過去の亡霊は、
単に、メシアのフリをしているだけだった。
希望の足音を鳴らしてそっと近づき、
疑う事がないまま、瞬く間に取り込まれた。
亡霊の、思うがまま。
岐路に立っている私を、試すかのように
亡霊は亡霊の姿のままで
すぐ側に佇んでいる。
未来へ進んで、咲き乱れるのか。
過去に引き戻され、朽ち果ててるのか。
黒いプレゼントを抱えて
過去の亡霊は、側にいる。
それは、メシアに姿を変えてやってきたのだと
疑う事もなく、そう思って取り出した
あの頃の記憶。
それは、色のない華のままなのか。
メシアに変わったと思っていたそれは、
虚像でしかないのか。
永遠に枯れない愛は、虚飾でしかないのか。
亡霊は亡霊でしかなく、未来へ向いていたはずの
意識のパイプは、今、絶たれている。
取り出してしまった過去の亡霊は
息を潜めていた輪郭を、また浮き彫らせている。
畳み掛けるように囁き、黒いプレゼントを開けようとする。
今さら、何になる。
切り取られた四角の中を、彷徨い続けるのか。
すがりつくお前の手を、握ってくれるのか。
その柔らかさは、紛い物ではないのか。
すがって、何になる。
過去の中に、救いなどない。
それはお前を切り刻むだけだ。
色褪せた瞳にいくら映し出そうとも
澄んだ瞳は、もうお前を捉えない。
そいつはお前を、抱いてはくれない。
お前の人生に、救いなどは存在しない。
地獄の中を、流されて彷徨え。
塞がらない傷痕と共に、月もない漆黒の明日を
赤い靴をはいたままで踊り狂え。
色のないままで死ね。
これは、枯れない愛を慈しむ為の
過去の清算なのか。
過去に取り込まれ、導かれる声に流されるまま
また繰り返す無限のループなのか。
亡霊は、
死神なのか、メシアなのか。
希望と安息は、比例するのか。
空へ、手を伸ばす事はできるのか。
切り取られた四角の中から
自由というカゴの中へ進み
あなたの空へ、辿り着く事はできるのか。
四角の中は、希望なのか。
枯れない愛を、守り抜く事はできるのか。
あなたの側で生きる事は
紫の香り立つ、幸福なのか。
決意の
左耳のピアスでさえ、
意味がないように思える。
岐路の中で佇む私は、どこへ流されるのか。
ピリオドの先は、メシアなのか、メビウスなのか。