*こちらで書いているお話はフィクションです。
登場人物は実在の人物の名をお借りしていますが、
ストーリーは作者の創作によるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

25.




僕はユノの厚い胸に顔を埋めた。
恋愛経験のない僕なのに…
こういう時、思考回路は停止しているのに、
体は勝手に動くものだと初めて知った。
温かく、くすぐったい気持ち…
これが本物の「恋」という感情で、
愛されるという「喜び」なのだと。
誰かに甘えたことなんてないのに、
自然に、流れるようにユノの胸に縋っていた…


「チャンミン…って、呼んでいいかな?」


「ユノ…ごめん。僕、意地っ張りで…
ユノがやさしくしてくれてるのに…突き放したりして。
もちろん…好きな呼び方で…お願い…」


「チャンミン…好きだよ」


ユノの長い指が僕の顎を押し上げ、
僕たちは見つめ合った。
ユノの瞳は漆黒の宇宙の中に、
無数の星を散らしたように美しかった。
こんなに美しいユノの瞳に、
今頃気づくなんて…僕はいったい、何を見てきたのだろう。
ユノが長い睫毛を伏せ、甘い吐息とともに唇が降りてきた。


「ユノ…んっ…」


ユノにからめとられた僕の唇…
僕は生まれて初めて、愛の告白を受けた。
経験不足の僕は、ぎこちなく見えていないだろうか?
ユノは僕とキスしてうれしいと思ってくれているだろうか?
僕は…突き抜けるような衝撃の中で必死に耐えていた。
甘い…ユノのキスが…甘くて…
息をするのも忘れるほど…感じていた。


「チャンミン…」


気の遠くなるような長いキスのあと、
ようやく離れた僕たちは微笑み、また見つめ合った。


「ユ…ノ…」


「あっ、チャンミン!?」


僕は眩暈がしてずるずると床に崩れ落ちた。


「チャンミン!大丈夫か?!」


「はあ、はあ、はあ…僕…」


「まさか、息止めてたのか?!
何やってんだよ、もう!
ほら、深呼吸して…吸って…吐いて…
そう、ゆっくり…ゆっくり…」


僕は酸素不足で体に力が入らなかった。
だって…キスがこんなに…熱くて、甘いものだなんて…
息をするのも忘れるほど…
好いんだってことを初めて知ったのだから。


「だって、僕…キスなんて…
初めてみたいなものだから…
あ、そうだ…」


「うん?」


「キスするときはメガネを外そうと思ってたのに…」


ユノは目を丸くして、そして笑った。


「ふふっ。そういうとこ、チャンミンらしいな。
立てるか?」


「あ、なんだか…腰が抜けて…体に力が入らなくて」


「よし、じゃあ…」


ユノはひょいっと僕を横抱きにした。


「えっ、ちょっと…」


「いいから。ベッドルーム、こっち?」


ユノは僕を抱えてベッドにそっと寝かせた。
ユノを自分の部屋に入れる日が来るなんて、
思いもしなかったけれど…
ふだんからちゃんと掃除をしておいてよかった…なんて。
そんなこと考えている僕がいた。


「ありがと…」


「どういたしまして。
チャンミンは本当にウブなんだな。
キスぐらいで腰抜かすなんてさ。
ま、いいよ。そんなチャンミンだから、俺は好きなんだ」


「ユノ…」


「今日は俺の気持ち、伝えられて本当にうれしかった。
じゃあ…俺は帰るわ。あ、そのまま…起きなくていいから」


そう言って、ユノは黒い瞳を弓形にして微笑んだ。
僕はまた弱虫が発動して、ユノにかける言葉が見つからない。
背中を向け、部屋を出ようとするユノが


「あ、そうだ!これだけはちゃんと聞いておかないと」


ベッドに横たわる僕の顔を覗き込み、


「俺、チャンミンが好きだ。俺の恋人に…なってほしい」


潤んだユノの瞳、僕の答えは…決まってる。


「はい。こんな僕でよかったら…」


「うわぁっ!最高!!好きだよ!チャンミン!」


ユノが僕を抱きしめる。
僕は、ユノの背中に腕を回した。
そして…


「ユノ…帰らないで」


「え?」


「今夜は…僕と一緒にいて…?」


本能が僕を突き動かした。
生まれて28年、こんな言葉を囁く日がくるなんて。
ユノとの時間は、驚きの連続だ。
だけど、僕は…この驚きを心と体で楽しんでいた。
ユノを愛おしいと思う気持ちが…
僕の体の中で爆発寸前だった。


「チャンミン…」


「僕もユノが好きだ!
やっと…やっと、わかったんだ。
気がついたんだ。自分の気持ちに。
ヨヌにフラれたからとか、そんなんじゃなくて。
きっと…もっと前から…
でも、僕は素直じゃなくて、プライドばっかり高くて…
ユノはいつだってやさしくしてくれたのに。
僕は憎まれ口ばかり叩いて、冷たくした。
いつもそうなんだ…僕は本当に情けないヤツで…
後悔してばかりいて…
でも、もう後悔したくないと思った。
そう思わせてくれたのは…ユノなんだよ」


ユノの潤んだ瞳から、綺麗な涙が一筋流れた。


「あはっ…チャンミン…」


泣きながら微笑むユノに僕は手を伸ばした。
ベッドサイドに跪くと、ユノは僕の手を取って頬擦りした。


「うれしい…うれしいよ。チャンミン。
なんだか夢を見てるみたいだ。
でも…帰らないで、なんて…危険すぎるよ?」


「いいよ」


「一緒に寝ても?」


「うん、来て…」


僕はメガネをそっと外した。
初めて、僕は…心から素直になれた。

 

 

 

 

 

 

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