ここからは、2004年に発行された
hideの弟でパーソナルマネージャーだった松本裕士さんの著者
兄弟 追憶のhide を所々引用していきます。
そして、
これから書く事は、全て いち個人としての
推察や見解によるものです。
「感性」を仕事にしている人達は
常に様々なアンテナを張っていなければならない。
それを、枯渇させるわけにはいかないからだ。
その精神力を維持する為には、どれだけの努力と苦労が必要だろうか。
hideは お酒が大好きだった。
D.O.D ( DRINK OR DIE ) 飲むか、死ぬか
こんな曲まで作ってしまった。それほど、お酒は大好き。
しかしこれが、最後には決定的な毒となる。
本来の彼は、純粋で、繊細で、優しい人間なのだ。
だから逆に、お酒に飲まれてしまう事も多々あったのかと思う。
感性を仕事にしている人間だから、酒席での交流も必要だっただろう。お酒が入らないと、見えてこない本音だってあっただろう。どこに感性を刺激するピースが転がっているか、分からないのだ。
2004年に、hideのパーソナルマネージャーをしていた弟の裕士さんが出版した著者「兄弟 追憶のhide 」
には、こんな記述がある。
この人は“酒豪“と噂されながらも、実はお酒に決して強くはないのだ。しかしそんな事実を、人前では表に出さないと決めているに違いない。
さらに寂しがり屋の性格が絡んで、いつも自分から「帰る」とは言い出せないのだろう。そうこうしているうちに、元来のお人よしな部分も手伝って、酩酊状態から戻れなくなってしまうのだ。
それにしてもだ、何が悲しくてそんなにお酒を飲むのか、何が嬉しくてそんなに飲むのか。何が原因でそんなに飲んでそんなに暴れるのか。6年ぶりにアニキの生活を目の当たりにした僕には、不思議でならなかった。
モノを作る人が妥協なく生きるということが、どれくらい大変なことか。また、自分の情熱を維持しながら表現し続けることが、どれほどパワーがいることなのか。当時の僕には、まだ想像もつかなかった。
お酒とhideの関係性は、まさにこれだと、私は思う。
人柄。故の、酩酊と、感受性の塊。故の、暴走。
もちろん、お酒が大好きなのは本当だろう。
自分を表現し続ける為のピース探し以外にも、
楽しい事が大好きな彼は、仲間とワイワイ楽しくはしゃげる時間が何より好きで、必要だったはずだ。
でも、活動を続ける中で、ロックを通して自分を表現する中で、
人には決して見せない様々な葛藤や苦しみが彼の中にあったであろう事は、想像がつく。
でもそれを、決して表には出さなかっただろう。
どんなに気心知れた近しい人に対してでも、
彼ならば、人前ではhideのままであり続けたはずだ。
Spred Beaver のメンバーであるCHIROLYNが
こんな事を語っている。
hideちゃんも人付き合いが得意な方ではないから
ある程度、距離感をもって接しなければいけなかった。
例え近づいたとしても、彼のワールドは広すぎて
分からない。
同じく、I.N.A.も こんな事を言っている。
音楽に関しては色々分かち合ってやってきたけど、
人としてはそこまで僕自身も彼の事を分かってあげれてなかったのかな、という気がする。考えれば考えるほど、そう感じる。
ずば抜けた感性と先見性を持ち、革新的な事ばかり
思いつく彼の世界。人間的な弱い部分は、
絶対他人に見せなかった。
だからhideは 、周りに対しても、「hide」の姿しか見せない。
決して、素の部分は見せないのだ。
hideがhideであり続けるには、きっと、大きな孤独があっただろう。
お酒に頼っていた。というわけではないのかも知れないが、心に抱えている、そういう孤独や葛藤を
大好きなお酒で紛らわしている部分もあったのではないかと思う。素を見せられない彼は、仲間と楽しく飲んで、それらを打ち消そうとしていた部分もあったのではないだろうか。
二面性という点で、秀人とhideのバランスが崩れる事もあっただろう。
光と影。という表現は、あまりに陳腐すぎるだろうか。
光を放ち、輝き続けるのは
秀人が作り上げた「hide」であって、
hideを維持する為に、苦しみや葛藤を抱えるのは
「秀人」なのだ。
本来の性格は秀人の部分、姿形の物体として存在しているのはhideの部分。
だからといって、hideに裏表があったかといえば
そうではない。
人と接する時、交流する時の彼は、純粋で繊細で優しい、秀人の部分だからだ。
hideはよく、酔って暴れた。
感受性の塊であるその心の中には、常に怪獣が潜んでいて、酔い始めて何かスイッチが入ってしまうと
その怪獣が現れて、暴れだす。やり場のない、彼の中にある様々な想いが、あるスイッチによって怪獣を通して吐き出される。そうなれば、もう誰も手に追えない。それは、怒りや悲しみの場面に限らず、楽しい中でも起こる。
暴走エピソードは、hideの口からも語られているし、
音楽仲間からも、多数語られている。
全て笑い話で語られているが、客観的に見れば、
危うい一面が、常にあったのだ。情緒不安定…という言葉は違うが、酔って暴れれば、何が起きるか分からない。彼の性格上、人にケガを負わせるなんて事はなかったが、X がラストライブを行なう1ヶ月前の、
97年11月には、足のかかとを骨折している。酔って、車のボンネットから地面に着地した結果の骨折。
その前は、頭蓋骨の骨折もある。
私は、お酒が飲めないから分からない。
もちろん、hideの周りの人達を責める訳でもない。
責める気持ちだってない。
ただ、お酒が飲めない立場で綴るが、なんていうか…
酔って暴れる、暴走する一面を、hide本人はもちろん
周囲も、危ういと感じる事はなかったのだろうか。
一番多かったのは、物を破壊する行為だろうか。インディーズの頃? X 時代には、物や壁を壊される為、出禁になるホテルなどもあったという。
HIDEとYOSHIKIとTAIJIには、別途 「破壊費」が請求されていた…と、ラジオでhideは語っていた。
暴れる事は多々あっても、結局それまではhideの身に致命的な何かが起こる…とまではいかなかったから、誰もそんな考えにはならなかったのだろうか。
もしくは、薄々感じていても
hideの生活にお酒が必要な事実は変えようがないから、
本人も周りも、心のままに、いつも同じく、
好きなように皆で飲む。その日常を、変える事は出来なかった。という事だろうか。
お酒が致命的な毒になった事は、結果論。
だから私は、こんな風に考えてしまった訳で…
誰も、こうなるとは、思ってなかった。
だから…だから……hideの酒癖を憂いても仕方がない。
こうなる前に…なんて考えるのも、起きてしまってからでは無意味なだけだ。
hideはもう、戻ってこない。hideが亡くなってから
時が止まってしまっている私は、あれがまだ間もない事のように書いているが、戻ってこないどころか、
もうあれから、27年も経ってしまった。
こよなく愛したお酒によって命を奪われたのなら
それは、本望だったでしょうか…?
そんな事を、私は、幾度となく、考えている。
でも、私の中で辿りつく答えは、
もしそうだったとしても、それは、もっとずっと先だったはずでしょ?あの時では、なかったはずでしょ?もっとずっと…生きて、おじいちゃんになってからの話だったはずでしょ…?
あの日の事は、兄弟 では こう記されている。
この夜は楽しい話ばかりだったと思う。新曲2曲の発表を控えていたし、ツアー・スケジュールも具体的に決まりつつあった。メンバーたちはこの日も、中学校の昼休み時間のような騒々しさで、飲み明かした。
気がかりなのは、それから後の事だ。
帰り際、店まで迎えに行くと、外階段でhideさんとメンバーが言い争いをしていた。まあしかし、ここまでの話ならよくあることだ。酒の上での喧嘩沙汰は、もちろん数えあげたらキリがない。
この文章のあと、この時ばかりはhideがいつもと勝手が違った事、hideと裕士さんの最後になってしまったやりとりの様子が記されている。
あの時何があったのかーー
それは、永遠に、表に出る事はないのだろう。
メンバーと飲んでいた。全員いたのかは分からないが、関係者等もいたかも知れない。
そして最後、ケンカになった。
事実は、この2つだ。
だから、あの事が起こる直前のhideの様子は
少なくとも数人は目にしているはずだ。
でも、当事者達も酔っていて、誰も覚えていないのか。
あるいは、公にするには不都合な真実があるのかも知れない。
最も濃厚なのは、いつものように酔ってケンカになっただけ。いつもの事ーー。
だから、この後あんな事が起こるとは、誰も思わなかったーーー
でも、それは起きてしまった…
最悪な結果として。
端から見れば、いつものケンカ。見慣れた光景。
しかしあの時、hideの中では決定的に何かが違ったのだ。
いつもとは、違う想い。違う感情。
あの時、何にそんなに怒りを覚えて
何がそんなに悲しかったの………?
……ねぇ、…hideちゃん………
それは、永遠に、誰も知る事が、出来ない。
hideは
全く、なんの前触れもなく、
あまりにも突然に、逝ってしまった。
彼の最期の瞬間を、誰も知らない。
近しい人達が口を揃えて、事故だったというのだからきっとそうだろう。みんなそう思っているし、そう信じたい。でも、あえて言えば、真実は、永遠に分からない。
テレビで何度か見た事がある、臨死体験者の話。
気がつくと意識はあって、幽体離脱したような状態で横たわっている自分の肉体を天井あたりから俯瞰して見ているのだとか。
もし、こういう事があの時のhideに起こったとしたら……
hideは自分の肉体に戻ろうとしたのかな。
戻ろうとしたけど、戻れなかったのかな……
それとも、自分はロックミュージシャンだから
こんなハチャメチャな最期もいいかもしれない。
なんて、思ったりしたのかな…。
全てはファンの為に、全身全霊を注いで音楽シーンを駆け抜けてきた。
だから、そんなhideが生きる事を放棄するわけがない。懸命に生きている真由子ちゃんを置いて、こんな最期もいいかも知れない。なんて、思うはずがない。
だけど。それでも。
ファンが悲しむ事は、耐えられなかったはずのhideだけど、人間なんて、矛盾しているもの。
肉体はひとつでも、様々な感情を持っているわけだから、矛盾している感情も、あって当たり前。
あれが事故でも、万が一、そうでなくても。
何か抗えない負の効力があの時働いて、死に神が彼の前に現れてしまった。それが、現実ーー
hideの死は、私の人生を変えてしまったと思う。
あれから27年。実に、四半世紀…
私の時間は、止まったままだった。どうして消えてしまったのか、hideがいない世界を生き続ける事は、
生き地獄だった。
あの日の真実。知りたくても、永遠に知る事が出来ない。だから、代わりにただ想うのは、願うのは、
泥酔状態だったならば…そんなに苦しまずに、眠るように、眠ったまま、逝ったよね…? 直前の怒りも悲しみも、全て置いて逝ったよね…? という事。
生涯、少年の心を持ち続け、ただ純粋無垢に生きた
可愛くて、かっこよくて、素敵な、
ピンク髪の華奢な怪獣を、
私は今でも愛し続けている。
今でも、こんなに恋しくて……愛おしい。
封印しても、hideはずっと、私の心の中にいた。
けれど、私の命そのものだった事に気づくまで、
27年もかかってしまった。
溢れ出すhideへの想いは、無数にある。
山ほどある。だからしばらくは、この想いを綴っていくだろう。
……彼は、花火のような人だった。
勢いよく、力強く、夜空を、綺麗に明るく照らす。
儚く、美しさを残しながら、散っていく。
そして、短い活動期間の中
一瞬の儚さでも、それが色褪せる事はない。
hideを想う人々によって、何度でも打ち上げられる。
音楽という形のない空を、ただ真っ直ぐに突き進み
様々な色鮮やかな大輪の花を咲かせた。
彼の発信したひとつひとつは、強烈な光を放ち
表現した全てのものが、美しく、眩しく、大空に輝いた。
L.Aで撮った、ピンクスパイダーと ever free の PV。
そして、最後の…ロケットパンチの収録。
数々の大輪の花を咲かせたあなたが
最後に打ち上げた、この花火の後。
見降ろした場所は、どんな景色だったのでしょう。
見降ろしたそこは、あたたかいところでしたか?
そして、最期の瞬間…
もしも、あなたのその、澄みきった優しい瞳から
涙が零れたのならば
あなたを想うみんなで、君の涙を食べちゃうから。
だから、だいじょうぶだよ。
……あの頃、そう伝えられれば良かったな…
あなたに降りそそぐ悲しみを、みんなの腕の中でだきしめるよ。
桃色の雲に憧れて、空へ飛び立ったのでしょう。
雲へ辿りついたあなたは、空になれましたか…?
優しく雨は 君をつつみあげ
やがて 空へ昇り
雪色の雲 桜色に染め
君は 流されゆく
終わり無き 空の下で
自由という カゴの中で
最期の最期に あなたは、
やっぱり…「優しさ」を残して旅立った。
こんなあなたと、もう二度と、離れられる、訳がない。
あれから27年が経とうとした、今年の冬。
私は、忘れる事が出来なかったあなたと、
もう一度出逢い直した。
27年。あなたが生きた年齢を、ちょうど10歳、上回った。長かった、27年。
でも、昨日の事のように思い出される、あの日ーー
もう、絶対に離れないし、離さないよ。
私の心の中で、生き続けていてくれて、ありがとう。
私の命そのものである、hideちゃんーー
ありきたりな言葉だけど、
これからもずっと、愛してるよ。
書いたものを読み返してみると、
客観的視点部分はほぼ皆無になってしまい
ただの、hide語り。タイトル詐偽みたいになってしまいました。が、このまま上げます。
何者でもない、ちっぽけな、ただの、
東北の田舎者ーー
ただ単に、狂おしいほど強烈に、hideを愛している
紫愛 (しあ) の、投稿。
Emotion Inmotion
時は流れても
Emotion Inmotion
変わらない想いを
Emotion Inmotion
胸に刻みつけて
踏み出そう
わずかな光の中
2025.05.02