心に沁みるセリフも紹介。
今回は
「ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー」
です。



【ストーリー】
サリンジャーが物書きをめざして大学に入学する
ところから、短編小説のヒット、そして、
太平洋戦争のトラウマを乗り越えて、
「ライ麦畑でつかまえて」を出版。
その後、一切の小説を発表しなくなった、
彼のいきさつと生涯を綴る物語です。


【映画の見どころ】

・名作「ライ麦畑でつかまえて」以降、
 なぜ彼は小説を公表しなくなったのか。

・書くことは生きることそのものであった
サリンジャーの生き方とこだわり。

・戦争のトラウマを乗り越えることができた
方法とは?


【ここからネタバレ含む】

物書きをめざして大学に入ったサリンジャーは、
短編小説が売れ始めた時に、戦争に召集されて
しまいます。

かつての先生のアドバイスで召集後も
長編に挑戦し続けるサリンジャー。
過酷な状況を「書くこと」「創造すること」で、
乗り越えようとします。

しかし、帰還したサリンジャーはPTSDに
悩まされて書くどころではなく。
それがさらなる苦しみに。

そのうち治ると医者から言われ、
なんの解決も見出せない彼は、ある日、公園で
瞑想するグループに出会い、そこの宗教の師を
訪ねることになります。

師は瞑想によって心の平安が生まれると言い、
サリンジャーに瞑想を教えます。

サリンジャーは瞑想を続けることで、
徐々に書くことができるようになります。

しかし、書き出しても納得できない。
その時のセリフ。


【この映画の心に沁みる言葉】
サリンジャー
「やっと書けるように
なりましたが、破り捨てました」
「破った時、楽しめましたか?」


破ったことがネガティブだったサリンジャーは
次から楽しんで破り捨て、
ついに「ライ麦畑でつかまえて」を書き上げます。

さ、さすが師匠!
なんてことない、深刻になりなさんなってこと、
それによって受け止めることができたんですね。


その後、紆余曲折があったものの、出版され、
世界的なヒットを生み出します。

だけど、サリンジャーの苦悩は続きます。
今度は、この主人公は僕そのものだ!という
ちょっと危ないファンが待ち伏せするように
なります。

そこでサリンジャーは師に相談すると
「そのことを排除しなさい」と言う。

だから、サリンジャーはそのファンたちを排除する
ために田舎に引っ越しちゃうんです。

その後、先生から出版物の巻頭の執筆を依頼
されますが、昔の恨みがあり最初は応じません。

ところが奥さんが
「瞑想しても人を許すことはできないの?」
問われ、ハッとしたサリンジャーは和解します。

す、素晴らしい!
瞑想してないけど、奥さんわかってる!

ちなみに奥さん役は
「ボヘミアン・ラプソディー」の
フレディマーキュリーの恋人役も演じています。

あの映画でも、フレディに気付きを与える役だった
わけで、うーん、どちらのいい役してますねぇ。
余談でした(笑)


話は進み、
さらに裏切りのようなことが起こり、
ついには家の周囲に壁を作り一切の交流を断ちます。
それも師から、排除しなさいと言われたから。

そして奥さんは出て行き、
売れっ子作家だったのに一切の出版を断り、
自分のためだけに執筆活動を行い続け、
そのことが伝説的な存在として今日も
受け継がれているそうです。


すごいよね。
「書くことは祈り」と言い、まさに彼は
生涯を通じて、書くことで心の平安を見出そうと
したのだと思います。


しかし…
最初はすごいと思っていたのですが、
数日経ってからちょっと待てよと思いました。


師が言ってた
排除しなさいって、なんだったのか?

実は瞑想によって、人そのものではなく、
心の中の恨みや恐怖を排除しなさいって意味では?
と思ったんです。

もし、それをやっていたら、成し遂げていたら、
サリンジャーはひとりぼっちだっただろうかと。

映画を見てても、サリンジャーはたいへん
頑固な人みたいでした。
出版社からの修正を一切断ったり、
自分を貫いた人でした。

だからこそ、今でも残る小説が書けるのだろうけど、
葛藤や許せないこともたくさんあるんですよね。

だけど、それを持ったままだと、結局、
外のせいにしてしまって、
最後はひとりになるしかない。

それが手放せたら全然違う人生だったかも。

もしもの話はしても仕方がないですが、
言葉を綴ることが彼の平安であったことは、
救いであったのだと思います。