「もしもし・・・??」

≪ハイ、嵯峨ですが・・・・。≫


沙耶は一瞬ためらった。

そして小声で、梨絵に言った。


「ねぇ・・嵯峨の下の名前は?」


「えぇっと・・・確か春樹よ。」

梨絵は、そう伝えた。


「あのぉ・・私、斉藤梨絵の友人の相田沙耶って言います。」

≪・・・・・≫


まだ、無言のままだ。

沙耶の様子からして、相手は本人の様だ。


「もしもし?あの、突然ごめんなさい。春樹君・・ですか?」

しばしの沈黙の後、相手がやっと一言声に出した。

≪・・・そうです。えっと・・・梨絵ちゃんの友達?≫


嵯峨の、困った様子ではあったが、以外に拒否感の無いそぶりに、

沙耶は、腹を括ったように座りなおし、一気に言ってのけた。


「そうなの!実は、春樹君が梨絵の家の近くって聞いたものだから。

 でね、今梨絵のうちにいるんだけど、女二人じゃなんかつまんなくて。

 それで、春樹君も一緒におしゃべりしないかなぁ~って思って!」


しばらく、春樹は無言のままであった。

間違いなく、びっくりしているのだろう。

何しろ、梨絵とはそんなに深い仲ではないし、

いきなり、家に来いとは・・・・誰だって困る。


「で、どう?ただおしゃべりするのよ。」

沙耶は押している。こうなると沙耶は強い。


「そうだなぁ・・・でもいいのかい?突然男の僕が

 夜中に女の子の家に行ってもさ。」


「そうね・・・もちろんこっそりだけど、梨絵も待ってるわよ!」

沙耶は、目を細めて梨絵に目配せした。


「じゃあ・・・行くよ。僕なんかでよければ。」

「ホントぉぉ!!」

沙耶の言葉で、嵯峨がオーケーしたのがわかった。

以外だった。

しかも案外あっさりと承諾した。

思ったより嵯峨は女好きなのかも知れない・・・と梨絵は

ふとその瞬間に思った。


20分後、嵯峨が家の前の道に現れた。

まずは、梨絵がこっそり玄関の戸を開け、

家族に聞こえないよう、そろりそろりと歩くよう嵯峨に注意する。

2人は二階の梨絵の部屋まで、忍び足で進んだ。


「緊張するなぁ。」

「ごめんね、さすがに親に見つかったら怒られちゃうもん。」

「まぁね、それにしても久しぶりだね、梨絵ちゃん。」

「そうね、久しぶり。嵯峨の事、噂には聞いてたけどね!」

「え?噂って何だよ?」


梨絵は、しまった!と思った。噂とは例の事で、

嵯峨に話せるような事じゃない。


「えっと、こちらが友達の沙耶。沙耶、こちらが嵯峨君。」

「初めまして。」

「はじめまして!沙耶でーす!」

梨絵は噂のことをはぐらかしたつもりだった。


しかし、嵯峨は言った。

「で、僕の噂って?沙耶ちゃんも知ってる?」


沙耶は、くすくす笑いながら、言わないわ。という顔をする。


仕方なく嵯峨は、梨絵の部屋の隅に腰掛けて諦め顔でいた。

でも、自分の噂がどんなものか、かなり気になっている様子だ。

それも当然かもしれない。女子高での自分の噂なのだ。


しばらく三人は、たわいもない昔話で盛り上がっていた。

まだ、未成年にも関わらず、こっそり沙耶が持参した

缶ビールを数本空けていた。

大人びたフリをする事に、興味を持つ年頃だった。

悪いと知っていても、そのドキドキがたまらない。


だが、単なる昔話に飽きてくると、お決まりのように、

早速、恋愛話や体験話が浮上する。

さらに、3人は飲みなれない酒のせいで酔っていた。

そんな時、突然沙耶が言い出した。


「ねぇ~嵯峨くぅん。嵯峨君って初体験いつぅ??」

「いやぁだぁ、沙耶・・・酔いすぎよぉ~」

「ううん、酔ってなぁいって。ねえ、聞きたいよぉ・・・いつぅ??」


嵯峨は、困った顔で言った。

「・・・まだだよ。まだしたことない。」


それを聞いて、梨絵も沙耶も意外だという顔をした。


「えっ!!うそぉ!だって、うちの高校で・・・」

「!!・・・沙耶っ!言うの??」

「な・・なんだよ!例の噂か?」

沙耶は、まだ完全に酔っている。

「そう、嵯峨のおチンチン大きいってう・わ・さ・よ!!」


梨絵は、嵯峨をまともに見れなかった。

顔を下に向けて、じっとしていた。

沙耶はどうしているんだろう?

酔っているから平気なのか・・・?嵯峨は?


しばらくの沈黙の後、聞こえたのは沙耶の一言だった。


「ねぇ、嵯峨のおチンチン見たくない?梨絵。」


梨絵は、その一言のあまりの衝撃に顔を上げた。

その瞬間、どうしようもない困った顔の嵯峨をみた。

しかし、その困った顔を梨絵の心が意外な気持ちで受け止めた。

梨絵は、バージンじゃない。年上の彼氏ととっくに経験はしている。

今の嵯峨は、全くの子供に見えた。性について何も知らない子供の様だ。

そう感じた瞬間、嵯峨が簡単に操れる様な気がした。

梨絵は、こう言っていた。


「ねぇ。嵯峨。私達が確かめてあげよっか?」


沙耶も同じ感覚だったのか、酒にのまれて、

思考が狂ったのか、こう言った。


「ねぇ、ベッドに寝てみて・・・」


嵯峨は、ガチガチに緊張した体を無理に動かしながら、

それでも私達に逆らわず、ベッドへ近づいた。


嵯峨が、ベッドへ横になると、沙耶が早速ズボンのファスナーに

手をやった。

嵯峨は、黙っている。どうやら、本当に初めてらしい。

緊張している事でどうしていいかわからず、身を任せている。

まるで男版、マグロ状態だ。


沙耶がズボンを下ろすと、梨絵は隣にひざまずき、

マジマジと嵯峨の股間を観察した。

だが、まだ勃起していないせいで、大きさはわからない。


「立たないとわかんないね・・・。」

「ねぇ嵯峨、どうしたら立つ?エッチなビデオでも観るぅ?」

沙耶が、ごそっとか鞄から出したのはAVビデオだった。


「沙耶、何でそんなの持ってるの?」

「へへっお兄ぃのやつ、こっそり持ってきたの。

 せっかくだから、梨絵と観てみようと思って。」

「まぁ、準備がいい事ね!」


沙耶は、嵯峨にビデオを観る様に勧め、そのまま再生ボタンを押した。


画面には、男性と女性が裸で映し出される。

梨絵も、彼氏とホテルで何回も観たことがある。

このビデオは、いわゆるありがちなタイプに思えた。


≪アッ・・・ンハン・・・ウッ≫

ビデオの女性は、丹念にショーツの上からローターを当たられていた。

ヴーンヴーンという音と、喘ぎ声が聞こえる。

そのうち、男優の方がしゃべりだした。


≪ん??ここか?ここがいいのか?≫

≪アッ・・・ソコ・・ソコをもっといじめて欲しいの・・・≫

≪ここって何処の事だ?言ってごらん?≫

≪いや・・恥ずかしい・・・私の・・・≫

≪言いなさい。言わないと止めるよ。≫

≪わ・・・私の、クリちゃんをもっとぉ~!!!≫


その瞬間、男は女のショーツをむしり取り、

女の股間を、ジュルジュルと音を立てて嘗め回した。


梨絵は、思った。単純・・・・。

こんなレベルでは、嵯峨は立たないんじゃないか・・・?

そう思って、嵯峨の股間を見やった。


そのとき、梨絵は噂の真相を見た。

!!!!かなり大きい!!!!


沙耶も、嵯峨を見ていた。

嵯峨は、照れくさそうにしてビデオから目を離し、

2人が、自分の股間を凝視している姿を目で追った。


沙耶は、嵯峨の股間をすでにしごき始めてた。

梨絵も、もうこの場の勢いを止めれなかった。

今日は、落ちるところまで落ちる・・・・。

そんな予感がした。









梨絵は早速、重い腰を上げると、出掛けの準備を始めた。


スーパーに行くだけと言うのにも関わらず、

梨絵は念入りに化粧をして、洋服も洒落た物に着替えた。

これは、昔からの梨絵の性格。・・・言うならば、趣味かもしれない。


スーパーで見かける殆どの主婦は、買い物程度では化粧もせず、

髪は後ろでひっつめてあり、洋服もラフで、おしゃれとは

かなり縁の遠い装いが常であり、ましてや子育て中とあれば、

それがもっとも普通であるのだろう。


梨絵は、そういった洒落気のない格好で外に出歩く事があまり好きではない。

特別に神経質、というわけではないのだが、自分なりのおしゃれをして

ピンと体の中から空気を張り、堂々と歩くと、なんとなく気分がいいのだ。


そんな梨絵は、顔もかわいらしく、昔から男受けもいい。

肉体は完全な大人であったが、なんとなくあどけなく子供っぽい顔立ちだ。

スーパーで買い物していても、何か他の人とは違うオーラが出ていた。

くたびれてないところは、子供がいないせいでもあるだろうが、

本質的におしゃれのセンスが抜群だった。


今日は、流行のフリルの付いたシンプルなブラウスに、

タイトなツイードのベージュスカート、濃茶色のパンプスに、

首には若者がこぞって興味を持っている高級ブランドの明るい色の

スカーフを巻いている。大き目のバッグは、靴と色を合わせてあった。

梨絵は、ブランドで身を固める事には興味がなく、

ワンポイントで取り入れることが好きだった。

傍目からすれば、結婚をしているようには見えないだろう。



スーパーに着くと梨絵は、早速いつものように買い物を始めた。

この店には、手作りパンの店が併設されており、梨絵のお気に入りだ。

店の前を通ると、『出来上がりまであと15分』とされている。

まずは、食料品を先に買い揃えて置けば、帰りに熱々のパンが手に入りそうだ。

「あと15分か・・・・」

そう、ぼやきながら少し足早に店内を回った。


その時だった。

プルルルルル・・・・・・

携帯が鳴っている。


「もぉ~誰かしらこんな時間に。」

梨絵は仕方なく足を止め、バックから携帯をさぐりあてた。

「・・・・・もしもし?」


≪ハロ~!!梨絵!?おひさし~沙耶よぉ!≫

「え、・・・あぁ、なんだぁ~沙耶かぁ!」

≪・・・なんだとは何よぉ!!悪友からの電話は素直に取りなさい・・フフ≫


沙耶は、高校時代の一番の仲の友人だ。

お互いこの歳になると、なかなか会う事もないのだが、

数ヶ月に1回は必ず連絡をしあっている。


「ふふふ。ごめんね!で、悪友の沙耶さんっ!今日は何の御用事で・・・??」

≪やだ!なぁに!忘れてるの??今月は由美の誕生日でしょ!≫

「・・・・!!あ、忘れてたわっ!そうね、由美の誕生日5月末だったわね!」

≪そうそう、だからまたいつものところで恒例のパーティーよ!≫

「そうね!久しぶりに楽しみだわ~。今回の日にちと時間は?」


由美は、友人の一人だった。

沙耶と、由美と梨絵は、毎年それぞれの誕生日に祝いあっている。

これは、高校卒業と同時に3人が決めた約束だった。

いつまでも、仲良く集れるといいわね!

そんな約束が、今までずっと守られている。


≪日にちは・・・また今度連絡するわ!それで・・・取り合えずね、

 私がお花束を予約するけど・・・割り勘でいいかしら??≫

「ええ、もちろん。お任せするわ!ありがとう。」

≪じゃ、そういうことで!梨絵、またね!≫

「うん、またね。沙耶も仕事頑張って。じゃぁ・・・」


沙耶との電話を終えた後、梨絵はふと昔を思い出した。

『悪友』・・・沙耶が私達の関係を冗談でこう呼ぶのは訳があった。


16歳。高校1年の時、2人とも初体験をすでに済ませていた。

でも、今から思えば、所詮は今とは愛し方も愛され方も全く違う。

まだ、考えも知識もセックスについては不十分だった。

興味ばかりが先走っていたその頃、梨絵と沙耶は、

1度だけ、あるきっかけで3Pをしてしまった事がある。


当時、高校1年といえば、何にでも興味があり、

特に男性やセックスへの意識は皆強かった。

噂話にも火がつき、女同士で・・・いわゆる下ネタで盛り上がる事もあった。

その程度なら、思春期真っ盛りの心理としては正常だろう。


しかし、梨絵と沙耶は噂に引かれて、知らぬ間に行動に出てしまったのだ。

そして、その噂はこんなものだった。

『T高校の嵯峨君のおチンチンは、すごく大きいらしい』


T高校の嵯峨と言えば、中学までは梨絵と同じ学校区で、

住む場所も、ワンブロックしか離れていない、近所の男の子だった。

確か、少し話をしたこともある・・・。顔ぐらいはお互いに知っていた。


その噂を、輪の中の友人が持ち出した時、沙耶は顔を赤くして、

「どの位大きいのかしら!噂は本当なの!!」と、おおはしゃぎしていた。

梨絵も、顔を知っている男の子のそれに少し興味を持った。

何しろ当時、『アレが大きい方が、セックスの時に気持ちいい』という話を

聞いてからは、1度はそんな気分を体験したいと思っていたからだ。



・・・・そして、きっかけは沙耶が梨絵の家に泊ると言い出した土曜の夜だった。


「ねぇ~梨絵~夜さぁ、2人だけじゃ、つまんなくない?」

「・・・・そぉ??疲れたからいいじゃない。寝ちゃえば?」


「!!何言ってるの!それじゃ私が泊りに来た意味が無いじゃない!」

「フフ・・まぁ・・ね。で、どうすればいいのかしら?もう9時になっちゃったけど。」


「う~ん・・そぉね。今から電車に乗ってサチやのんに来いって言えないし・・」

「それは、絶対無理でしょぉ~。」


「・・・うーんとっ。じゃぁねぇ~・・。」

沙耶はしばらく考えていたが、顔を上げた時少しニヤリとした表情で言った。

「ねぇ、男がいい!男を呼んで遊ばない?ねっ!どう?」

「!!!え~っっ??男って??一体、そんな誰がいるのよぉ~!?」

「だからぁ、梨絵の知ってる子でこの辺にいないの?今すぐ来れる範囲でさぁ。」


梨絵は考えた。夜に自宅に上がらせれる様な知り合いの男はいない。

それに、もし呼ぶとしても、その男の子の家に直接電話をしなくてはいけない。

それも嫌だった。今と違って携帯電話などまだ普及していなかったからだ。

でも、何かを期待している沙耶に対して簡単に「無理」とも言い難かった。


・・・・そうだ。噂の嵯峨はどうだろう・・・。


嵯峨の自宅はすぐそこだし、沙耶も話し相手としては満足しそうな相手だ。

別に、噂とは関係ないのだから、楽しくオールナイトでゲームや雑談で

盛り上がれれば、十分だ。それだけなら、嵯峨もいいと言うかも知れない。


「ねぇ、沙耶。こないだ噂になった、T高の嵯峨君・・どうかなぁ?」

「嵯峨君?!え?梨絵知り合いだったの?うそぉ~?」

「えぇ。でもね、本当に知り合いって程度よ。中学が一緒なの。家も近くだし・・・。」

「バッチリ・・!決まりじゃないっ!電話は私に任せてよ!」

「オッケー。じゃあ、番号調べるわ。」



トゥルルルルルルル・・・・・・・・・・・・・ガチャ「はい。嵯峨ですが。」





No/②・・・end To be continued →No/③




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