本日2話目、トータル5話目、の妄想物語後輩編。です。
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翌朝、私はいつもよりかなり早く会社に行った。
昨日冷やしたおかげで、目の腫れはもちろん引いて、気分もだいぶリフレッシュされた。
こんな時間には誰もいないかな、と事務所のドアを開ける。
するとそこには顔を横にして机に突っ伏し、寝ている向井くんがいた。
「向井くん?」
声をかけたが、起きる気配はない。
普段とはまったく違う、あまりにも無防備なその寝顔。
思わず向井くんに見とれている私がいた。
(きれいな顔…。っておいおい!何見とれてるの後輩に!)
はっと我に返った私が自席に着こうとしたそのとき、向井くんが目を開けた。
「…先輩?」
「眠そうに目をこすりながら、体を起こす。
「もう七時か…。先輩今日早いですね」
「あ、うん。昨日休んじゃったしね。向井くん、徹夜だったの?」
「ちょっと別件でトラブっちゃって…。あ、でもちゃんと頼まれた資料はやりましたから」
そういって資料を手渡される。
「あ、データはメールで送っときました」
ペラペラとめくってびっくりした。
私が想定していたものより格段にクオリティが高い。
「よくここまで作ったね…。大変だったでしょ」
「そうでもないですよ」
向井くんが目をそらす。どうやら照れているらしい。
「あ、でも誤字はっけーん!」
「え、うそ!?」
慌てて資料を覗き込む、向井くんがおかしかった。
その後、昨日打ち合わせを欠席した謝罪のためお客様に電話をすると、逆に向井くんのことを褒められた。
いつの間に、こんなに頼れる存在に成長していたんだろう。
いつの間に、ではない。
きっと私が上ばかり見すぎて、後輩をきちんと見ていなかったんだ。
(もっと、頼りにしてもいいのかもしれないな)
眠そうにあくびをかみ殺しながら、それでも真剣に仕事をする向井くんを見て思った。
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続く。今日はあと一話更新します。