誰かとの別れは いつだって突然で 離れ難い
弟は小さな瓶で我が家にもいる
母はさらに小さな小瓶で 服に小さなポケットを付け
そこに収納し 肌身離さず行動している 寝る時以外は
私も同じような事を考えて 何かないかと 検索
ネックレスがいいかと思うも ネジが緩むのが難点
最終的にアルミのカプセルを購入
弟のことは旅の時だけ持ち歩こうと そこには入れずじまい
カプセルだけが残る
彼との別れも突然で パニック状態 でも どこか冷静
火葬場から帰った日 最初にしたのが 分骨
骨壷を開け 小さな瓶に彼を少し分けた
両親に預かってもらい 小さな瓶で彼を帰宅させる
結局2日後には引き取ったけれど 今も小瓶はそのまま
月命日に両親と食事をする時は 小瓶を連れて行く
小瓶を持ち帰った日 アルミカプセルの事を思い出す
一緒に行動する為に遺骨を少しと髪の毛を入れ ネックレスに
外出はいつも 首から下げて一緒に出掛ける
1人で辛いことも 胸のカプセルを握りしめて乗り越えた
服の中にしまうから 人には見えていない
おしゃれでもなんでもない カプセル
確か災害用の個人情報を入れておく為のもの 少し大きい
母は本当にガラスの瓶で 割れそう
スペアがあるから 母もアルミのカプセルに詰め替える
一度 地面に落として割れるかと思うことがあったそうだ
こわいこわい しかも 小瓶が ちょっと大きめ
母はカプセルをポケットにしまうから紐はつけていない
親子で色違いのカプセルを持ち歩いている
色々調べた時に遺骨でダイヤモンドも考えた
肌身離さず持ち歩くのに 人から見たら 違和感がない
残念ながら常にアクセサリーをするタイプではない事
ダイヤが残って 人の手に渡るようなことは嫌だなと
残り続けるものにはしたくないと母も同じ意見だった
我が家に子供がいたなら ダイヤにしたかもしれない
私が死んだら叩き割ってと言えるから
カプセルの中に小さな骨のかけら 処分されるだろう
ゴミでいい 誰かの手にずっと残されるよりも
私だけが 持っていたいだけだから
彼との暮らしは 帰宅が遅い彼に合わせて 夜中めし
順調に増量され私も彼も丸々と肥えてしまった
なのに体温調節機能が壊れて 寒かった ひたすら寒かった
洗濯はまとめてするし 手間をかけていられない
洗濯機でじゃぶじゃぶ洗えるように スポーツインナーにする
背中があるから暖かくてちょうどいい
夏になったら流石に暑くて 普通の下着に戻る
スポーツインナーの時は隙間に入れて 見えなかったカプセル
下着は隙間がなく ぶら下がってぽこっとシルエットが出る
ゆったりブカブカの彼のTシャツの時はいいのだけれど
自分のTシャツの時は少し気になる
スーパーに行くだけなら 距離が短いからいいかとぶら下げる
そんな一週間が過ぎて 久しぶりにバスに乗り実家へ
行くとは言わずにピンポンを鳴らす 応答なし
鍵を使ってロビーを通り ドアベルを鳴らす
寝ぼけた母が出てくる 父はロック解除ができないらしい
朝の早い両親は 世間的にはまだ早い時間にお昼ご飯を食べる
食後に夕食の買い物に出かける為 バスに乗る
3軒もはしごし バスと徒歩のがっつり買い物
久しぶりに長めの外出をして 母の夕飯をご馳走になる
実家を後にしてバスを乗り継ぐ為 徒歩移動の途中 寄り道
バスを降りた後もスーパーに寄り道
すっかり汗だくで帰宅 シャワーに駆け込みたいけれど
手を洗わないととか 食品を冷蔵庫へとか もたつく
よし!と着てた服を脱ごうと カプセルの紐を掴む
おや?っと感じながら首から外す 軽い なんでだ?
紐が輪になった先に 何もない !!!!!!!!!???
血の気が引く 言葉にならない 背筋が寒くなり
やっちゃった…やっちゃった…
膝からガクッと力が抜けそうになる
胸元に目をやり ランニングを覗く !!!!! あった〜
今日は 脇のカットが大きめで下着が見えそうな服
見えてもいいようにカップ付きのインナーにしてた
蓋は時々緩んでないか気にしていたのに 金具がとは
普通の下着の日だったら 落としてた…
あんなにバスに乗ったり移動したら きっと気づかない
ほっとして再び汗だく シャワーに入りながら
ちゃっかりと胸の谷間に隠れてたのかと思ったら
可笑しくなって やっぱり 離れ難いのかと 嬉しくもなった
骨になったあの日から いつも一緒に
いや 2回 忘れた 忘れそうになることも 割とある
でも 一緒に出かけている
緩んだ金具を締め直す なんだか柔らかいのは暑いからかな
ステンレスの輪に いつのまにか錆がある
夏になり 汗で腐食したのかも 時々ここもチェックしないと
夏が終わったら金具の交換をしよう
小さなパーツを買っておかないと
足首を蚊に刺されたらしく バスに乗ったら痒くなる
玄関の鍵を開けながら足首を掻いていたのに
翌日 蚊に刺された事を思い出さなくて
ぷっくりと腫れ上がることもなかった
血の気が引いて汗が吹き出し 代謝されたのかも
新技術の蚊が止まらないクリーム 早く商品化されないかな
真夏の夜にひんやり体験は心臓に悪過ぎる