前回の「課長」との切なすぎる失恋。

大人の本気の恋に胸を痛めながらも、私のサバイバルは止まらない。

これまでの3人の男性との対戦を経て、私は一つの大切な「学び」を得ていた。

それは、**「お相手は結婚歴があって、できればお子さんを育てた経験のある人が良い」**ということ。

同じような経験をしてきた人間同士の方が、絶対に分かり合える。これは婚活において間違いない真理だ。

この学びを活かしてマッチングしたのが、4人目の男。

名前は「よしのり」(51歳)。アプリを始めて、初となる**【年上男性】**である。バツイチ、シングルファザーで、2人のお子さんと暮らしているとのことだった。

実は私、高校時代の淡いお付き合いから今に至るまで、年上の男性とは全く縁がなかった。

よく周りからは「姉御肌だから」「面倒見が良いから」と言われるが、早い話、ただの年下好きなのだと思う(笑)。

一概には言えないが、年上男性に上からものを言われたくないし、マウントもとられたくない。どちらかと言えば「私についてこい!」と言いたいタイプである。

それでも、よしのりさんのプロフィール写真は実年齢より若く見えて素敵だった。50歳超えの未知の領域ではあったが、まずはメッセージのやり取りを始めた。

すると、**「え、こんな偶然ある!?」**という驚きの事実が次々と発覚する。

まず、彼が高校生の息子さんを毎日車で学校まで送っているそうなのだが、その学校がなんと私の「最寄駅」だった。彼の家はそこからかなり遠いのだが、特殊なスポーツの部活がそこにしかなかったという。

さらに驚いたことに、彼の毎日の通勤ルートは、我が家の目の前を通過する道だというのだ。

「もしかしたら、今まで知らずにすれ違っていたかもしれないね」

そんな奇跡のような偶然が重なり、私は彼に不思議な「縁」を感じずにはいられなかった。

彼はアプリを始めたばかりで、私が「初めて実際に会う相手」。お会いする約束をする頃には、彼はすっかりその気(両思いモード)になっていた。


初回の待ち合わせ場所は、新横浜のカフェだった。

当日、私は時間がギリギリになってしまい、早めに着いた彼がお店の列に並んで待っていてくれた。

土日のカフェはかなりの大混雑。パッと見では彼がどこにいるか分からない。

「どんな服装ですか?」とLINEをすると、彼から「ネイビーのポロシャツにデニムです」と返信が来た。

上下ネイビー……。

見渡すと、該当者が1人だけいる。

しかし、あの人は私の思い描いている素敵なよしのりさんじゃない。写真とは全然違う、51年分を重ねた「ザ・おっさん」がそこに立っていた。

マジかよ……。

一瞬フリーズしたが、前回の「50分の奇跡」が脳裏をよぎる。どのみちもう逃げられないし、とりあえずランチだけは食べようと腹をくくって彼に声をかけた。

そして、一緒に並んでいる間、私の目は彼の服装に釘付けになる。

元アパレル店員の私にとって、彼のファッションは地獄そのものだった。

紺のデニムのバックポケットは、なぜか**「赤いバンダナ柄」の生地で切り替えられている。

ノーブランドの白いスニーカーには、これまた主張の激しい「赤いライン」。

極めつけは、私の大好物であるはずのメガネ。お洒落メガネとは程遠い黒縁なのだが、なぜか柄(テンプル)の部分だけが「ブルー」**で切り替えられている。

私が「そのメガネ……」と視線を送ると、彼は「これ、軽いんだよ!」と、いらない情報を教えてくれた。

ダサい人の「無意味な差し色」は見るに耐えなかった。


席につき、会話自体はそれなりに弾んで無言になることはなかった。

「よしのりさんって呼びづらいので、何かニックネームはありますか?」と聞くと、彼は嬉しそうに言った。

「よっぴ、と呼ばれています」

51歳のオッサンがよっぴ……

どこまでもセンスがない。


アプリの話になると、「自分は一発目で〇〇さんに出会えた。アプリなんて半信半疑だったけど、本当に出会えるんだね!」と、あたかも両思いが確定したかのような体で話を進めてくる。その上、彼が元奥さんの話をするときに、感情をむき出しにする表情や口調がとても嫌だった。


2時間ほど過ごし、「さぁ帰ろう」とお店を出たときのこと。

「車なので送ります」と言う彼に、「初めてお会いした方の車には乗りません」とキッパリお断りして背を向けようとすると、彼が真面目な顔で言った。

「会えて良かったです。でも、もし『違うな』とか思ったら、ハッキリ言ってくださいね」


(違います!!!!!!)

言えるものなら今すぐ叫びたかった。だが、期待に満ち溢れたその顔を見たら、どうしても言えなかった。

帰宅後、私は友人たちにソッコーで相談した。彼の「ダサさ」について。

しかし、誰に相談をしても、

「えー!家を毎日通過するとか、そんな偶然ある!?それは運命じゃない⁈」の話のインパクトが強すぎて、服のダサさがかき消された。

「服なんて後から変えられるって!自分好みにプロデュースしたら良いんだから」というアドバイスで終わってしまった。

(いや、51年間ダサく生きてきた人間が、今さら変わるわけない……)

そう思いつつも、「せっかくの貴重な出会いだし、大事にした方がいいよね」と周りの勧めに流され、2回目のデートで彼と一緒に服を買いに行くことにした。私はただ、安物でも何でもシンプルなモノトーンの服を着て欲しかった。

ところが、デート2回目。まだ彼の行動パターンが読めない私は

広い店内で、一瞬彼を見失ってしまった。

あ、いた!と思って駆け寄ると、彼の腕にはすでに「お買い上げの商品袋」が。

え…なぜ勝手に?

ただダサい服の在庫が増えただけとなった。何のための買い物同行だったのか。

それでも「運命の糸」を信じようと、3回目はみなとみらいでデートをし、4回目には彼の車で動物園にも行った。

しかし、4回デートを重ねて、私はようやく決定的な事実に気がついた。

「あ、これは何回会っても、私はこの人に恋に落ちることは絶対にない…」

4回目の帰り際に

「次回は〇〇さんのお誕生日をお祝いしませんか?」と彼からお誘いがあった。私は「はい、是非是非…」と過去最低のテンションで返答した。

そこから、それまでルーティンになっていた「毎朝のLINE」に、どうしても返信することができなくなってしまった。彼もこちらの空気を察してくれたのか、幸いにも追いLINEはなかった。こうして、私たちの「運命(勘違い)の糸」は静かにフェードアウトしていったのである。

偶然が重なっても、ダサさと元嫁への怒りは打ち消せない。

そんな私の4人目の対戦だった。


次回、5人目の男。ピーターパンは鰻の夢を見るか?編へ続く)