3時間ほど休んだ小藤次さん![]()
目が覚めると、体はバキバキ![]()
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(小藤次も五十路を過ぎて無理が利かぬか)
とちょっと弱気・・・![]()
でも、駿太郎くんのためにがんばらないと![]()
と弱気心を改め、顔を洗います。
髭が伸びてきてますが、時間がないので、
あとから旅館で髭を当たろうと決めます。
特に持っていくものは無く、刀や笠、草鞋のほかに、
京屋喜平の職人・円太郎親方が作った革足袋、
水戸の鞠姫さんへのおみやげ。
そしておりょうさんからのお手紙![]()
を
大事にしまって、久慈屋へと向かいます。
船着場では観右衛門さんと、駿太郎くんを背負って
準備万端の国三さんが待っておりました。
国三さんが店に小藤次さんの到着を
知らせに行ったのを見届けて、
小藤次さんは観右衛門さんに昨日の夜のことを
話しました。
「なんと、そのような愚かなことを。」
と観右衛門さんは言葉を失います![]()
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「そこで相談ですがな、千住宿まで水路で参りませぬか。
さすれば夜も明けようし、もし泉蔵さんが
悪い考えをなしたとしても裏をかくこともできよう。」
と提案
さっそく昌右衛門さんと相談の上、
船旅に決まりました![]()
舟が出発してしばらくすると、
小藤次さんはなんとなく見詰める、
「目
」
を意識しました。
もしや泉蔵さん
それとも刺客![]()
しかし朝靄のため判断はつきません・・・
「なんぞ気にかかることがございますか。」
と昌右衛門さんが問いかけます。
「いえ慣れた水路ですが他人様の櫓でいくのも
いいものだと思ったところです。」
と、ふっふっふ
と昌右衛門さんが笑います。
「赤目様は武術の達人ですが、
嘘をつくのは下手のようですな。」
そういって、小声で話し始めました。
泉蔵さんが久慈屋に入ったのは13歳の時。
機転が利いて知恵も回り、人一倍覚えがいい![]()
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しっかりものだと目をかけていたようです。
お店奉公というのは三月三年で長い間勤めることが
できるか、大成するか推量できるそうで、
泉蔵さんは三ヶ月で久慈屋の暮しに慣れ、
三年で仕事の基本を覚えました。
これは並大抵のものではないそうです。
しかし
この泉蔵さんの才には裏が・・・![]()
泉蔵さんのお父さんもお爺さんも久慈屋の奉公人で、
お爺さんの「幹蔵」さんは暖簾わけを許したほどの人物。
問屋ではなく紙の小売の店でした。
ところがお父さんの「泰蔵」さんの代で、うまくいかなくなります。
泰蔵さんは体が弱く、持病の喘息を紛らわすため、
煙草を無茶吸いして内臓を悪くして、寝込みます。
このため奉公人がだんだん去っていき、
店をたたむことになったのは、
泉蔵さんが9歳の時でした。
店がおかしいというので、昌右衛門さんのお父さんが
すぐに立て直そうと番頭を1人派遣したのですが、
頑固者の泰蔵さんは自力でがんばる![]()
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と手を借りることはせず、結局潰れます。
このあと働いて一家を支えたのは、
お母さんの「おとく」さん。泰蔵さんの亡くなった後、
久慈屋に奉公させてくれと、13歳の泉蔵さんを
連れてきたのはこのおとくさんでした。
この頃、おとくさんと泉蔵さんは、
おとくさんの実家にお世話になっていて、
苦労しており、2、3日食事をしないこともあったとか・・・
さて、先ほどの才気の裏の話![]()
どうやら泰蔵さんは亡くなる数年前から、
泉蔵さんに紙のあれこれを教えていたようです。
どんな思惑があったかはわかりませんが、
この教え込まれた知識のおかげで、
久慈屋の同期の間でもぬきんでた小僧になりました。
さて、泉蔵さんが手代に昇格した頃、
評判が二分します![]()
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昌右衛門さんや先輩番頭にはなかなか受けがいい![]()
しかし、下の奉公人にはやたらに厳しい![]()
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そのころ筆頭番頭だった観右衛門さんが、
小僧を呼んで聞いてみると、指導という名目で、
殴る蹴るということもあったとか![]()
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そこで泉蔵さんを呼んで聞いてみると、
知らぬ存ぜぬ、小僧が嘘をついていると言い張る・・・
昌右衛門さん達もその頃から、
泉蔵さんを注意深く観察するようになりました。
でも、仕事は出来るので出世させるわけにもいかず、
見習い番頭になったのも同期では最初でした。
その数年後、だんだん周りの人間が
泉蔵さんに追いつき追い抜いていきました。
表裏があるという評判も密かに店に広がり、
昌右衛門さん達も奉公ぶりに訝しさを感じて、
当然査定も厳しくなっていきました。
おやえさんにラブレター
を送ったという話も本当。
でも決しておやえさんを好きだったわけではなく、
おやえさんの婿になり、久慈屋の主になる
野心があっての事だという話でした。
観右衛門さんに命じて注意させたので、
ラブレターを送ることは無くなったのですが、
結局今回の事件につながっているわけです。
しばらく黙って考えを纏めているようだった昌右衛門さん、
「赤目様、昨日、観右衛門と一緒に
徹夜を致しました。」
その理由は、泉蔵さんの得意先の入金を調べたため。
案の定、怪しいところが3つほどでてきました![]()
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思わぬ展開に小藤次さん、相槌もうてません。
集金の段階で消えたお金は320両ほど・・・
すべて泉蔵さんの得意先だったのです。
次回へ続く![]()