彼氏と別れた。

彼氏と別れた理由は主に二つ。
一つ目は単純にこの人じゃ幸せになれないと心の底から思ったから。
二つ目は彼氏のことが好き、ってよりも怖いって思うようになってしまったからだ。

彼とは喧嘩が絶えなかった。
付き合ってすぐに男友達からライブDVDを借りる借りない、でヤキモチを妬かれて揉めて、男友達とTwitterで盛り上がりすぎて揉めた。
ちょっと付き合ってからたった頃には、部活が忙しい、勉強が忙しいからって理由で揉めた。
さらに半年過ぎたあたりからは、高校の時からの男友達との縁を切ってほしいって言われて揉め続けていた。

一回1週間だけ別れたことがある。
その原因も高校の時からの男友達と縁を切れって言われてたのにLINEをしていたからだ。
わたしの家にいた彼は別れる、と言って怒って飛び出して行ってしまったのだ。

その時は私が必死に頭を下げて、もう連絡取らないからって言って復縁した。

私はもともと高校の時から男友達のほうが多い方だった。
女子の友達が出来なくて、いつも男子といた。男子がいたから私の高校生活はそれなりに楽しかった。だから今でも彼らには感謝している。

しかし当時私だって女友達が欲しかった。男子からしかLINEが来ないわたしの携帯をみる度に嫌になった。不登校にもなりかけた。
しかし、気づいてしまった。
いまがそれなりに楽しいなら、性別なんて関係なく一緒にいればいい、性別だけの違いでせっかく友達になってくれたのに距離を置くなんて失礼なんじゃないか、と。

それからずっと高校卒業してからも仲良くしていた。しかし、それが彼氏にとっては嫌で嫌で仕方なかったらしい。


元々私と彼が付き合い始めたのは、私が彼に告白されたのがきっかけだった。
最初の頃は気遣いとかもあったのか、すごく優しかったし、束縛の「そ」の字もなかった。
しかし、私をよく知るにつれて、私が彼の想像してたより男友達が多いことが分かり、嫌になったのだろう。束縛されるようになった。

束縛されるようになった頃には、私も彼のことが大好きになっていた。

彼のために朝早く起きてお弁当を作って、家から片道二時間もかかる大学に1限に間に合うように行って、授業を受けて、部活をして、そのあと彼と終電の時間まで一緒にいて、0:30に家に着く。そして1:30くらいに寝て、5時半くらいに起きる。
大好きだったから、こんな生活苦でも何でもなくなっていた。

だから束縛され始めた時、なによりも嫌われるのが怖かった。嫌われたら1人になってしまう気がして、大切な人を失ってしまう気がして怖かった。
だから私が感情をなくして、我慢さえすればいいと思っていた。
束縛を受け入れてしまった。

彼の束縛は他の人からは「異常」と呼ばれるものだった。しかし、私はそのころ完全に麻痺してしまっていたので、異常だとは思えなかった。

服装、髪型、持ち物、休日の過ごし方など、すべて彼に決められた。
ちょっとでも彼の気に食わない行動をとったら、喧嘩になった。
ルールも勝手に作成されていた。
Twitterの絡む相手、LINEする相手もすべて制限された。

彼が原因でわたしは友達と遊ぶ時間もなくなり、部活も思いっきり出来なかった。

あのとき彼の手を振り払っていたら、私は友達付き合いもよかったかもしれないし、部活も後悔することはなかったのかと思うけど、当時の私はそれが怖くて怖くて出来なかった。
私自身も、それを手放すほど彼に依存していた。



付き合って1年くらいたち、キャンパス移動により私も彼も違う場所に引っ越したのをきっかけに、半同棲を始めた。



最初は楽しかった。
一緒に買い物行ったり、一緒に家出ご飯食べたり。好きな時に抱きついたり、好きな時になんでもできるのが、すごく幸せだった。
結婚したらこうなるのかなって思ったりもしていた。


新しいキャンパスで新しい部活に入ったのをきっかけに、わたしの交友関係が広がった。
それで彼と喧嘩することが度々あった。

彼との喧嘩も面倒だし、彼と喧嘩する度に傷つけられていく自分が自分で耐えられなく、私は彼の出した約束5つを守ることにした。

男子が1人でもいる集まりにはいかない。
部活のバーベキュー等のイベントには出席しない。
家事は疎かにしない。
部活は週3を限度にする。
破ったら別れる。

これが彼の出した条件だった。


別れるのが一番怖かった。
捨てられるのが一番怖かった。



しかし、その怖さよりも全く違う恐怖と、傷を私は受けることになった。



彼は避妊をちゃんとしない人だった。

最終的には避妊をする人だったが、避妊に関して甘い人だった。


半同棲を初めて1ヶ月後、私は生理が来なくなった。


すぐに彼に相談した。

すると彼は検査薬を一緒に買いに行こう、と言って、2人で買いに行った。

検査するのが怖かった。
もし本当にできてたらどうしようってずっと考えてた。

大好きな人との子供は産みたい。
でも両親になんて言えばいいんだろう。
大学もどうすればいいんだろう。
喧嘩多いけど、子供出来てからはどうなるんだろう。
できてたら結婚本当にするのかな。
産まない方がいいのかな。
彼の人生めちゃくちゃになっちゃうのかな。
だったら私1人で育てるべきなのかな。
だとしたら大学はやめるべきなのかな。

色んなことを考えた。


検査する前にふと、彼に、「本当にできてたらどうする?」と聞いた。


彼から、「堕ろしてほしい」と言われた。


責任取れないし、取りたくないって言われた。

いや、わかる。責任取れないのはわかる。まだ学生だもの。

でも、わかってるけどそう言われたのが辛かった。


その日、私は一晩中泣いた。


その日の夜、生理が来た。


彼は心の底から安心したようで上機嫌だった。
中絶による出費もないし、新しく自分の欲しかったものが買える、優香も買えるね、よかったね、って言ってきた。

それが私はすごい嫌だった。



私だって安心した。
よかった。
学生のうちに出来ても困る。だからよかった。


でも、彼に堕ろして欲しいって言われたことがショックで、さらにお金がかからなくて良かった、自分の欲しかったものが買えるって言われたことがさらにショックで、私の体を気遣ってくれてない、私を気遣ってないんだ、とはっきりわかった瞬間だった気がした。




半同棲してから、コルクボードによく思い出の写真を飾って、それを壁にかけていた。

一年記念でつくった色紙も飾っていた。


私たちが住んでた部屋は、写真がいっぱい飾ってあった。


しかし、喧嘩して1日家をあけ、次の日帰ってきたら部屋はめちゃくちゃになり、写真はビリビリに破かれ、顔が切り裂かれていた。


前に推理小説で、「恨みがこもってるならビリビリに破り、くしゃくしゃに丸めて捨てる、この写真ははさみで切られているし、顔は傷つけないようにしているから恨みはこもっていないだろう」という主人公のセリフがあったのをその時思い出した。


あ、わたし、彼に恨まれてるのかな


っておもった。


結局その日のうちに仲直りしたが、そのビリビリになった私の写真を見る度に心が壊れていくのがわかった。


涙ってこれほど出るのかって思うほど泣いた。



彼からは、「自分はむしゃくしゃすると物に当たってしまうし、LINEだってすぐブロックしたり、写真を消したりしてしまうから、許して」って言われた。



別れるのが怖かったから、「仲直りできるんだったらそんなのどうでもいいよ」って言ってしまった。




依存していた。






しかし、その頃からだ。


脳裏にいつもあの写真が捨てられてる記憶がチラついて、辛くなる。
「おろしてほしい」って言われたことの傷が治らない。


一緒にいて怖かった。
次にまた同じことがあったらどうしよう。
同じくらい、それ以上傷つけられることが絶対ある。
一緒にいたいけど、怖い。

抱きしめられるのも、何をされるのも怖い。
手が震えるようになった。



たまたまネットでデートDVというものを知った。
デートDVと調べてみると、見事に当てはまった。


そっか、わたし、DV受けてるのかもしれない


気がついてしまった。


次に喧嘩して、同じくらいかそれ以上傷つけられそうになったら、もう別れよう。


そう決めた。




そして、もうどうしようもない喧嘩をした時、別れることを決意して、「わかれよっか、」って言った。





別れて1週間くらいまでは毎日が開放感にひたれてたのしかった。

部活も居残り練習して思いっきりできた。
部活の集まりにも初めて参加した。
男友達ともご飯に行ったりできた。
先輩ともご飯に行きやすくなった。
何時に帰っても怒る人はいなくなった。
好きな髪型、好きな服装ができるようになった。
休日も友達と遊びに行けるようになった。
そして、嘘をつかなくなった。



でも、その後が毎日辛かった。
泣かない日はなかった。
大好きだったこと、幸せだった日を思い出しては泣き、今が辛いことがすごく嫌だった。


それを救ってくれたのは友達だった。
何かあった時は電話してくれたり、すぐに駆けつけてくれる友達に恵まれた。


その友達は、彼と付き合ってた時はそこまで親しくなかったし、授業以外で会った事はほとんど無かったし、喋ることもなかった。でも別れてからすごく私を心配してくれた。すごく助けてくれた。


今まで私は彼を失ったら一人ぼっちになると思っていた。友達なんていないとおもっていた。
しかし、私の周りには実は素敵な友達がいっぱいいた。


あ、わたし別れたからこんな素敵な友達がいるって分かることが出来たんだ。

こんな素敵な友達がいたのに、それに気づかないでなんであんな辛い思いまでして彼としか一緒にいなかったんだろう

そう思ったら、ちょっとだけ別れてよかったのかもしれないって思えた。



死ぬほど辛かった。
でも前みたいに復縁したい、とは一切思わなかった。




彼と別れて2ヶ月以上たった今でも彼のことはほとんど毎日思い出す。

去年の今頃こういうことしてたな、とか、もうちょっと我慢してたら続いてたのかな、とか、続いてたらどんな夏休みを送っていたのだろう、って考える。


しかし、彼と別れていなかったら、とは考えるけど、それが現実味を帯びていないな、といつも最後には考えてしまうようになった。

これは前に進めているっていうことにしてもいいのだろうか……?




大好きだったし、今でも彼を超えるほど好きになれる人はいる気がしない。

でも、それでも私は夢を持っていて、それを叶えるためにうじうじしてる暇はない。

そして、わたしは友達に恵まれた。


だから、そのうち心の底から前に進める気がする。



依存され、束縛されると、人によってはこちら側からも依存してしまうことがある。
わかれた時、その依存から抜け出すのはとても大変だし、時間がかかる。

依存してたということは、それだけ相手を愛せてたということだし、それだけ人を好きになれた自分を誇っていいと思う。

そして、別れて辛いということは、それだけ相手のことが好きだったということで、その気持ちは本物だったということだから、それはすばらしいことだ。


でも辛いのは辛い。
この世が真っ暗になるし、どこを歩いたらいいのか分からなくなる。死にたくなる人もいるだろう。
自分も相手も人間なんだから、複雑な思考を持っている。
昨日まで仲良かったのにどうして、とか、急になんで、とか思う気持ちはある。
しかし違う。
人間ってそんな生き物なのだ。昨日まで、一時間前、一分前まで仲良くても、愛し合っていても、ちょっとの事で崩れてしまう。ジェンガのように。
それは人間だから仕方ないのだ。
そんなもんなんだから。


どんなに辛くても止まない雨はないし、味のしなくなったガムをかみ続けはしない。
そして人間なんだから新しい出会いなんていくらでもあるし、実際彼と出会う前も出会いなんてないって思っていたのに出会えたんだから、なんとなくその言葉も信じることが出来る気がする。


私はそれを信じて少しずつ前に進んでいこうと思う。



明日も、明明後日も多分彼を思い出して少し落ち込んで、辛いことを思い出して、手が震えて、彼を憎んで、でも憎みきれなくて、結局、別れてよかったんじゃないかって思うという生活を送るんだと思う。


いつこの生活が変わるんだろう。
そのうち何も思い出さなくなる日がくるのかな。

来たら来たらで今の気持ちは一生もう味わえなくなるのだから、この苦味をこれからに生かせるように
忘れないようにするために、今はこの気持ちごと大切にしていきたい。


そして、絶対これからしあわせになりたい。



そう私はいま、誓っている。






優香