「そーしてみる。ありがとー、オジサン」
お礼を言って、男の子の手を制服から引き離し、改めて握る。そのまま立たせて、今度は正面から図書館を出た。
社務所に行くなら、こっちのほうがちょっと近いし……まともな道だし。
薄暗い軒にそって、観光客用にお高い料亭の横を通る。口の悪い大人たちに言わせると、値段の割に味はいまいち、なんだそうで。だからかどうかは知らないけど、地元のヒトが入ってるのをあまり見たコトがない。お品書き、見たことあるけど確かに高かったし。―――ナニあの【コース料理¥三千円~】って。
言い換えると、余所の人を探しやすい、って意味にもなるかな?観光バスから直接ここに、なんてルートもあるみたいだし。
―――後でココにも聞きに来よう。この子の連れなら目立ったろうし、意外に覚えてたりして。
そんなとりとめのないことを考えながら、建物の陰から出て郷土資料館の前まで来た。いい天気のせいか、夏休み前だというのに陽射しが強くて、クラクラしそう。
……そう言えば、すぐ帰るつもりだったから昼ご飯もまだ食べてない。クラクラしてるのはそのせいかも。
時計を見ると、もうじき三時になりそうな時間。家を出てそろそろ二時間近く経つ。……この子とあってから、ともいえるけど。木から降りるのに、随分手間くって時間かかっちゃったもんなぁ。
アタシがお腹空いてるのはともかく―――朝食べたきりなんだから―――、この子だって昼過ぎから一緒に居るってコトは、やっぱりお腹空いてるのかも。何だかんだで色々歩き回ったような感じはするし、木に登ったり降りたりって、馴れない人には結構な重労働らしいし。
……もしかして。さっきから黙ったままなのは、話が通じないからじゃなくて空腹だから、だったりして。
何となく気になって振り返るアタシを、慌てたように顔を上げてじっと見返してくる。この子と目を合わすたびに、仔犬が飼い主や母犬を見るみたいな信頼しきった眼差しを、なんでだか連想してしまうんですけど……。
どぉもよくわからん。……ってゆーか、アタシなんで懐かれてる(のかな、多分)んだろう。どっちかってゆーと、チビッ子嫌いな方だし、嫌われる方だし。
……炎天下で顔突き合わせてても、意味ないか。さっさと社務所行こう。