小出家老のお屋敷に呼ばれた訳を聞かされた半十郎さん。
沈黙がひろがった部屋に、
「や、お待たせいたしました。」
と歯切れのいい江戸弁の男が入ってきます。
びっくりするような美男子で
年は20過ぎ・・・
この方が小出家老の甥・「石橋銀次郎」さんです。
しかし、その明るい声や表情とはうらはらに、
値踏みするような目で半十郎さんを見ておりました![]()
銀次郎さんは半十郎さんを伴い、早速矢野家へと向かいます。
矢野さんの家は「御馬乗り役」という職についていて、
半十郎さんの記憶によると、お給料は50石~70石くらい。
現在の当主のお名前は「矢野藤蔵」さん。
藤蔵さんのお父さん「仁八郎」さんは名人といわれた剣客でした![]()
あまり大きくない屋敷の一角にはめずらしく栃の大木が植えてあります。
その下にしめ縄を張った場所があり、
どうやらここが剣術の稽古所のようです。
この稽古所では、子供と50過ぎの年配の男がこちらを見つめておりました![]()
さきに半十郎さんが使いをよこしていたので、
当主の矢野藤蔵さんは2人を待っておりました。
藤蔵さん、年は30歳過ぎ。
日焼けした黒い顔ですが温厚そうな人柄に見えます。
半十郎さんのほうが身分は上ですが、
これから聞くことは決して問いただすような性質のものではないこと、
そして矢野さん家の流派の秘密に関わることなので、
やや丁寧な言葉で銀次郎さんを紹介します。
しかし、銀次郎さんの態度は、
そんな半十郎さんの気遣いを裏切るような無礼なものでした![]()
「お手前のおやじどのは名人と呼ばれたひとらしいが、
お手前はいかがだ、腕の方は。」
藤蔵さん、その態度にびっくり
そして半十郎さんをみて苦笑い・・・
「それがしは不肖の跡継ぎで、父には到底および申さぬ。」
藤蔵さんの家に伝わる剣術は「不伝流」という名前。
他にこの剣術を伝える家はないので、
藤蔵さんが型だけは教えているそうです。
「『馬の骨』というのも、不伝流の秘太刀か。」
と銀次郎さんいきなり結論から![]()
これを聞いた藤蔵さんの穏かなお顔が、
一気にひきしまったように見えました・・・![]()
印象はすっかり変わり、鋭く油断のない気配が
藤蔵さんを包み込んでおります・・・![]()
ここで半十郎さんがその場の空気をやわらげるように、
「この家に『馬の骨』という秘太刀が伝わっていることは、
われわれも以前から伝え聞いている。
秘太刀であれば、あまり触れられたくないことかも知れんが、
差し支えないところで聞かれることに答えてくれぬか。」
そして、あくまで小出家老の命令ではなく、
自分が頼んでいると付け加えます。
この間、銀次郎さんはと言うと・・・
お茶を出しに来た14,5歳くらいの娘さんを、
ずっと目で追っておりました・・・![]()
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半十郎さん・・・苦々しい・・・![]()
さて藤蔵さんによると、「馬の骨」はおじいさんが工夫した剣で、
そのおじいさんからお父さんへと伝わったようです。
しかし、藤蔵さんには伝えられて無いということ。
誰かに伝えられたはずではと聞いても、
「おそらくは・・・」と答えるだけ。
どうやら藤蔵さん、秘太刀のまわりに壁をめくらせはじめたようです![]()
そうですよね・・・「秘」太刀だもん、秘密ですよね![]()
秘太刀はお父さんと、伝えられて者だけが知ることなので、
誰に伝えられたかは知らないという藤蔵さん。
秘太刀探しはなかなか難しくなりそうな様子です。
次回へ続く![]()