私は以前法律事務所で働いていたこともあり、現在弁護士会でハラスメント関連の仕事をさせていただいているけれど、メンタル・クリニックや企業、カウンセリングルームでも最近パワハラ・モラハラの相談が増えていると感じます。

 

かつては被害者の話を聴くだけでしたが、ここ2,3年は加害者の立場の話を聴く機会が増えました。そこで、痛感するのは「加害者には自覚がないだけでなく、むしろ被害者意識が強い」ということ。(実際被害者であったことも多いのですが)

 

また、ほぼ共通して出てくるのが「そんなつもりじゃなかった」「よかれと思って」というセリフと、誤解され納得がいかないという訴えです。残念ながら、非を認めて反省するというより、誤解を晴らさんとするような自己正当化の言い訳を続けるか、ふてくされているかが多い印象です。

 

パワハラ、モラハラ、DVなどの加害者は、自覚なく「自信がない」ストレスを自分より弱い相手に八つ当たりすることで解消していることが多く、さらに厄介なのは、ターゲット以外には愛想がいいことが多く、まわりがハラスメントに気づきにくいことです。

 

外面がいいのは、おそらく自信のなさから嫌われることを怖れていたり、認めてもらいたいという承認欲求からだったりで、そうした他人の顔色をうかがう言動は本人にとってかなりのストレスになっているはずです。

 

そのはけ口が、自分より力(権力・腕力)が弱く受身的で泣き寝入りしがちな人にむかってしまうのがハラスメントのしくみです。

 

問題は、ハラスメント加害者のほとんどに自覚がないこと。心理学では「否認」と言いますが、自分のなかでは常にまわりに気を遣って割に合わないがまんをしている被害者なのに、その自分が加害者になって世間から糾弾される立場になるなんて絶対にありえないと、無意識レベルで自分を守るために全力で非を認めない姿勢を貫いているのだと思います。

(実際には、過去にトラウマになるような被害体験があることが多いのですが、そこまで掘り下げて結びつけるのはカウンセリングでも正直難しいです)

 

彼ら彼女らと冷静に話し合おうとしても、建設的な話し合いはとても難しいのでお勧めしません。自分の非を認めることは自己否定になると思いこんでいることが多く、少しでも自分が批判される空気を感じると急に身構えてしまい、自己正当化の言い訳をするか、だんまりか、逆ギレなど、かえって状況をこじらせかねません。

 

したがって、現実的な対処法は、まずは自分の心身を守ること。できるだけ物理的に距離をとる、可能なら逃げることです。次に、善意の第三者や専門家に相談すること。職場なら上司や人事、ハラスメント窓口、プライベートなら友人や親戚などにも味方をつくりましょう。公的な相談窓口も利用してください。こういうときこそ、専門家の力が必要です。

 

いちばんよくないのは、ひとりで抱えてがまんしてしまうこと。ハラスメントは時間で解決することはありません。悪化するだけです。「私にも悪いところはあるから」はすでに共依存状態におちいっている被害者の常套句で、もし、今こういう思いで耐えているなら、なるべく早く勇気を出して専門家に相談してみてくださいね。
(*2023年に一部修正しました)