約束のクローバー 3rd -5ページ目

約束のクローバー 3rd

あれから一年・・・
物語はまだまだ続く。

 

 

そして当日。

ついにこの日を迎えていた。

空は青く、太陽も照っている。

とてもいい天気だ。

 

僕達は、その建物内へと入り客席へと案内される。

各自座ってステージ中央を見ていた。

これから数時間後、あの場所に僕達は立つ。

 

 

 雪村 「しかし、、すごい空間だな。」

 大門 「あぁ。

     俺達、あの場所に立つんだよな。」

 雪村 「あぁ、、、。」

 

 

雪村と大門は圧倒されている様子だ。

確かに、この空間はバンドマンなら憧れる場所だから

その気持ちが湧くのも分かる気がする。

 

 

  「聡君。」

 

 

呼ばれた僕が振り返る。

そこに居たのは、

 

 

 聡   「八神先生。」

 

 

だった。

 

 

 八神 「久しぶりね。

     元気にしていた?」

 

 

僕とは離れて座っている雪村達。

この空間に感動しつつ、圧倒さたりしてるから

八神先生が来て話しかけているなんて事に気づくはずもない。

 

 

 聡   「はい。」

 八神 「それなら良かった。

     随分と会えていないから心配はしていた。

     色々あったのも知っているし。

     瑞希との事も何となく分かってしまったから……」

 聡   「そうでしたか。」

 八神 「香坂と親子になったって聞いた時は本当に驚いたけれど。

     でも二人の事を思ったらそれはとても素敵な事だよね。」

 聡   「八神先生はどうですか?

     真瀬先輩と結婚されたんですよね。」

 八神 「そうよ。

     と言っても何も変わらない。

     まだ何も実感ないし。

     この撮影終わったら一緒に過ごす時間が増えると思う。」

 聡   「幸せですね、八神先生。」

 八神 「ええ、幸せよ。」

 

 

クスッと笑う。

 

 

 八神 「いよいよ本番なのね。」

 聡   「はい。」

 八神 「ほんの少し前にバックバンドの演奏者が明かされて

     それは驚いたんだから。

     聡君の名前あるんだもの。」

 聡   「ずっと伏せられていましたから。」

 八神 「他のキャストなんて

     なも知らないバンドが演奏?ってだけでパニックよ。」

 聡   「そうですよね、、そうなりますよね・・・。」

 八神 「私の撮影は一旦終了したから

     もしかして、聡君に会えるかなって思って来て見たら会えた。

     嬉しかったよ。」

 聡   「僕も嬉しかったです。

     まさか八神先生が声をかけてくれると思っていなかったので。」

 八神 「向こうで、香坂の姿も見かけたなぁ。」

 聡   「母さんは、救護班の関係で来ているんです。

     BDSHがそれを担っているらしくて。」

 八神 「そうなんだ。

     へぇ〜、香坂が“母さん”ねぇ〜。」

 聡   「すいません、、つい・・・。」

 八神 「気にしないで。

     私はそう言う面を見れて嬉しいから。」

 聡   「初めは照れていたんですが・・

     今は何ともなく普通に呼べるようになりました。」

 八神 「そっか。

     聡君も幸せなんだね。」

 

 

場内アナウンスが鳴り響く。

 

 

 聡   「リハーサルみたいです。」

 八神 「うん、行っておいで。」

 聡   「はい。」

 

 

スッと立ち上がり頭を下げてその場を立ち去る。

僕達のリハーサルの案内が鳴り響いた事で

その光景を見ようと他の映画関係者が続々と客席に座っていた。

 

舞台裏に揃った僕達。

 

 

 雪村 「まじかーーー、、さっき海堂麻里奈がいたー。

     まじで可愛い!!

     はあ、、、緊張する・・・」

 

 

雪村が一人で騒いでいる。

そこに茜さんがやって来た。

 

 

 棚鰭 「本番でもないのに緊張してどうするんですか。」

 雪村 「だって、茜さん・・・凄い人ばかりですよ。」

 棚鰭 「これからあの会場が埋まるんです。

     今の段階で緊張しても意味ないでしょう。」

 雪村 「そうは言っても・・・・。」

 棚鰭 「今晩は好きな物を作りますから。」

 雪村 「えっ!?本当に?!」

 棚鰭 「はい。

     ですから頑張って下さい。

     私も応援しています。」

 雪村 「茜さん!」

 

 

何だかんだ言いつつも素敵なカップルなんだよね。

大門の方は・・・

 

 

 弥生 「大門君。」

 大門 「弥生さん、お疲れ様です。」

 弥生 「今は任務じゃないから畏まらなくて良いから。」

 大門 「すいません、癖で。

     それより、弥生さん・・こんな所に来て大丈夫なんですか?

     会場周りの事で忙しいはずじゃ。」

 弥生 「部下の激励に来てはいけない?」

 大門 「いや、、そんな事は。」

 弥生 「今来ないと多分来れないから。

     大門君の勇姿は見届けたいから。」

 大門 「弥生さん、、嬉しいです。

     ありがとうございます。」

 弥生 「頑張りなさい。」

 大門 「はい!」

 

 

上司である弥生さんに激励され一層気合が入っている様子だ。

この二人も中々いい関係だったりするんだよね。

その隣では芦川姉妹が・・

 

 

 遥   「姉さん、頑張って。」

 芦川 「うん。」

 遥   「はい、これ。

     勇気のおまじない。」

 芦川 「オレンジジュース。」

 遥   「姉さんはこれ飲まないと何も始んないもんね。」

 芦川 「遥、覚えていてくれたの?」

 遥   「もちろん!

     だって私は、姉さんのファンだから。

     この思いはどこの誰にも負けないよ。」

 芦川 「ありがとう、遥。」

 

 

ほのぼのとした会話をしている。

みんながみんな勇気をもらっていた。

何気ない会話でも緊張が解れるから

そんな会話が何よりも嬉しかったりもする。

 

 

    「サト。」

 

 

 

僕を呼ぶ声。

その先には母の姿が。

 

 

 七海 「様子を見に来たわ。

     皆、リラックスしているのね。

     意外ね。」

 聡   「さっきまで緊張している空気だった。

     でも、応援してくれる人が来てくれたら

     空気が変わったんだ。」

 七海 「そう。」

 聡   「僕だって同じだよ。

     母さんの顔が見れて内心とてもホッとしてる。」

 七海 「私で良いのかしらね?

     そこはあえて聖じゃなくて?」

 

 

なんて、、意地悪な返しをしてくる母だったけれど、

 

 

 七海 「体は大丈夫?」

 

 

やはり心配は消えないらしい。

 

 

 聡   「うん、大丈夫。」

 七海 「無理は駄目よ。」

 聡   「分かってる。」

 七海 「とにかく今日を乗り切るのよ。

     サトは頑張ったのだから。」

 聡  「母さん・・・」

 七海 「母さんはサトの気持ちは分かっているつもりよ。

     何を思って何を考えて、そしてどうしたいのか・・を。」

 

 

その眼差しは全てを物語ってる。

僕の心は全部お見通しだ。

 

 

 聡   「ありがとう、母さん。

     僕は大丈夫。」

 七海 「そう。

     それなら、母さんはサトを信じるわ。」

 

 

真っ直ぐに僕を見つめて母はそう言った。

それぞれがそれぞれに緊張を解している中で少し離れた所にいるあの人はと言うと。