妊婦や子どもが居住するには危険な区域が存在するため、
個々にその影響を勘案し対応する必要が生じている。

 南相馬市で産婦人科医院を開業され、地区医師会長を務める高橋亨平先生は、5月
初旬より市内に在住している15名の妊婦に個人線量計配布し独自に月間被ばく線量を
測定してきた。その測定結果より年間被ばく量を計算し、3.5mSv/年以上であった4名
に対して、その状況を説明し除染することを申し入れ、同意の得られた1名の方の住
居について今回除染作業を行った。作業は原町中央産婦人科院長 高橋亨平医師を中
心として、南相馬のNPO方針実践まちづくり、石川建設会社、放射線測定機器販売会
社サードウェーブ、医師として東京大学医科学研究所の上研究室および亀田総合病院
総合周産期母子医療センター、以上合計21名が参加した。

除染作業は
1.放射線物質の分布評価(除染作業前の空間線量測定)
2.1の結果に基づいた除染部位、方法の検討
3.除染作業(高圧洗浄、表土除去、立木などの伐採など)
4.作業の効果判定(除染作業後の空間線量測定)
の順で行った。

 まず、除染に先立ち空間線量の測定を行った。原則として、ある点における空間線
量は空間で5m、地中で5cmからの放射線が85%を占めると考えられており、敷地内をあ
る間隔で測定することにより、どこに、どの程度の放射性物質があるか推定すること
が可能である。そのため、敷地を2×2mの格子状に区分し、それぞれの交点および敷
地外周との交点で、それぞれ地表から3つの高さ(5cm/1m/2m)で空間線量を計測した。
室内についても同様の方法で行った。平均空間放射線量は庭で1.46/1.12/1.11μSv
/hと地表が高く、空間で低くなっており、屋内の一階部分の外周の南側(庭側)で
は0.65/0.88/0.88μSv/h、内側では0.42/0.52/0.62μSv/h、二階では0.48/
0.57/0.66μSv/hと上方ほど高くなっていた。また雨どい、浄化槽からの排水口付
近などに線量率が高い部分が存在していた。立木などで特に高くなかった。

 以上の結果より放射性物質は屋根、雨どい、および庭の表土に存在することが明ら
かになったため、屋根および雨どいの高圧洗浄と庭の表土剥離を行うことを決定した。
簡単な足場を組み屋根の洗浄を行ったのち、雨どいに詰まっていた泥および落ち葉を
除去した。洗浄作業終了後表土の剥離を行った。表土を一次保管するための穴を住居
より最も遠い場所に設定し、1mを目標に人手で掘り始めたが、30cm程度から粘土層が
出現したため作業は困難となり50cm程度で終了となった。次いで表土剥離を行ったが、
芝の根が張っており、体力的にかなりきつい作業であった。すべての作業が終了する
のに開始から昼食を挟んで6時間を要した。

 終了後の空間線量測定結果は、庭では0.63/0.70/0.79といずれも40%程度低下し
た。室内について1階部分は南側0.40/0.45/0.63 は28/49/38%低下し、中心部
0.29/0.38/0.45 は30%程度低下したが、2階については大きな変化が見られなかっ
た。この結果を考察すると1階部分は雨どいの洗浄と表土剥離により極めてよい効果
がみとめられたが、2階部分は低下しておらず、今回の洗浄方法では屋根の放射性物
質除去は不十分であったと考えられた。

(参照:除染報告図)
( http://expres.umin.jp/mric/img/Vol.235.pdf )

 今回の除染作業で分かったことは、最初に施行する測定方法が適切な評価が行われ
ることが極めて重要であるということである。このためには測定方法の統一は必須と
考えられる。除染作業では、その家の素材(屋根は瓦、スレート、トタンなど、壁は
トタン、モルタル、木材、コンクリートなど)は様々であり、建築メーカー、建設資
材メーカーの協力を得て屋根や壁などの素材に最も効果的な洗浄方法を開発すること
が重要であると考えられた。また、作業は想像以上に大変で、人力のみで行うことに
は限界があり、建築機器、重機などで行うことが必要だと痛感した。

 この除染作業は「放射性物質汚染の有効な除去方法の開発に関する研究事業」であ
り、
1.適切な測定方法とその評価方法の研究
2.外壁、屋根などの素材に応じた除染方法の研究
3.除染不能例における放射線防御方法に関する研究
4.土壌から放射線物質除去法の研究
など様々な価値ある研究が含まれている。

 そして、これを現場で実行する作業員は重要な研究補助員であり、これを継続可能
な状態にするためにはボランティアではなく事業としての形をとることが重要である。
さらに、これを事業化することで雇用が生まれ、南相馬市において環境的にも、経済
的にも居住可能となる住民が多くなり、復興が進むことが考えられる。

 最後に、南相馬市に上記研究施設を設置し、研究事業の拠点とすることを提案した
い。


亀田総合病院
総合周産期母子医療センター長
鈴木 真
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