ある日、新之丞さんのおじさんが家を訪ねてきます。

なんでも、お城からのお知らせがあったそうで、

新之丞さんのお給料は今までどおり、

家も出て行かなくてもよくなり、

ゆっくり養生するようにと、お殿様からのお言葉でした。

近いうちにお礼を申し上げるため、お城に上がる事になりました。

その夜、加世さんは新之丞さんの袴にアイロンをかけます。

新之丞さんもなんだか元気が出てきたようで、

徳平さん相手に冗談を言うようになりました。

そして「もう死ぬのはやめたから、

刀を元の場所に戻しておいてくれ。」

とそう徳平さんに言うのです。

そんな新之丞さんのうしろ姿を見る加世さんの表情は、

なぜか悲しそうなものでした。


新之丞さんは久しぶりにお城へ上がりました。

昔のお仲間達が皆よってきて、お見舞いの言葉をかけます。

そんな皆さんにお礼を言って、お殿様の元へと向かいます。

新之丞さんは、元同僚の山崎さんと一緒に、

庭先でお殿様が来るのを待っております。

と、お殿様が廊下を通り掛ります。

なにやらご家来に耳打ちされて一言、

「大儀。」

そういってあっという間に通り過ぎてしまいました。


さてある日、お墓参りにいった加世さんがなかなか

帰ってこないのを新之丞さんは心配しておりました。

そこへ新之丞さんのおばさんが訪ねてきます。

この方、親戚の仲でもおしゃべりでとおっています。

さて、そのおばさんがご主人から妙な話を聞いた・・・

そういって話し始めました。

加世さんが身分の高い侍と一緒にいたというのです。

相手の顔は暗くてはっきりと見えなかったそうです。

そんなおばさんに向かって新之丞さんは、

「あなたは忙しいのにわざわざ・・・

そんなくだらないことを話すためにきてくれたのですか。

親切ですね。加世はそんなみだらなことをする女では

ありません。あなたがそんな告げ口をするということは、

あなたの心の卑しさを白状しているのですね。」

そういっておばさんを追い返したのです。


数日後、新之丞さんは、お墓参りに行くという加世さんの

あとを、徳平さんにつけさせました。

何事もなくお墓参りは終わったのですが、

そのあと加世さんは一件の店へと入って行きました。

徳平さんが不思議に思っていると、

その後から笠を被ったお侍さんが入って行きました。

その方はなんと・・・島田さんだったのです。

何事も無かったように家に戻ってきた加世さん。

しばらくして徳平さんも家へと帰ってきました。

薪を取りに行った徳平さんに加世さんは、

「今日、お前は私の後をつけてきた。

それは旦那様のご命令でしょうね。」

と、優しく問い詰めました。

徳平さんは、

「あれは悪い夢だ。」

と何度も何度も見たことを否定します。

それを聞いていた加世さんは新之丞さんに

すべてを話す決心をするのです。

「私は何度も死のうと思いました。

でも一人になった旦那様を思うとかわいそうで・・・

私が愚かでした。私がしっかりしていれば・・・

こんなことには・・・」

そういって徳平さんの前で泣き崩れるのでした。


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