『12の頃』




 退屈な夕色 窓の方角
 母親の帰りを 待つラグの上
 寝そべり覚えた 遊びをちょっと
 自分対自分 やってのけてた

 這いつくばって見つけた
 百円玉ひとつ こぶしの中
 言えない事実を 猫なで声の
 「おかえり」で 塗りつぶす

 どうしてだろう あの日のコインの
 使い道さえ もう忘れてしまった
 たかが銀色 たかが1枚ぽっち

 そこに、まだ昇らぬ明日(あす)が
 詰まっていた されど12



 四季は夏と冬だけが手を組み
 反発し、にらみ歩く 12の春
 栄えた街から 小鳥も逃げて
 歩を進めることに 白紙回答

 愛は赤子を あやすだけで
 手一杯、泣きべその声
 遠い未来か古い写真に
 吸い込まれてみたい

 母親の手を離れたきり、そのまま
 使い道さえ、
 もう消え去ってしまった
 たかがぬくもり 磁力がない記憶

 そして、まだ昇らぬ明日に
 八つ当たりした されど24



 息継ぎをして
 必死にもがき 泳いでる
 サマにならない
 そんな「今日」を「あの日」へと
 連結すれば 違和感なき抜け道

 夜通しかけて 硬貨ひとつだけ
 握りしめていた 跡形も消え
 そこで解った 無力な毎日に、こそ

 小さい火種を産む 夢の強さと
 あたたかさと ありがたさを

 守っていた されど12
 守っていた、
 たかが12才ぽっち








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