妄想物語後輩編。最終話です~。


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電車の中では極力何も考えないようにした。

考え出すと、頭がおかしくなりそうだったから。


見慣れた道を歩いて、あの居酒屋に行った。


深呼吸を一つして、店のドアに手をかけた。


「いらっしゃいませ~。お待ち合わせですか?」


「ええ…」


と曖昧に返事をして店内を見渡す。

それほど広い店ではないし、すぐにカウンターに彼の姿がないことがわかった。


…いない。


不思議そうに私を見る店員を片目に、私は店を出た。


なんだかとても、虚しかった。


「なにやってるんだろう、私。…バカみたい」


もう、歩くことさえ億劫で、偶然通りかかったタクシーに乗った。


タクシーの中で頭に浮かんだのは、誰でもない、向井くんだった。


(ずっと、見ててくれたんだなぁ)


こんな私を。

頼まれると断れなくて、いつも『大丈夫』と引き受けてしまう私を。

飲み会で後半には必ず芋焼酎を頼む私を。

あの上司と付き合っていた私を。


でも、私はそんな彼の思いを振り払ってしまった。

どうしようもない罪悪感が私を襲う。

それと同時に自分への嫌悪感でいっぱいになった。


(…もう、いやだ)


タクシーは自宅マンションまで到着し、私はお金を払ってタクシーを降りた。

その場でうずくまってしまいたい衝動を必死に抑え、マンションの入り口へと向かう。



するとそこには、向井くんがいた。



「先輩」


「…どうして?」


「前に、バーベキューのときに迎えに来たから…。すみません」


そういえば以前、部署で行ったバーベキュー大会のときに、向井くんに車で自宅まで迎えに来てもらったことを思い出した。


「今日は電車で来たんで、ちょと迷っちゃったんですけどね」


あんな態度をとってしまったというのに、向井くんはいつもと変わらぬ穏やかな笑顔を私に向けてくれた。


「向井くん、さっきはほんとにごめんなさい」


私は深々と頭を下げる。


向井くんはそんな私の肩を持って頭を上げさせると、静かに首を横に振った。


「先輩は悪くないです。俺ほうこそ急に、すみませんでした」


その優しい言葉に、こらえきれずに涙が出る。



「今すぐになんて言いません。俺を好きになってくれとも言いません。ただ、先輩のそばにいさせてください」



「…ありがとう」



涙があふれすぎて、たったそれしか言えなかった。




***




それからしばらくして、私は向井くんと付き合い始めた。


またも社内、それも部内恋愛だったが、今度は隠すことはしなかった。


「先輩、私こないだ見ちゃったんですけど…。もしかして向井くんと付き合ってるんですか?」


女子トイレでのこんな質問も、私は笑顔でこう返す。


「うらやましいでしょ」




私は今、最高に幸せです。




END

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後輩編、これにて完結です。

ここまで読んでくださった皆々様に感謝。

稚拙な文章でお恥ずかしい限りです。

特にコメントくださる皆様にはほんと恐縮しまくりでした…。


うーん、やっぱり私はどっちかっていうと短編のが好きなのかも。。

サクっと読めて、じわぁ~ってくるようなものが目標だったりします。

長いとそれだけパワーがいるから、できるだけ短くっていうのもあるんですがw


明日はBeeTVの配信開始ですね~~。

残念ながら私はドコモじゃないんで見れません…。

見た方の感想楽しみにしてます~!


そしてそして8/20のはなまるカフェにもでるとか!?

きっと生では見れないだろうなぁ…。

You tubeとかにアップされることを祈る!!笑