~北爪平九郎との戦い④~
小出派を抜けます
と宣言した半十郎さん。
なんだかすっきりした気分です![]()
![]()
しかし、脅しをかけられたことも頭に置き、
半十郎さんは気をひきしめます。
どちらにしても、「馬の骨」探しは続けなくてはなりません。
そこで半十郎さんは元大目付の笠松さんを訪ねることにしました。
笠松さんは、望月派のリーダーであった望月さんが
暗殺されたときにその傷跡をみて
「馬の骨か・・・」とつぶやいた人物でした。
笠松さんはすでに隠居しており、現役時代に鋭い表情だったのが、
今はいくらか穏かな顔に変わっておりました。
「小出家老に言われてきたのか。」
との笠松さんの問いに、半十郎さんは、
違うと答え、自分は秘太刀探しが終わったら、
派閥を抜けることも打ち明けました。
笠松さんは、
「『馬の骨』を遣う者はいる。」
と短く言い切ります。矢野家の先代の当主・仁八郎さんから、
話だけは聞いたことがあるそうなのです。
しかし、どのような剣なのかは見たことがないようです。
笠松さんからの話を一切洩らさないと約束し、
半十郎さんは屋敷を出ました。
誰が遣い手なのか・・・と考えながら家へ戻ると、
玄関先に銀次郎さんが座っておりました。
これから北爪さんに関わる場所へ行くので、
つきあって欲しいということでした。
いつもなら出かけるというとしらんぷりする杉江さんも、
この日は「ごくろうさまでござりまする」と一礼。
なんだかいい傾向のようです![]()
銀次郎さんに連れられ、商家の軒先から一軒の家を見張っていると、
午後9時近くに提灯を持った武士が現れます。
その武士は酒の徳利を下げており、鋭い目で辺りを見回すと、
提灯の火を消して家の中へと入っていきました。
この武士は、もちろん北爪さん。銀次郎さんはいつものように、
試合をするための弱みをさがしあてたのです。
戸の中にいたのは1人の女性。
銀次郎さんによると、この女性は北爪さんの亡きお兄さんの
奥様だというのです・・・弱みですね・・・
後日、道場での北爪さんと銀次郎さんの立ち合い。
北爪さんがどんな剣を遣ったのか、そのあまりのはやさに
半十郎さんは見極めることが出来ませんでした。
しかし、しばらく打ち合った後の一瞬で勝負は決まりました。
一方的な負けで、その屈辱に耐えられなくなった銀次郎さんは、
先に帰ると言い、半十郎さんは入り口まで見送ります。
しかし、北爪さんも「馬の骨」の遣い手ではありませんでした。
道場の隣の建物から、少年達の勉強する声が聞こえてきます。
すつと北爪さんは、むかしを思い出したと微笑します。
「あのひとは、わしがいま素読をやっている子供たちの齢ごろに
嫁にきた。うつくしい人だった。」
お兄さんが亡くなり、実家に戻ったのですが、
実家にもいずらくなり、家を借りて町の者に書とお茶を教えているそうです。
「だが、嫂(あによめ)は実は死病に冒されている。
実家の両親もそのことを承知で、気ままにさせているのだ。
むろん、本人も知っておる。あと、2年の命とも、3年の命ともいう。
医師にも会ったが、助かる道はないそうだ。
お酒が好きでな。月に2度雁金町(お義姉さんの住んでいるところ)に参って、
世間話をしながら嫂と酒を汲みかわして帰る。
嫂はそれを大そう喜ばれる。ほかに、わしに出来ることはない。」
おそらく、銀次郎さんの言う醜聞のようなものはない・・・
しかし、北爪さんは今でもお義姉さんにあこがれている・・・
半十郎さんはそう思っていました。
次回へ続く![]()