約束のクローバー 3rd -2ページ目

約束のクローバー 3rd

あれから一年・・・
物語はまだまだ続く。

 

 

リハーサルは滞りなく終了し

いよいよ本番間近となっている。

観客も入場し始め熱気と程よい緊張感が

この場を包でいる。

 

あの人の歌声はリハーサルですら伏せられ

ここの関係者全員がその瞬間に歌声を聴く事になる。

その驚きの様子とか、動揺を撮る為は絶好のチャンスだと思う。

ライブ専用の収録スタッフが配属されどんな角度からも収録を行えるように

カメラの数は相当なもので、音響器具も最高のものを装備していた。

 

当然、僕達の衣装にもそれなりのものが使われている。

新調された衣装は言葉には言い表すのが難しいくらいに高級感がで

着心地もとても良いのもだ。

各メンバーが支度をしている中、僕は少しだけその部屋から出てきていた。

 

 

 聡   「はぁ、、、、、」

 

 

緊張もしている。

上手くいくかも分からない。

でもメンバーとなら乗り越えられそうな気がする。

そう思ったとしてもやはり体言う事は効かない。

何とかしてこの時を乗り越えないと。

 

 

    「聡君。」

 

 

その声にハッとして顔を上げた僕の視界には、

 

 

 聡   「聖さん、、、」

 

 

彼女の姿があった。

”医療班”と言う腕章をしているだけで

割とカジュアルな格好をしている。

 

 

 柊   「良かった、会えた。」

 

 

ホッとした様子の表情を見せて僕の隣に座る。

 

 

 柊   「医療班の打ち合わせとか最終段階の確認があってさ

     リハーサルには行けなくて

     会えないかな、、と思っていたんだけれど

     良かった、顔が見れて。

     七海とは会えた?」

 聡   「リハーサルの前に裏側で。」

 柊   「そっか。」

 

 

と、何気ない気我が続くも

彼女の顔を見て気持ちが途切れてしまった僕は 

彼女の肩にコツンと頭を乗せた。

 

 

 柊   「聡君、どうしたの?

     大丈夫?」

 聡   「大丈夫・・・」 

 柊   「体、辛い?お水いる?」

 聡   「直ぐに治まるから・・

     ちょっとだけ、、このままで・・。」

 柊   「私は平気だから。。

     まだ時間はあるから

     大丈夫。ゆっくりと落ち着こう。」

 聡   「ありがとう・・・。」

 柊   「絶対に辛い筈なのに・・・

     本当にここまで良く乗り越えて来たよ。

     いよいよだね、いよいよ。」

 聡   「聖さん・・。」

 柊   「これが終わったら、ゆっくりしようね。

     何処か静かな所に行ったり

     のんびりと過ごせる時間作ろ。」

 聡   「・・・・うん。」   

 

 

そんな時間が少し経ち、落ち着いた僕はそろそろ

控室へと戻らなければならない。 

ネクタイを結んで戻らないとな。

 

 

 柊   「私が結んであげる。

     と言うか、私にやらせて。」

 

 

僕の手からネクタイを撮り

彼女が手際よく結び始める。

 

 

 柊   「いつもは赤なのに、

     今回は青なんだね。」

 聡   「この日の為の新衣装で

     ネクタイはメンバーごとに違うみたい。」

 柊   「へぇ、そうなんだね。

     ・・・と。よしOK。」

 聡   「ありがとう。」

 

 

目と目が合って互いに微笑み

そっと抱き合う。

 

 

 聡  「行ってくるね。」

 柊   「気を付けて。

     聡君の雄姿、しっかり見届けるから。

     絶対に成功する、大丈夫。」 

 聡   「ありがとう。聖さん。」

 

 

僕はその場を後にする。

 

 

 聡   「いよいよ本番。」

 

 

スッと気持ちを入れ替えて控室へと向かった。

 

 

 

 

リハーサルを終えて支度を整える私達。

着替えを終えた私達女性陣は控室へと戻る。

そこには先に支度を終えた男性陣達がいて

他のスタッフ、映画の出演者、監督

医療関係者、などなどの大勢の人で賑わっていたの。

その視線が一斉に私達に注がれる。

 

 

 月村 「みんな瑞希に惚れ惚れしてるよ。」

 瑞希 「そんな訳ないでしょ。」

 月村 「いや~あると思うよ。

     瑞希はもともと身長あるでしょ。

     そこにきて。

     細身のブラックスーツに白ワイシャツ。

     赤いネクタイに厚底の靴。

     そしてチェスターコートのジャケットを翻しちゃったらさ

     何処かの劇団からスカウト来ちゃうって。

     モデルだって行けそうな気がするよ。」

 

 

隣で光は一人盛り上がっているけれど・・・

そんな私達の所に映画のキャスト陣が歩み寄ってくる。

 

 

 八神 「いや~、こんなにも素敵な人が現れるとはね~。

     瑞希、カッコよすぎ。

     ね?麻里奈。そう思わない?」

 海堂 「はい、とても素敵です。」

 瑞希 「そんな事・・・。」

 八神 「今度はモデル業界からも声がかかるんじゃない?

     こんな姿で出ちゃったら放っておかないって。」 

 瑞希 「そんな大げさな・・・・。」 

 野華 「大袈裟なことないわよ。

     本当に素敵だわ。

     ね?香里。」

 高嶺 「はい。」

 

 

みんなにそんな事を言われて戸惑う私。

ふと辺りを見て気づいたのは、

 

 

 瑞希 「聡君・・・?」

 

 

あの人の姿無い事。

 

 

 雪村 「聡はちょっと出て行ったよ。

     もうすぐ来ると思う。」

 瑞希 「そう。」

 

 

ライブ関係者の声がかかり

本当に本番間近になった。

心配だった、あの人も戻って来ていよいよな展開を迎える。

 

ステージ袖。

 

私達バンドメンバーは円陣を組む。

雪村君が先陣を切った。

 

 

 雪村 「みんな、最高の演奏を奏でよう。

     瑞希の為。

     そしてメンバー全員の為。

     一緒に乗り切ろう。」

 

 

コクンと頷くメンバー。

 

 

 スタッフ 「それでは、WINTER HOPEさん

       そろそろお時間です。」

 

 

そんな声がかかり、

 

 

 雪村 「瑞希。

     頼んだよ。」

 瑞希 「うん。」

 

 

ギュッと手を握り

 

 

 瑞希 「さぁ、行こう!

     私達のステージへ!」

 

 

その掛け声に

 

 

 メンバー全員 「おう!」

 

 

と返事をした。

周りのスタッフから温かい拍手が起こり

私達はステージへと向かう。

 

 

 瑞希 「いよいよ。本番。」

 

 

その時を迎えようとしていた。

 

 

 

              エピソード26[さぁ、行こう!] (完)