Parson Ⅰ 奥城 薫 | 書いたり描かなかったり。

書いたり描かなかったり。

小説と銘打っておきながら、結構駄文で埋まってマス(苦笑)

「Parson ~ 」及び英文ナドで始まるのが小説、ビミョーなタイトルのが駄文、ってコトで。(あくまでも予定)

 胡乱なマナザシ、とでもいうのか……トゲトゲしくも生暖かいマナザシで遥を見据える。
「知ってるか?【雉も鳴かずば射たれざらまし】ってなぁ、余計な好奇心は事故のモトなんだぞぅ」
 半ば身を乗り出すようにして膝に肘を突き、不貞腐れたような顔で言う薫。
「だって……好奇心を満たしたいお年頃なんですっ。聞いちゃいけないんですか?」
 半ばヤケクソ気味に答える遥に更に深い溜息を吐く。
「……なんでそんなこと気にするわけよ。いーじゃん別に」
「隠すから余計気になるんです!大体、そっちこそなんで隠すんですか。聞かれちゃ都合の悪い理由でもあるんですか?」
 ―――正論である。隠されれば暴きたくなるのも、問われる程にはぐらかしたくなるのも。
「別に都合は悪くないけどねー、あんまり思い出したくないだけだしさ。はっきり言っちゃえばむしろ忘れたいし」
 遥の捨て鉢な剣幕に押されるワケでもなく、渋面で呟くように。
 ティーカップを手に取り、観念した風に切り出した。
「ハルは、ここの管理人の娘なワケじゃん?なら、この部屋の家賃いくらか知ってるよね」
「え?……あ、はい。知ってますけど……」
 唐突な質問に戸惑いながらも、律儀に応じる遥。
「んでもって、アタシの月給……バイトも込みの手取り、知ってるよね。家賃の比率、どのくらいか言ってみな」
 さらに不可思議な問い掛けに首を傾げながらも、素直に答える。
「ええと……五割未満四割強、ってトコロですかね」
 指折り数えながら答え……何かが引っ掛かった。
「アタシがここに住み始めたの、いつからだったか言ってみ?」
 だんだん不機嫌になりつつ、遥の疑問がカタチになる前に更に問い掛けて。
「大学生になってから、だから……十年前、ですよね」
「―――ちなみに、ウチは両親共働きで兄貴一人大学にやるので精一杯って程度しか収入なかった。ハッキリ言って、公立大学に奨学金制度使って入っても、生活費は自前で稼がなきゃやってけない程度の仕送りも見込めない、っつーくらいね」
 言葉尻を掠めるように、しかも一気にまくし立て、畳み掛ける。
 言いながら次第に眉間の縦ジワが深く、名刺くらいは挟めそうに刻まれていく。
「……何でそんなアタシが、こんなバカ高いマンション借りて住んで。学費だってべらぼうに法外な相模の、しかも六年も通わなきゃならない獣医学科に入ってやってけたのか。ハルが聞きたがってることって、つまりそーゆーコトなんだよねー」
 不機嫌極まりない表情とは裏腹に感情の読み取れない平淡な声音が、むしろ今の薫の気持ちを代弁している。抑え込まねばならない程の憤り、不快・苛立ち……その他諸々の激情やら。
 ―――思い出したくない、とかいう割には、随分しっかりと記憶に残っているらしい。
「アタシが丁度ハルと同じ高三のときね、ウチの近所の神社で迷子拾ったんよ。ま、場末とはいえイチオー腐っても観光地だし、迷子なんて珍しくもなかったんだけどさ。その子連れて歩いてたら、なんでか不審者に絡まれちゃったりしてねー」
「……はぁ……」
 唐突に始めた昔話に、キョトンとしてしまう。話があまりにも飛び過ぎて、脈絡が無さ過ぎて。薫の意図が今イチ掴めない。自然、合いの手も気の抜けたものになってしまう。
 そんな遥の様子を一瞥し、吐息と共に一旦言葉を切ると、薫はソファーを立ってテレビの上にぞんざいに置かれた写真立てをとり、中から隠すようにねじ込まれていた一枚の写真を抜き取って遥に手渡す。
「後で聞いたんだけど、その子誘拐されてたヤツ等のところから自力で逃げ出して、犯人達に追っ掛けられてたらしくてさ。とばっちりで偶然一緒に居たアタシまでソイツ等に襲われたってワケ。刃物なんかヘーキで振り回すよーな輩で、ま……それは何とかなったんだけど」
 渡された写真には、今よりは少し子供っぽい―――むしろトゲトゲしい雰囲気を纏っていて、近寄りがたい感のある―――薫と小学生くらいの少年、そしてその子の父親らしい男が写っている。少し古びた写真の中で、不満げに表情を引きつらせている薫を中央に、喜色満面で彼女の腰にまとわり付く少年と、二人の肩に手を掛けた一見して見目麗しくも尊大な面差しの男。
「んで、その子のオトーサン、ってのがなかなかキョーレツなオヤジでさ。『貴女は息子の恩人だ。是非ともお礼させてほしい』とか言っちゃって。アホみたいな額面書いた小切手寄越そうとかしてくれたわけよ」
 受け取った写真を手に、話についていけずにぽかんとしている遥の肩に手をかけて。
「コッチは行き掛かり上付き合ったからそうなっただけなんだし、そんなもん受け取るいわれなんてない、っつって突っぱねたんだけど向こうも頑固でねー。息子の価値はないとでも言うのか、とかごねられちゃって……」
 肩に掛けられた手指に力が籠もる。肩口に指が喰い込んでキリキリと締め付けられるような痛みになんとか耐えながらも、挟むべき言葉も見つからず、ただ黙って耳を傾ける遥。