この日、いなみさんの髪を結い上げたので、
他の仕事に行く時間に追われ、
いつもより忙しい思いをした伊三次さん。
仕事を終えて家に戻り、夕ご飯を食べに行こうと、
その日の売り上げを机の上に出しました![]()
そこにはいなみさんから貰ったお金も、
懐紙に包まれたまま入っておりました。
中を開けると、髪結い賃には破格の金額が
入っており、伊三次さんは驚きます![]()
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伊三次さんは、いなみさんがどうして
そんなに手間賃を弾んだのか・・・
今までのいなみさんから考えると、
腑に落ちない気がして、
お風呂屋さんでも飯屋さんでもそのことに拘っていました。
さて、その夜布団を敷いて横になろうとしたとき![]()
障子を控えめに叩くものがおりました。
戸を開けると不破さんに仕える中間の「松助」さんが
立っておりました。
気後れしたような表情で、夜分にすまないと言う松助さんを
中へ促します。
「最初に言っておくが、事件でもおれは手伝わねェぜ。」
「わかっている。旦那の仕事じゃねえんだ。」
という松助さんは、いなみさんのことについて聞きます。
伊三次さんにはお茶会に行くといっていましたが、
実際は「大沢」さんのお屋敷まで行ったそうなのです。
いなみさんの伴をしていた下男の「作蔵」さんが、
そう言っていたそうです。
お屋敷の近くまで行くと大沢さんが待っていて、
その後いなみさんは作蔵さんに帰るようにと言って、
大沢さんと2人でどこかへ出かけたそうです。
この大沢さんというのはいなみさんの実の弟で、
大沢の家に養子にいった方。
いつもはほとんど行き来が無く、
きょうだいということも内緒にしておりました。
しかし2人はこそこそと会っている様子![]()
しかも最近では大沢さんのほうが、
不破さんのいないときに屋敷に顔を出すそうで、
下男の作蔵さんがかなり気にしており、
松助さんに相談してきたようです。
それで松助さん、いろいろ調べてみました![]()
さて、ここでいなみさんのことをちょっとご説明![]()
その昔、いなみさんのお父さんは剣術の道場を
開いており、不破さんもここへ通っておりました。
お父さんは「深見平五」さん。
お母さんの「いく」さん、お姉さんの「菊乃」さん、
そして弟の「崎十郎」さんとの5人暮らし。
お父さんは剣術が強くて、ある藩の指南役に任命。
それが縁で菊乃さんはそのお屋敷に奥女中として
奉公しておりました。
この菊乃さんはとっても美人![]()
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そのため藩の留守居役との縁談が持ち上がり、
とんとん拍子に祝言の日取りも決まり、
道具を揃えたり着る物を揃えたりと、
大忙しながらも嬉しい日々![]()
しかし・・・祝言は直前になって破談に![]()
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なんでも、相手の男性に別の大名家の姪との縁談が持ち込まれ、
藩の将来と自分の出世のためにのりかえちゃった![]()
お父さんの深見さんは相手方に談判へ![]()
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おそらくここで話し合いがこじれて、刀を抜いたようで、
相手方の親子に怪我を負わせてしまいます。
これがお殿様の怒りを買ってしまい、
指南役を辞めさせられてしまいました![]()
深見さんは藩主に抗議するために自害![]()
菊乃さんも将来を憂いて自害![]()
弟の崎十郎さんが親戚の世話で大沢家に養子に
入ることが出来たのは不幸中の幸いでした。
道場は深見さんのお弟子さんに譲り、
いなみさんとお母さんのいくさんは、
いくさんの実家である叔父さんの家に身を寄せましたが、
いくさんは心労で寝込み、間もなく亡くなります![]()
ひとりぼっちのいなみさん・・・
しかしここでこの叔父さんに言い寄られ、
その奥さんには嫉妬で憎まれてしまいます![]()
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そこでお母さんの49日が終わると、
この家を飛び出しました。
このときいなみさん、16歳・・・
しかし働いていた先でだまされ、
吉原に売られてしまいました![]()
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それを請け出してくれたのが不破さんだったのです。
そして不破さんの両親も、このことで愚痴をこぼしたことは
いちどもありませんでした。
そしてこの一件以来、いなみさんはお姉さんをはじめ、
家族を不幸にした留守居役を敵と思い、
仇討をしたいと考えていたのです。
次回へ続く![]()