次の日、小藤次さんと浩介さんは、
水戸家の作事場に向かいました。
小藤次さんの今回の水戸行きの目的は、
行灯作りを皆さんに教えることでした。
作事場には、久慈屋さんの本家であり、
紙作りを行っている細貝家のご当主・忠左衛門や
職人頭の角次さんもおりました。
小藤次さんが顔見知りのお役人にご挨拶をしていると、
久坂さんに案内されて重役の方が1人姿を見せます。
このかたは水戸家の国家老「太田左門」さんです。
普通の藩では、自分の領地と江戸を行ったり来たり
する事が決められていますが、水戸藩の藩主は
江戸に滞在することを許されておりました。
藩主の不在の水戸を預るのがこの太田家老。
それだけに並みの国家老よりも権威も実権もあります。
小藤次さんが軽く腰を折り、頭を下げると、
「さすが肥前小城藩ら4家の大名行列を1人で襲い、
御鑓先を奪い取った兵、赤目小藤次。
なりは小さいがふてぶてしい面構えよのう。」
褒めてるの・・・?けなしてるの・・・?
なんだか失礼な気もしますが、それだけ偉いのです![]()
静太郎さんや久坂さんが小藤次さんの行灯について説明しますが、
太田家老は「ふーむ」と鼻で返事をし、
「赤目、そのほうが御鑓拝借の達人とも、
斉修様を驚かした行灯の作り手とも俄かに信じることができぬわ。」
と正直な感想を洩らします![]()
そこで、小藤次さんもってきた行灯を
組み立ててお見せすることにしました。
小藤次さんが持参した行灯の試作品はは4つ。
簡単にするために出来るだけ部品を少なく工夫しました。
4つのうち2つは、庶民の人も使えるようにと、
丈夫にして燃料代も少なくし明るさを生み出すもの。
これは「実用久慈行灯」という名前です。
材料には数字が書いてあり、その順番にはめ込むと、
出来上がる仕組みになっています。
プラモデルみたいですね![]()
水戸で作って販売先は江戸になるので、
これだと、運ぶ時にも壊れる心配がほとんどありません。
残りの2つは「ほの明かり久慈行灯」。
これはちょっと複雑です。
これは紙の漉き模様と職人芸が生かされます。
雛型さえ飲み込めば、各自工夫するのは自由です。
質重視の行灯ですね![]()
小藤次さんが太田家老に説明している間、
浩介さんと角次さんが組み立てていきます。
しばらくすると4つとも組み上がりました。
まずは「実用久慈行灯」から点火![]()
「思ったよりも明るいのう。」と太田家老も感嘆![]()
次は「ほの明かり久慈行灯」です。
明かりを灯しましたが、座は沈黙のまま・・・
浩介さんが慌てて振り向くと、皆さん光に見入っておりました。
「な、なんとのう。雅にして艶とはこのことか・・・」
太田家老は感動の言葉を洩らします![]()
「赤目、斉修様がそなたを推挙するはずよ。
これほど美しき明かりは見たことがないわ。
これならば江戸の粋人の心を捉えよう。」
太田家老の満足げな言葉に、
一同はほっと一安心![]()
作業は明日からということで、
今日はどのように組み立てられているか、
部品はどのようなものがあるかを、
習得することになりました。
小藤次さんも新たに古い竹を探してもらい、
新しい試作品を作るつもりのようです。
帰り道、静太郎さんにと2人になったところで、
小藤次さんは古竹で婚約者・鞠さんの嫁入り道具に、
新作行灯を作ろうと約束しました。
結婚式は来年の春
楽しみですね。
うづちゃんに買って帰るお土産を、
静太郎さんが鞠さんと相談してくれると請合ったとき、
道の向こうから刀を打ち合う音が聞こえてきました。
次回へ続く![]()