不思議な体験をした記憶はあまりない

幼馴染数人で夜中に“出る”と噂の池に行った時

1人は何となくと言い 1人ははっきり見えていると言い

それを聞いて走って逃げるのが精一杯の方だった

 昔使っていたフィギュアの電話機は留守電のベルが鳴る前に

“ピコッ”と鳴ってからベルを鳴らす癖のある電話で

義父が亡くなった時間 ピコッ と音がした

叔父さんから電話が来たのはそのずっと後で

その時間は誰も我が家に掛けていないと皆んなが言っていた

 義母の意地悪は週刊誌レベルで 精神的に追い詰められた頃

夜中に目が覚めて時計を見ようとしたら

三つ編みの女子高生が空中に横向きの上半身だけで目が合った

怖くてもう一回は見れず 朝まで布団に潜り込んだ

ずっと後で“あれって自分かな”と 生き霊出すほど辛かったのか

正解は分からずじまいだけど 霊感はない

 弟が亡くなった時辛くて泣いてる帰り道 

非常階段の手摺に黒アゲハが飛んで来て降りて行けなかったけど

何だか弟に慰められてる感じで嬉しかった

その日以来 辛い手続きや外出の度に黒アゲハは目の前に来た

毎年とても近くを挨拶をすように飛んでいく 夢には出ないけど

ごく平凡的な体験しかない

 

 歯医者で“話す壁”を1つ超えたけれど まだ近所が残っていた

階下のおばさんは“スピーカー”と言われてる人

ずっと気が重かった ニアミス時は会釈して足速にやり過ごした

歯医者から1週間 話せそうと思った矢先 その時が来た

 買い物に行こうと出て曲がり角の向こうから姿が 

「寒いねー」ダウンの首が開けっぱなしで肌が露出してる

そりゃあ寒いでしょうよ的な会話をする

「最近変わった事は無い?」 言わなくちゃと思う間に涙が

「あのね…」はっきりと言えてない程泣きながら話す

「うそ!」おばさんの大きな声が響き渡る ひと通り話すと

「最近見たわよ 1ヶ月くらい前に 帰ってくるところ」 

違うよと口では言うが 私が夢を見た頃だ 

 7時過ぎにうとうとして 夢を見るんだと分かって見た夢

ガチャガチャと玄関を開けて帰ってきた彼の顔が忘れられない

おばさんは確かに見たのにと 不思議そうにしていた

彼は本当に帰ってきたんだろう ほんの数秒の夢だった

それが彼のそして私の切実な願いだったから

私に見える形が夢だったんだと思う 私には霊感がないから

 

 弟が亡くなって読み漁った本の中に

あの世の手続きをして家族が気になって戻ってみたら

数時間の出来事のはずが3ヶ月経っていた と書かれてて

この世とあの世は時間の流れが違うのか と思ったが

まさにそんな感じのタイムラグで彼は帰ってきた

 あ この時の本も ちょっと不思議だったかも

前に読んでみたいと思った本 内容は亡くなった妹への手紙

本棚でタイトルを見てこれかなと手に取って中身を見なかった

読み始めて気付く 間違えた! 

でも 吸い込まれるように読んでしまった

内容は弟が亡くなり後悔する姉 気にしてないと伝えに戻る弟

同じように後悔してたから弟に買わされたような気がした

読んで少し救われた 私に必要な内容だったから

 今回は本ではなく 映画だった

頭を何かで埋めていないと落ちていくから見続ける

恋愛ものは辛いシーンが無いし悲しく無いからの理由で見る

タイトルだけで決めて見た映画

どうやってもその日その時間に死を回避できず苦しむ彼

どの時間も幸せだったから苦しまないでと受け入れる彼女

残った彼は彼女の願い通り楽しく人生を生きていく

悲しいし辛くてぼろぼろ泣いた どうやってもその日なのか

 これは彼が見させた気がする 幸せな想像

涙をたくさん流して 朝まで寝る そうして心が修復される

こうして書くのも泣きながら だから時間がかかる

明日少し笑えるために 今日もまた 涙を流す