『ケルトの神話』を読みました。本書ではケルト神話やその構成、文化、歴史等を体系的に理解するのに役立ちました。神話自体もなかなかぶっ飛んだものが多くて面白かったです。(神話ってどれとそんなものかな?)数ページで簡単に説明されるのが惜しいくらい。なにか面白い映画アダプテーションとかあれば観たいですね。今回は神話の内容というより、この本で紹介されていたケルト文化について簡単にまとめてみたいと思います。事実を羅列してる感が強めです、ご承知おきください。

 

まず、ケルト人と聞いてどんな人を想像しますかね?私は豊かな赤毛の長い髪をたたえたミステリアスな女性、かなあ。でも改めて考えると意外と曖昧なイメージしかないです。というのも「ケルト人」という純粋な民族はなくて、彼らは長いあいだ闘いを繰り返しながら土地を転々として様々な部族と混ざり合ってきたため、自分たちの国をもたない人たちなんですね。しかもケルト人は文字を持たない民族なので、いまだに謎に包まれた存在なのです。(「オガム文字」という簡易的な記号のようなものはあったみたいです。)ユリウス・カエサルが著した『ガリア戦記』(BC55)の中ではケルト人の外見や性格に関する貴重な記録が残っているそうです。(ローマ人はケルト人のことを「ガリ」(ゴール)と呼んでいたらしい。)

 

ケルト人には大まかに分類するとヨーロッパ大陸の「大陸のケルト」とブリテン諸島の「島のケルト」といわれる人たちがいます。そのうちアイルランドなどの離島では外敵やローマ・キリスト文化の影響が比較的少なくて済んだのでケルトの特色や文化がよく残っているそうです。ですから俗にケルト神話というとき、それは「島のケルト」、特に「アイリッシュ・ケルト」の神話、さらには10世紀から16世紀にかけて修道士らによって写本として記録された民話のことを指すみたいです。

 

ケルト社会で忘れてはいけないのが、ドゥルイド僧の存在です。王の助言者として政治的な役割を果たしたり、予言をおこなったり、魔術をおこしたりすることができたそうで、立場的には王に並ぶかそれ以上だったと思われます。なかでも重要なのが詩人。(詩人の種類も細分化されている。)確かにこの本にあった神話では、王宮へ招かれた吟遊詩人が、けちんぼうな王からあまりにも粗末な扱いを受けたので「ないないづくし」の風刺の歌を作って王を世間の笑いものにし、ついに王座から退かせたという話もありました。それだけ言葉を操るひとたちが魔力に近い力をも持っていたのは興味深いです。司祭としてのドルイドや吟遊詩人は、以前紹介したサトクリフの『ケルトの白馬』にも確かに出ていました。

 

あと、誓約(ゲッシュ)についても少し触れておきましょう。ゲッシュというのはケルト神話に出てくる「禁忌」なのだそうです。例えば、「犬の肉を食べてはならない」というものや、「食事の誘いは断ってはならない」というのがあったそうです。これが単なる約束ではなく、破れば身の破滅を招くと信じられていた呪縛のようなものだったみたいです。ゲッシュの成り立ち等は判明していないのですが、女性が我がままに事を運ぶためにゲッシュを利用して敵を倒したり、好きな人を半強制的に付き添わせたりしているのが面白かったです。ケルト神話に登場する女性は、自分の感情や欲望に正直で、自由奔放、そして野心的、といった印象を受けました。

 

正直この本を読み終えて数週間しか経っていない今でも、この本で紹介されていたケルト神話のストーリーはの詳細はあまり思い出せません。(笑)名前が多すぎて混乱したのと、大まかなストーリーしか語られないので細部はあまり印象に残りませんでした。でもこれでケルト神話の世界に入り込むための素地はできたかな~。気が向いたらサトクリフの本とか読んでみようかしら。おすすめのケルト神話系の小説があったら是非教えてくださいな。