入社して、いつの間にやら9度目の夏が来た。
会社に入ったときには、きっと3年くらいで辞めるんだろうなーなんて思っていたのに。


ほんとあっという間。


うちの部署は仕事も多く、毎年新入社員が入ってくる。
後輩も今ではもうたくさんいて、私を頼ってくる。
大きなプロジェクトも任せられ、仕事はとても順調だった。


(プライベートもこの間までは…順調だったんだけどなぁ)


私がこの間まで付き合っていたのは、同じ部の上司。
仕事のできる人だった。
公私共に最高のパートナー、そう思っていたのに。


社内、しかも同じ部内での恋愛だったが、周りは誰も気づいていなかった。私たちはお互いに仕事を一番に考えていたし、誰かに気づかれるような行動はとったことがない。
デートらしいデートなんてしたことはなかったが、会社に行けば顔は見れるし、何より私たちはお互いを理解し合えていると勝手に思っていた。
私たちはこれでいいのだと、根拠のない自信を持っていた。



久しぶりに二人で会った先週の土曜日。
彼から思わぬ言葉を聞かされた。
「結婚しようと思う」
一瞬プロポーズされたのかと勘違いしたが、彼のすまなそうな顔でそうではないと分かった。
(私じゃないんだ)
結婚するなら、専業主婦として家庭に入ってくれる人がいいと彼は言った。親に勧められるままお見合いをしたらしい。
最後に彼は、勝手だけどお前にはそのまま仕事をがんばってほしいんだと言った。


言いたいことはたくさんあったけど、私は何も言わなかった。
ただ、ありがとうとだけ言った。
胸にぽっかり穴が開いたような気分だったが、不思議と涙は出なかった。
週明け会社でどんな顔をすればいいんだろうと迷ったが、実際はなんてことなく仕事の話をした。
きっと誰も気づいていない。


(さぁて、余計なこと考えてないで、仕事しなきゃ)
深呼吸をひとつして、私は仕事に戻った。


彼は部長に結婚の報告をしたようだった。



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向井さん出てきてないし!!爆


もちろん続きます…。