このあいだ、1ヶ月ぶりぐらいにあいつ からメールが来た。

なんでも、友達(仮に山田君としておきます)が彼女と別れたというのだ。




実はその山田君(仮)とは、あいつよりも先に会っている。

あいつと知り合ってから1年ほど経った頃、女性にほとんど免疫のない、軽く「電車男系」なその彼に、恋愛の手ほどきをするよう命じられてのことだった。

といっても、あいつがアタシに言ったのは、少しでも女性に免疫をつけるため、メールのやりとりをしてあげてほしいということ。

あいつ曰く、誰にでもうまく合わせられるアタシは、恋愛初心者の練習台としてちょうどいいのだとか(^^;
普通の女性なら話が続かなくなってしまうところを、アタシは上手に汲み取って、広げることができると……。


まぁ、それができなかったら、国語の教免なんか取りませんよね(笑)



山田君(仮)とメールのやりとりを始めてみると、思っていたよりも普通で、年下のアタシが言うのもなんだけど、しっかりしていた。

さらに、数日後、彼のほうから「会おう」と誘ってきたのだ。


それをあいつに報告すると、
「山田(仮)が女を誘うなんて!! 信じられへん!! 明日、槍が降るで、絶対!!」
と、かなり驚いていたっけ。

それほど、あり得ないことだったようだ。


実際に会った山田君(仮)も、本当に普通の男性だった(と感じた)。

確かに、ほんの少し趣味が偏っているかな、とは思ったけれど、仕事にも真面目だし、歌もうまいし、女性と付き合ったことがないとは思えなかった。

あいつにそう言うと、
「山田(仮)、どんな服着てきよった?」
と訊かれた。

アタシが、覚えている限りで答えると、
「それ、俺が選んだやつや……」
と苦笑するあいつ。「珍しく、服を買うのに付き合ってほしいって言われたから、もしやとは思ってたけど、やっぱり栞と会うためやったんや。あれ、俺の趣味やから!」

普段の彼は、日本橋付近をうろうろしているオタク青年と変わりないのだとか。


まぁ、自信満々のあいつにとったら、山田君(仮)のようなちょっと頼りない感じの男性は、みな同じように見えるのかもしれないな、なんて思っていた。



その後、彼氏のいない友達を何人か山田君(仮)に紹介したものの、みな、3ヶ月ももたないうちにダメになった。
その子たちに理由を聞くと、
「いい人やけど、付き合うのは……」
という意見。

いわゆる、「いい人」止まりなのだ。
アタシもあいつも、その意見には納得せざるを得ず、何人目かでその答えが返ってきたとき、「もう無理や」と、諦めた。

しかしそれから数ヶ月、なんと、ある飲み会で知り合った女性と、山田君(仮)が付き合うことになったのだ。

しかも、クリスマスの一週間前のことで、山田君(仮)は、人生初の甘いイブを過ごしたらしい。

なんだか、アタシも自分のことのように嬉しかったな♪



でも、その山田君(仮)たちが、付き合って半年で別れたというのだ。

そしてあいつは、「今夜、慰めてあげるつもり」という。

なんだかんだ言って、男の友情って厚いやん、と、ちょっぴり羨ましかった。




翌朝、アタシはあいつに、「ちゃんと慰めてあげられた?」とメールした。

すると、「ていうか、より戻すらしいわ」と一言。

詳しく聞くと、いろいろ相談に乗って話を聞いた結果、もう一度やり直したいという結果になり、山田君(仮)が彼女に電話をしたらしい。


「良かったやん」
「でも、絶対またおんなじことの繰り返しやと思うけどなぁ……」
「それはまたそのとき考えればいいんちゃうの? 今は今の気持ちを大切にすればさ!」
「そうかなぁ……」


そんなふうに、久々にあいつと深くメールを交わした。

そして……




「また栞とも久しぶりに会いたいな」







ここ1年、あいつの口から「会いたい」という言葉は出なかった。
だからアタシも、もうきっと会うことはないんだろうと思っていたのに……。

きっと、山田君(仮)の恋愛話を聞いて、感化されたのだと思う。


アタシだって、「会いたくない」わけじゃない。
むしろ、「会いたい」ぐらい。

ただ、妙な関係にはなりたくない……。



しかし、誘われたら断れないアタシ。

結局、「じゃあまた、今度会おうね」なんて返信しちゃったのです。



あ~あ、どうしよ……。




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