今日は「PERFECT DAYS」です。



【あらすじ】

トイレ掃除員として働く主人公の平山は毎日、淡々と生活を送っている。その日常で起こる数々の出来事を綴っている。


【好きなセリフ】

「今度は今度、今は今」

姪っ子が半ば家出状態でやってきた時に、

次の約束をしようとした姪っ子に「今度」と言うと、「今度はいつ?」と聞かれた時の平山のセリフ。約束できないけど、いまは違うということだけはわかってて、そんな感じでもいいんじゃない?というようなゆるーい感じが好きでした。  


【ここから感想】ネタバレもしてます。


東京でトイレ掃除員をしている男性、平山。

早朝から出かけて数多くのトイレを、

同僚の若者に呆れられるほど熱心に掃除する。


自宅の植木に水をやって、仕事をして、 

移動中の車のでカセットテープの音楽を聴き、

お昼休憩にフィルムカメラで写真を撮り、

いつもの飲み屋で夕飯を食べ、

時々、古本屋で本を買って読む。




そんな淡々として、

ちょっと時代遅れのものの中で生きる日常。

平山が何を考えてるでもなく、

なんとなく目を向ける先、

そこに映る風景がなんとも美しく、

平山という人がどんな人なのかを伝えてくる。


この映画はなんでもない場所や風景が

映し出されてるけど、

一枚一枚の写真を見ているようで

スクリーン向きの作品。


そして平山演じる別所広司さんのわずかな

表現の変化が全く飽きさせないというか、

味わい深い作品になっている。


彼はなんていうのか、

裕福な人生を送る妹には愛想を

尽かされてるっぽい感じだが、

全くもって悲観的な日常でない。

多分お金はないんだろうけど、

神社で生えてる植物を育てて音楽や読書を

して仕事以外の時間がとても豊かであり、

彼自身も何があっても穏やかに受け入れて

過ごしている。


成功者っぽい妹から家出していた姪っ子が

なつくのも、そこから生まれるものに

居心地のよさや、自分をありのままを

受け入れてもらえる空間があるからなのかな

と思いました。


いやいや、地味なおじさんなんだけとね、

起こる出来事にジャッジがないというか、

諦めるわけでも、頑張るぞー!と意気込んでる

わけでもないし、愚痴言うわけでも、

何かに心を奪われてるわけでもない感じが

ほんとにいいなー、素敵だなーと思いました。


なんかね、私、お金の引き寄せみたいな動画を

見てた時がありまして(笑)

それで、なんでお金が欲しいかって掘り下げる

ことを言う動画もあるんですが、だいたい

「安心」がほしいから、お金が欲しいという 

人がおおいみたいです。


平山の生活はお金にゆとりはないかとしれない

けど、なんかこう、無理しない、自然に生きる

ことであらわれるものに「安心感」を感じる

なと思うんです。

そこに豊かさを感じてるのかなと思いました。




そんな彼が出会う出来事で私が

一番好きなのは小料理屋の女店主の元夫との会話。


平山は別所広司、元夫は三浦友和っていう、

もうなんだ!さりげなくこの濃いシーンは!




平山はあるあるだけど、その女店主が

ちょっと好きなゆえに、

元夫に会うことは何にもないのになんだか

気まずい(笑)  


その大の男が微妙な距離感で話すのが

なかなかの味わいのあるシーンです。


ここまで年齢を重ねてきて

「影が重なった時に濃くなるかどうかも、

知らないなんて」と言った元夫に

「じゃあ、やってみましょう!

あれ?濃いですよね。濃くないとおかしいよ」

といいながら一生懸命にやってみせる様は、

不器用な思いやりというか。


なんだか、うまく生きてこれたのか、

やっぱり来れなかったのかなみたいな感じの

二人のぎこちないやりとりに

見応えを感じてしまいました。


ラストシーンの車中で音楽を聴きながらの

なんとも言えない表情と朝焼けは

もうどう表現したらいんだろう。

人生で起こった様々なことが、

一気に溢れてきたような。


その様々な出来事を昇華できたり、

できなかったりしてしたんだろうなという

姿を見て、わたしは自分の受け入れられなかった

出来事や感情までも受け入れてもいいんじゃないのかと思える心境に。


どこかの木に寄り添って過ごすような、

風が吹いたり木漏れ日がさしてきたり、

虫が突然出てきたり…

そんな安らぎとちょっとした驚きと

自分を委ねるような感覚をこの作品で

感じることができました。