エリザベス・ギャスケルのCranfordを読みました。ギャスケルの作品ではThe Moorland Cottageに続いて2冊目です。

 

物語の舞台はヴィクトリア朝時代のクランフォードという田舎町。イングランド北西部のチェシャ―州のナッツフォードという町がモデルとなっている小さなコミュニティで、そこへ滞在しにきたメアリー・スミスという女性の視点からクランフォーディアンたちの日常生活が、面白おかしく(時には情感をこめて)語られます。

 

クランフォードの特徴として、この町は女性の割合が圧倒的に多く、主な登場人物は中流階級「オールドメイド」(独身のまま年とった「売れ残り」)や未亡人です。メアリーは近辺にあるドランブルという産業都市(こちらはマンチェスターがモデルらしい)からやってくるのですが、彼女の都会的視点から語られるクランフォードはちょっと保守的で、時代遅れな町として映ります。そして、クランフォードの面白いところは、女性たちが決めた独自のルールや内輪のボキャブラリーです。

 

例えば、大事なコミュニケーションである「ごあいさつ/訪問(calling)」の時間やタイミングには厳格なルールがあります。メアリーが町についた直後は、旅の疲れもあるので訪問は到着から3日目の‘calling-hours’(2時から3時)にされることになっています。訪問を受けるメアリーは3日以内にお返しの訪問をしなくてはならず、しかも相手の都合を考えて滞在時間は15分程度にとどめなくてはならない。もちろんチラチラと時計を確認するのは失礼にあたるので厳禁。細かい!

 

また、この「お上品」なコミュニティには ‘elagant economy’というボキャブラリーがあります。直訳すると「品のある倹約」って感じかな?クランフォードでは奢侈な生活を見せつけるのは嫌味っぽくて‘vulgar’で、シンプルで節度ある生活こそが真のエレガンスであるという暗黙の了解があります。かといってあまりケチ臭い姿を人様に見せるのもみっともないですから、彼女たちは色んな工夫をしながら生活しているんですけど、その「工夫」がかなり笑えるんですよ。

 

ちなみに今BBCのドラマの方も観ています。原作にないオリジナルキャラも加わり、愛すべきクランフォーディアンたちが個性豊かに描かれていて、ますますこの作品が大好きになりました。ドラマと原作の決定的な違いは語り手の存在ですかね。ドラマではメアリーはあくまでも一登場人物であって、彼女の思考はあんまり表面に出てこないので、彼女特有の親しみのこもったアイロニーやツッコミを感じるにはやはり原作を読むのが一番だと思いました。

この調子でどんどんギャスケル読みたい!今日さっそくMary Burtonをアマゾンでポチりました。ではでは。