私は
度重なる
家出の末に
児童相談所に
保護され
一時保護所で
一時的に保護された




一時保護所というのは
児童相談所が管轄する
言葉通り
子供を一時的に保護する所で
何らかの理由で
家には帰れない
帰すことができない
児童を預かる

そこには
0歳児〜高校3年生までが
入所でき
親に育児を放棄されて
児童養護施設が
決まるまでの間
入っている子もいれば
非行行動が酷く
家庭裁判所の結果を待つ子もいる
理由も年齢もさまざま
最長2ヶ月間しか入れず
もちろん自由に建物内を
動くことも出入りする事も
許されない
面会も手続きが必要になる


初めて
一時保護所に
入所した時は
2週間程で家に
帰された

帰されても
また家出をする




2回目
3回目と
保護される
回数が増すごとに
期間も少しずつ伸びていた

児童相談所からの
ケースワーカーがつき
定期的にケースワーカーと
面談があった

そして
そのうちに
私はカウンセリングを
受ける事になる

母に連れられて
ある場所へ行く
着くと薄暗い
取り調べ室のような
部屋に入れられて
カウンセラーと思わしき人と
面談が始まる




家の状況や
家族の事を聞かれ
私は包み隠さず
話をした


そして
毎回の様に
トランプより少し大きめの
カードのようなものを
見せられ
これが何に見えるか?
と聞かれる

そのカードには
薄い墨汁を垂らし
ストローで吹いたような
何にも見えない
絵が描かれていた

私は
それを何に見えるか
答えなくてはいけないと

何と答えれば
正解なのかと
毎回考えて
それらしいことを
言っていた

実際は
何にも見えない

回を重ねるごとに
その
カウンセリングが
嫌でたまらなくなった

私からすれば
一体これは何のためにしているのか?
この時間は何なのか?
さっぱりわからなかった

そんな事よりも
今虐待をされていると
訴えているのだから
助けてほしい
そう思っていた

私はある時期から
カードを見せられても
答える気がなくなった
毎回毎回
同じものを見せられて
何に見えるか?と聞かれ

内心
何にも見えへんわ!
と言ってやりたかった


そして
私は
最終的に
その質問に対して
「全部悪魔に見える」
と答えるようになった

何を聞かれても
そう答えた




私の本音だった
祖母も母も
そして目の前にいる
助けてくれない
カウンセラーも
見せられるカードも
みんな悪魔だと思った


大人になってわかった
何故私が
カウンセリングを受けたのか

児童相談所の
ケースワーカーに話をした事
全てが
私の虚言だということに
なっていた
私は祖母と母に
虚言癖の強い
少しおかしな子に
仕立て上げられていた

私がどれだけ
虐待の状況を訴えても
祖母と母が
それを認めるわけはなく
祖母と母の発言を
ケースワーカーは信じてしまった

私が話す事実は
祖母と母によって
全て私がついた嘘ということに
すり替えられていたからだった