ジムバッグが壊れてしまった。
どう壊れたかというと、バッグが閉まらないのである。
こういうとチャックが壊れたのかと思われるかもしれない。
しかしチャックは健在で、しっかりと噛み合わさって己の任務を全うしている。うむ、えらいぞ。
ところが、バッグは閉まらないのである。
どういうことかと言うと、チャックとカバン生地との境がビリビリに裂けてしまったのだ。
つまり、チャックが閉じたその後ろでガバッ!と口が大きく空いている、そんな状態なのだ。
応急処置として、安全ピンでとめてパンクな様相にしたり(ピンの数が多い上に開けるときにすべて取り外さなくてはならず不便)、洗濯バサミでとめてみたりしたのだが(少しの衝撃で洗濯バサミが跳ね飛び不便)どうもうまくいかない。
これは新調するしかないかなぁ…と思っていたところに、どこからどう転がりこんできたのか「自分で直す」という考えがやってきた。
ん、ひとつやってみようか、と素材屋へ行けば「補修テープ」という便利なものがあるではないか。
なんでも、補修したいところにテープをあてて、アイロンをジュッとかけるとピタッと貼りつくという話。
うむ、便利。良いではないか、良いではないか。
まっこと便利。余はこれを買おうかな、買いたいな。
と思うも束の間。
アイロンを持っていないのである。
それに、生地と生地を繋ぎたいのであって、穴を塞ぎたいのではない。
補修テープは今回のケースには不向きであった。
弱ったな、新しい鞄を買うのは面倒臭いよ、と素材屋をウロつくと目に入ったのはデニム素材の端切れ。
これも何かの導きか、自分のクローゼットの奥に眠る過去の遺物の記憶が閃光の如くきらめいたのである。
それは一本のジーンズであった。
このジーンズ、あろうことか臀部にダメージがついてしまい、二度と着ることがなくなってしまった。
気に入っていただけに捨てるに捨てられず、そのうちブックカバーにでもしようかな、と幾星霜もの間忘れ去られていたのである。
これだ。チャックとカバン生地との間を布で継ぐんだ。
それしかない。
私の可哀想なリーバイスよ、継布として生まれ変わってくれ。
君はこの日がくるのを、クローゼットの中でずっと待ち続けていたんだね。
時は来た、さらばだ、私のリーバイス!
と、思い切ってジーンズを切る。
長さも図らず、ん、これくらいね、と布を当てながら見当をつける。
アイロンはないから、折り目は竹の定規でしごく。
ミシンなどという贅沢な代物はもちろんない。
当然手縫いだ。
チクチクと縫い付ける。
最後の方になってくると面倒臭くなってくる。
やっぱり買ったほうが手間かからなかったなぁ、などと呟きながら、切れ端を無理矢理に折り込んで、無理矢理に縫い付ける。
売るもんじゃないんだからどうだっていいや、と投げやりになった頃が2時間半。
ようやく完了した。
チャックとカバン生地の境にはデニム生地のラインがひとつ。
これはどうも貧乏臭いね、と頭をかきつつも、自分で縫ったからかその貧乏くささが愛おしい。
黒い縫取り糸の拙いのが不恰好で、貧乏くささによりをかけている。
これがなんだか味があっていいよねぇ、とシミジミ思ってしまうから不思議だ。
もう少し貧乏くささ付け足そう、と、巣鴨土産にもらった「すがもんのオシリ」ピンをつけてみる。
ぐっと味がでる。
何よりもこのデニム生地、オシリがいけないことになっていたのだから、取り付けるのにぴったりのピンではないか。
うむ、良いぞ良いぞ。
これでしばらくは安泰ではないか!
と、ルンルンでジム通いを数日したのち、私は発見したのだった。
そう、そこには、新たな穴、があったのだ。
To be continued....