しっくりこない代車に外出を控える日々

1週間後の配達にドキドキしながらエンジンをかけたら

普通に動いてほっとした

それが本来なのだろうけれど あんなこともあるって知れて

自分の車が戻る日が待ち遠しい

 

 彼を失い失意の中 手続きは時間ばかり掛かり気付けば半年 

悩んだ末に労災の過労死申請を出した

調べてる段階で確率は低いと分かっていて出す

証拠も時間が経ち得られなかったので尚更

それでも 出来ることをしないと後悔する気がして

客観的な判断をして欲しいと思った

 相談した時の職員さんも 「時間が絶対条件なので厳しい」と

総合判断で例外もなくは無いが…と

やれば良かったと後悔するのが目に見えて 出すことに

およそ4人に1人くらいの狭き門だそう

 

 準備に時間が掛かってアルバイトを逃したり

その時の全部の自分でやれる事をした

受け付けてくれた人は半年くらいでと言っていたが

最初に一度質問の電話の後それきり

 裁定が降りた人が1年掛かったと書いているのを見て

考慮の余地を検討しているのかな

もしかして彼がいい方にと 少し希望を持ったりもしたが

時間が足りないとすぐに判定されるのでは無く

時間を掛けて判断されるのはありがたいと冷静に

 年が変わった頃から少しずつ 駄目だなと思うようになった

春先に調査が終了したと連絡が来たが 

担当が代わったのでと言われ 時間が掛かったのはそれだろうと

早ければと言った説明よりも長くそこからさらに2ヶ月半

 

 提出してから13ヶ月半 小さな封筒が届いた

担当さんは書面の前に電話がありますと言ったが無く

あぁ 駄目って事なんだな

涙が出て封が開けられない 

ペーパーナイフをぎゅっと握る 深呼吸をして開封

三つ折りの紙を開く あぁ やっぱり…

 

 ひとしきり泣いて 考える

ぐるぐると 何が 何を 自問自答で なんとなく気づく

はなからお金でやったわけでは無い

あればありがたいのだろうけれど あっても幸せとは限らない

窓口の役職は残念な人だったけれど会社を恨んでるわけでも無い

死因は病死になるから恨める相手もいない

 恨めしいのは自分だ

冗談のような会話をしたあの時 気づけた自分に腹が立つ

だからもしも通ったら彼の仕事が報われて

罪滅ぼしのような 自分が救われたかったのかもしれない

 

 ドラマのセリフではないけれど

何故都合よくやり直せたら成功すると思うのだろう

その自信はどこから来るのか

あの時気づいたら 今も続いてたと 疑いもしない

随分と都合よくお気楽だと思える

 今更 わかっている どうしたって今更

何度考えても 何を想像しても 今は変わらない

振り返るたび美化されて 過去も彼も きらきらだ

だから尚更 恋しくて仕方ない

 

 後悔を減らす その目的は達成した

残念だったねと父が気遣う

わかっていたからねと あっけらかんと答える

昨日までに充分すぎるほど泣いてもがいた

平気なふりくらいはこなせる

落ち込んでいるかと心配したと母 もう這い上がり始めた

 

 やったのは自己満足 自分を救う為だ

今できる事は何でもやる 後で泣かない為に

やった結果 やっても泣く やらないで泣くより良い

 仕事は老体には中々きつかったと思う

ただ 本人がそこまで辛そうだったわけではない

時間が達していても通らない事もあるのかと考えたら

彼よりも通るべき人たちがいると思う

ぐるぐる回って そう思う

 

 続かなかった時間は残念でならない

どこかで正解の道を選べなかったと悔やむ気持ちが消えない

それでも これで一区切り

過去でもない 今でもない 5㎜浮いた世界から

押し出された

大きなトラックに追突されて 否応なく足が着く

 今を生きる 立ち直るってそういう事なんだろう

時間は流れてるけれど呼吸してやり過ごすような日々

だから5㎜浮いた世界 すーっと過ぎる時間

目の覚める一撃は 必要だったのかも知れない

 

 彼がいたら心配しただろう

いや 一緒にいて守ってくれたからの軽傷かな

事故では思わなかったけれど 代車の故障で思った

ディーラーさんから電話が来た時「JAFに入ります!」と宣言

彼は長年入っていてカードもプラスチック版

でも使った事はほぼない いわばお守り

どこであんな目に遭うかわからないとなったら

お守りも必要だなと実感

忘れずに手続きしないと

 

 長かった宙ぶらりんはやっと終わり

いささかがっくりきた感がある

ちょっと呆けて 

連絡待ちで閉じこもり行けなかった場所へ行こう

立て直さないと 自分の事

 

あ…クーラー掃除もしないとな

あの部品が取り外せたらどんなに良いだろう

風呂場で洗えたらすぐに終わってしまうのに

気が重くなるな